小児科

小児ITP(免疫性血小板減少症)で重篤な出血はどのくらい?[北欧編]

今回は、小児ITP(免疫性血小板減少症)の自然経過を報告した北欧からの論文です。

ポイント

  •  2003年北欧からの報告
  • 診断時に輸血を必要とする重篤な出血を認めた例は3%95%CI, 1.54.7%)、頭蓋内出血は0% (95%CI, 00.7%)
  • 6カ月間追跡していますが、この経過中に重大な出血や頭蓋内出血が生じたケースはいなかった
マミー
マミー
ITPになると、重篤な出血を起こしますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

背景・目的

特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) の小児において、血小板数<20×10^9́/L(= 20,000/μL)の「ハイリスク期間」および出血エピソードの頻度を決定する。

方法

北欧5カ国で新たにITPと診断され、血小板数<30×10^9́/L(= 30,000/μL)の0~14歳の小児を登録した。

医療機関は、診断後最初の6か月の間の特徴、医療的管理の詳細、疾患関連イベントを前向きに報告した。

結果

最終的に501名の小児において、来院時に半分以上は、血小板数<10×10^9́/L(= 10,000/μL)であった。このうち、輸血を必要とする重篤な出血があったのは15例 (3.0%) のみであった。

409人の患者を追跡したところ、277人の血小板減少は問題なく回復した。

血小板数が< 2万/μLとなるハイリスク期間は376人で存在した。

自然軽快したITPの283人のうち、26人は1ヶ月を超えるハイリスク期間があり、25人は30の出血イベントを示した。

慢性ITPの93人の患者では、 73人は1か月以上のリスクがあった。このうち、44人は111の出血イベントを示した。

有害事象の発生頻度は平均0.39/月であった。

生命を脅かすほどの重大な出血は、診断から最初の6か月では生じなかった。

結論

小児ITPのほとんどの症例では、 重篤な出血のリスクがある期間は1ヶ月未満である

重度の血小板減少症が持続しても合併症はほとんどみられず、出血エピソードはそれほど頻繁であり、重篤な出血はさらに非常に稀である。

考察と感想

とても良い研究ですね。小児ITPの自然経過をきちんと捉えた、貴重な報告と個人的には考えています。

黒が重大な出血ですが、血小板1万未満のほうがリスクがやや高いようにもみえますが、それでも少数ですね。

Dr.KID
Dr.KID
イメージより少ないと感じる方がいるかもしれません。

まとめ

北欧5カ国において、診断時に血小板数が30,000/μL未満であった小児501人を調査した前向きコホート研究。

診断時に輸血を必要とする重篤な出血を認めた例は3%(95%CI, 1.5〜4.7%)、頭蓋内出血は0% (95%CI, 0〜0.7%)でした。

重篤な出血は15例と頻度はかなり少ないものの、血小板数が少ないほうが、ややリスクが高いようにも見えます。

最終的に409名を6カ月間追跡していますが、この経過中に重大な出血や頭蓋内出血が生じたケースはいなかったようです。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/03/18 18:37:01時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。