今回は、最近報告された新型コロナウイルスのワクチンの有効性を検証した、イスラエルからの大規模な観察研究の結果をご紹介します。
- 新型コロナウイルスワクチンの有効性を検証した観察研究
- 感染率、重症化率などを指標とした有効性は90%前後であった。
2021年2月に公表されたようです。
新型コロナウイルスのワクチンの有効性は?[イスラエル編]
研究の背景/目的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する大量ワクチン接種キャンペーンが世界的に開始するにあたり、非対照の設定で多様な集団にわた李、ワクチンの有効性を評価する必要がある。
本研究では、イスラエルの最大規模の医療機関のデータを用いて、BNT162b2 mRNAワクチンの有効性を評価した。
研究の方法
2020年12月20 日から 2021年2月1日までの期間に新規にワクチンを接種したすべての人を、人口統計学的および臨床的特徴に基づいて、ワクチンを接種していない対照者と 1:1 の比率でマッチングさせた。
研究のアウトカムには、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への文書化された感染、症候性のCOVID-19、COVID-19による入院、重症化、死亡が含まれた。
Kaplan-Meier 推定法を用いて、各アウトカムについてワクチンの有効性を、1からリスク比(RR)を引いた値として推定した。
研究の結果
各グループには596,618人が含まれた。
1回目の接種後14~20日目および2回目の接種後7日以上経過した時点でのワクチン有効性の推定値は以下の通りであった:
接種 | 1回目 14-20日後 |
2回目 7日後 |
文書化された感染 | 46% (40-51) |
92% (88~95) |
症候性感染 | 57% (50~63) |
94% (87~98) |
入院 | 74% (56~86) |
87% (55~100) |
重症化 | 62% (39~80) |
92% (75~100) |
死亡 | 72% (19~100) |
文書化された感染症と症候性感染については、特定のサブ集団における有効性の推定値は、年齢層を超えて一貫しており、複数の疾患を併存している人では有効性がわずかに低下する可能性があった。
結論
この全国的な大規模接種下での研究では、BNT162b2 mRNA ワクチンが新型コロナウイルスの転帰に対して有効であることが示唆されており、無作為化試験の知見と一致している。
考察と感想
新型コロナウイルスのワクチンの有効性を検証した研究でした。2回接種後1週間ほどすれば、有効率は90%以上ありそうな結果でした。
論文を読んでいて不明だった点は、マッチングのプロセスが不明確だったこと(変数1つずつでマッチしたのか?)、あとは追跡期間にしたがって相当数のcensoringが生じていると思われる点です(主にFigure 2)。
論文の著者の1人で、有名な疫学者のHernan教授もTwitterで述べていますね:
1/
We’ve just confirmed the effectiveness of the Pfizer-BioNTech vaccine outside of randomized trials.Details @NEJM: https://t.co/POgXK8owvM
Yes, great news, but let’s talk about methodological issues that arise when using #observational data to estimate vaccine effectiveness.
— Miguel Hernán (@_MiguelHernan) February 24, 2021
We’ve just confirmed the effectiveness of the Pfizer-BioNTech vaccine outside of randomized trials.
Yes, great news, but let’s talk about methodological issues that arise when using #observational data to estimate vaccine effectiveness.
A critical concern in observational studies of vaccine effectiveness is #confounding:
Suppose that people who get vaccinated have, on average, a lower risk of infection/disease than those who don’t get vaccinated.
Then, even if the vaccine were useless, it’d look beneficial.
To adjust for confounding:
We start by identifying potential confounders.
For example: Age
(vaccination campaigns prioritize older people and older people are more likely to develop severe disease)Then we choose a valid adjustment method. In our paper, we matched on age.
After age adjustment, how do we know if there is residual confounding?
Here is one way to go about that:
We know from the previous randomized trial that the vaccine has no effect in the first few days.
So we check whether matching on age suffices to replicate that finding.No, it doesn’t.
After matching on age (and sex), the curves of infection start to diverge from day 0, which indicates that the vaccinated had a lower risk of infection than the unvaccinated.
Conclusion: adjustment for age and sex is insufficient.We learned that we had to match on other #COVID19 risk factors, e.g., location, comorbidities, healthcare use…
And we could do so with high-quality data from
@ClalitResearch, part of a health services organization that covers >50% of the Israeli population.As an example,
A vaccinated 76 year-old Arab male from a specific neighborhood who received 4 influenza vaccines in the last 5 years and had 2 comorbidities was matched with an unvaccinated Arab male from the same neighborhood, aged 76-77, with 3-4 influenza vaccines and 2 comorbidities.After matching on all those risk factors, the curves of infection start to diverge after day ~12, as expected if the vaccinated and the unvaccinated had a comparable risk of infection.
Using this “negative control”, we provide evidence against large residual confounding.This is a good illustration of how #randomized trials and #observational studies complement each other for better and more efficient #causalinference.
First, a randomized trial is conducted to estimate the effectiveness of the vaccine to prevent symptomatic infection, but…… the trial’s estimates for severe disease and specific age groups are imprecise.
Second, an observational analysis emulates a #targettrial (an order of magnitude greater) and confirms the vaccine’s effectiveness on severe disease and in different age groups.
However…… the observational study needs the trial’s findings as a #benchmark to guide the data analysis and strengthen the quality of the #causalinference.
Randomized trials & Observational studies working together. The best of both worlds.
Let’s keep doing it after the pandemic
意訳すると以下の通りです:
ランガム化以外の方法で、ファイザー・BioNTechワクチンの効果を確認したところです。素晴らしいニュースですが、観察研究のデータを使って、ワクチンの効果を推定する際に生ずる疫学の方法論的な問題についてお話しておきましょう。
ワクチンの有効性に関する観察研究で重要な懸念事項は、交絡(confounding)です。
ワクチンを接種した人は、平均して、ワクチンを接種しない人よりも感染・疾病のリスクが低いとします。
そうすると、たとえワクチンが役に立たなかったとしても、それは有益に見えるでしょう。
交絡因子を調整するためには、まず、潜在的な交絡因子を特定することから始めます。
例えば、以下のようなものがあります:年齢。つまり、 予防接種キャンペーンは高齢者を優先し、高齢者は重症化しやすい
そして、有効な調整方法を選択する。私たちの論文では、年齢でマッチングを行っています。
マッチングによって年齢調整した後、残った交絡があるか、どのようにして知ることができるのでしょうか?
ここに一つの方法があります:negative control法です。
前のランダム化試験では、ワクチンは最初の数日間は効果がないことがわかっています
そこで、この期間をnegative controlとして使用し、年齢に関するマッチングがこの知見を再現するのに十分かどうかを確認します。
年齢(と性別)でマッチングした後、感染の曲線は0日目から離散し始めているのが分かります。これは、ワクチン接種者が未接種者よりも感染リスクが低かったことを示している。
ここでの結論は、年齢と性別だけでは、交絡の調整が不十分ということです。
例えば、過去5年間に4回のインフルエンザワクチンを受け、2回の併存疾患を有する特定の地域に住む76歳のアラブ人男性と、同じ地域に住む76~77歳で3~4回のインフルエンザワクチンを受け、2回の併存疾患を有するワクチン未接種のアラブ人男性とをマッチングさせたとしましょう。
これらの危険因子をすべてマッチングさせた後、ワクチン接種者と未接種者の感染リスクが同等であった場合は、予想されるように、感染率の曲線は12日目以降に離散し始めた(*交絡がなければ、ワクチンの有効性が生じるまでに要する期間は、感染率に差がないということが予測されます)。
このようにネガティブコントロールを用いて、「交絡が残っている」とは考えづらいエビデンスを提供します。
これは、ランダム化試験と観察研究が、より良く、より効率的な因果推論のために、どのようにお互いを補完し合うのかをよく示しています。
まず、無作為化試験では、症候性感染症を防ぐためのワクチンの有効性を推定しますが、(研究の除外基準になってしまうような)重度の疾患や特定の年齢層に対する試験の推定値は不正確です。
第二に、観察分析では、RCTを模倣して、重度の疾患と異なる年齢層でのワクチンの有効性を確認しています。
一方で、観察研究では、データ分析を導き、因果推論の質を強化するためのベンチマークとしての試験結果が必要です。
ランダム化試験と観察研究の連携。両方の世界のがあるのがベスト。パンデミック後もこの試みを続けよう
前者はバイアスのリスクは低いですが、外的妥当性が問題になることがあります。後者は、さまざまな集団からデータを取ることができますが、バイアスのリスクが大きいです。
まとめ
新型コロナウイルスワクチンの有効性を検証した観察研究でした。感染率、重症化率などを指標とした有効性は90%前後であった。
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