小児科

小児のIgA血管炎の腹痛にステロイドは有効?[アメリカ編]

今回は、小児のIgA血管炎においてステロイドが有効か検討した論文をご紹介しようと思います。

マミー
マミー
IgA血管炎の治療にはどのような選択肢がありますか?

ユーキ先生
ユーキ先生
公表された研究はいくつかあったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

ポイント

  •  アメリカからの報告
  •  ステロイドが腹部症状に有効かを検証
  • 早期に投与した場合、腹部症状に関連する追加投薬、処置、画像検査などの必要性が減るかもしれない

 2012年にアメリカから公表されたようです

小児のIgA血管炎の腹痛にステロイドは有効?[アメリカ編]

研究の背景/目的

新たに発症したヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP:IgA血管炎)で入院した小児の臨床転帰に対する副腎皮質ステロイドの影響を明らかにすることを目的とした。

研究の方法

2000年から2007年の間に国際疾病分類(International Classification of Diseases, Clinical Modification)のコードがHSPで退院した小児を対象に、36の三次医療機関の小児病院の入院管理データを用いて、レトロスペクティブコホート研究を行った。

層別Cox比例ハザード回帰モデルを用いて,時間的に変化するコルチコステロイドへの曝露が,HSPによる入院中に生じる臨床転帰のリスクに及ぼす相対的効果を推定した。

Dr.KID
Dr.KID
Pediatric Health Information System (PHIS) という大規模なデータを使用して研究を行なったようですね。

研究の結果

8年間の調査期間中、新規発症のHSPによる入院は1895件であった。

多変量回帰モデルによる調整の結果、早期の副腎皮質ステロイドへの曝露は、入院中の腹部手術(0.39[95%信頼区間(CI):0.17~0.91])、内視鏡検査(0.27[95%CI:0.13~0.55])、腹部画像診断(0.50[95%CI:0.29~0.88])のハザード比を有意に低下させた。

結論

入院中にステロイドを早期に投与することは、HSPの臨床的に重要ないくつかの転帰、特に消化器症状に関する転帰の改善と関連していた。

考察と感想

これまでIgA血管炎に対するステロイドの有効性を検討したRCTや後向き研究の結果では、結果は一貫していませんでした。また、後向き研究では、Cofounding by indicationやサンプルサイズの小ささにより限界があった。このため、この論文が出版された時点では、IgA血管炎に対するステロイドの使用に関するコンセンサスは得られていないです。

この大規模な多施設共同観察研究では、新規発症のIgA血管炎入院患者の臨床転帰を調べています。
コルチコステロイドの早期投与は、腹部手術(HR, 0.39; 95%CI, 0.17〜0.91)、内視鏡検査(HE, 0.27; 95%CI, 0.13〜0.55)、腹部画像診断(HR, 0.50; 95%CI, 0.29〜0.88)を必要とするHRが統計的に有意に減少し、入院中のNSAID(HR, 0.24; 95%CI, 0.15〜0.38)およびオピオイド使用のHRが減少する(HR, 0.58; 95%CI, 0.40〜0.84)ことが明らかになりました。

Dr.KID
Dr.KID
論文は非常に論理的で読みやすかったです。お手本にしたいくらいですね。

まとめ

今回は、ステロイドの早期治療が小児のIgA血管炎に有効かを検証した大規模な後向きコホート研究でした。

早期に投与した場合、腹部症状に関連する追加投薬、処置、画像検査などの必要性が減る可能性が示唆されていますね。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

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Dr.KID
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noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。