ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。
今回は、この検査が診断の一助になるか、感度・特異度の観点から見ています。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
成人の様々な原因の血小板減少において、ITPの初期の診断に有用な検査所見を同定する。
方法
来院時に血小板減少を有し、末梢血膜が正常であった62人の成人患者を検討した。
各患者は身体検査とルーチンの臨床検査を受け、 前向きに22.5 +/- 9.8か月(範囲、8カ月〜41カ月)追跡された。
抗糖蛋白質 (GP) IIb/IIIa抗体産生B細胞の頻度、血小板関連および血漿抗GPIIb/IIIa抗体の存在、網状血小板の割合、および血漿トロンボポイエチン濃度を初診時に調べた。
最終診断は病歴、身体検査、血液検査、骨髄所見および臨床経過に基づいて行われた
結果
46人の患者をITPと診断した。
他の血球減少症の有無、および異形成または破壊の証拠の有無を参考に、16人は骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、巨核球性血小板減少症および血小板産生低下を含む別の疾患を診断した。
6つの初期臨床検査所見は、 ITPを他の診断と区別した:
- 貧血がない
- 白血球減少症がない
- 抗GPIIb/IIIa抗体産生B細胞の頻度の増加
- 血小板関連抗GPIIb/IIIa抗体の増加
- 網状化血小板の割合の増加
- 血漿トロンボポエチン濃度が正常 or わずかな増加。
これらITPと関係した6つの所見のうち3以上をカットオフとすると、後にITPと診断された44人の患者 (96%) で、非ITP疾患の1人の患者 (6%) で認められた。
結論
初期の臨床検査所見は、 ITPの将来の診断を良好に予測することができる。
他の独立した患者群でこれらの同じ診断基準を前向きに評価する更なる研究が必要である。
考察と感想
この論文のTable 3が非常に面白かったです。
ITPの診断というと、簡便な方法では、血小板減少以外に
- 白血球数に異常なし
- 貧血なし
- 網状赤血球数に異常なし
なども参考になると思います。これを使用すると、感度は83%、特異度は88%です。
ここにそれぞれの抗体検査などを追加すると、さらに感度96%、特異度94%にまで上昇するようですね。
成人での結果ですので、小児にどこまで一般化できるのかは、慎重になってしまいます。
まとめ
今回は、免疫性の血小板減少において、血小板関連抗体検査などを追加した場合の感度・特異度を見ています。
従来の血算のみでの判断では、感度は83%、特異度は88%でした。
血小板関連の抗体検査を追加すると、感度96%、特異度94%まで上昇したようです。
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