小児科

KAM-3008外用薬はアトピー性皮膚炎に有効?[ドイツ編]

現時点ではアトピー性皮膚炎など多くの皮膚疾患での治療の基本は保湿とステロイド外用薬です。

ステロイドを避けるような製剤がありますが、有効性についてはどうでしょうか。

今回は、この点の論文を紹介します。

マミー
マミー
アトピー性皮膚炎などで使用される外用薬って安全ですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
古くから沢山の研究があります。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

ポイント

  •  成人のアトピー性皮膚炎を対象に行われた研究
  •  KAM-3000クリームを塗ると、皮膚の症状などは軽快する傾向にあった
  • 標準治療との比較はなされていない

   2015年に発表されたようです

KAM-3008外用薬はアトピー性皮膚炎に有効?[ドイツ編]

研究の背景/目的

アトピー性皮膚炎(AD)は、環境因子に対する皮膚の過敏反応を伴う慢性炎症性皮膚疾患であり、痒みを伴う湿疹状の皮膚病変を特徴とする。

ADの病態生理に関する最近の知見では、皮膚バリアーの異常な透過性が重要な役割を果たしていることが指摘されている。
これが水分補給の低下、微生物のコロニー形成、免疫調節の異常につながっていると考えられている。

現在のADの治療戦略は、外用コルチコステロイドや保湿剤などで、病気の症状の重さや期間をコントロールするものです。

KAM-3008は、ADに関連する症状の緩和を目的とした、新規のバリアベースのステロイドフリーの外用クリームです。保湿成分やエモリエント成分に加えて、いくつかのハーブエキスを配合することで、抗アレルギー作用や抗炎症作用を高めています。

研究の方法

この研究では、成人被験者のADの症状を緩和するKAM-3008ボディクリームの安全性と有効性を、経表皮水分損失(TEWL)、皮膚の水分量、アトピー性皮膚炎のスコアリング(SCORAD)の測定値を用いて、7日、14日、21日の投与後に調べました。

Dr.KID
Dr.KID
前後比較研究だったようですね。

研究の結果

結論

定量的なTEWL評価と定性的なSCORAD評価の両方に基づいて、KAM-3008ボディクリームはAD症状の緩和を目的とした安全で忍容性の高い有効な単独治療薬であることがわかりました。

考察と感想

ステロイド以外の外用薬でアトピー性皮膚炎に有効かを検討した研究です。

KAM-3000というクリームは、

  • Rheum palmatum root extract
  • Scutellaria baicalensis root extract
  • Cnidium monnieri fruit extract
  • Dipotassium Glycyrrhizate,

という4つのハーブと、グリセリン、シアバター、ヒアルロン酸、アラントインなどの保湿成分が配合され、パラベンや香料は一切使用していないのが特徴のようです。

治療前と比較して、KAM-3000をした場合は、皮膚の症状などが改善する傾向にあったようです。

Dr.KID
Dr.KID
ステロイド外用薬との比較はされていません。また、オープンラベルの試験ですので、主観的なバイアスも入りやすいと思います。

確かに無治療よりは保湿などの使用をした方が良いのが確かですが、標準治療から外れたこうした治療を無闇に勧めるべきではないでしょう。

あと、この著者のディスカッションのところでは、ステロイド外用薬などの副作用が記載されていますが、重要なところには参考文献の記載がないです。

まとめ

成人のアトピー性皮膚炎において行われた小規模な研究です。

KAM-3000クリームを塗ると、皮膚の症状などは軽快する傾向にあったようですが、標準治療との比較はなされておらず、参考文献の引用も不十分で、不適切な研究と思いました。

 

アトピー性皮膚炎のおすすめ本はこちら:

created by Rinker
内外出版社
¥1,650
(2024/12/08 23:28:17時点 Amazon調べ-詳細)

保護者も医療者も、まずこの1冊!

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/09 01:48:10時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。