- 川崎病にステロイドはNG
とまで言われていた時代がありました。
詳細は省略しますが、1980年代に行われた観察研究や症例集積などで、ステロイドを使用した場合の冠動脈病変が多かったのが影響しているようです。
2010年前後から、この流れが変わってきて、川崎病でもステロイドが使用されるようになってきました。この先駆けとなる研究を今回は紹介しようと思います。
- 2009年の日本からの報告
- 川崎病のハイリスク患者に対して、アスピリン+IVIGに、ステロイドパルスを併用
- 解熱する可能性は高まり、冠動脈病変のリスクも低下した
日本から報告された観察研究ですね
研究の概要
背景:
川崎病 (KD) 患者の約15~20%は高用量のガンマグロブリン静注 (IVIG) に反応しないことがわかっています。
この論文の著者らは、以前にIVIGに反応性がない患者(=高リスクKD)を同定するための予測法を報告しています。
この、高リスクKD患者に対する初期治療として、高用量IVIGにステロイドパルス を併用した治療法(mPSL+IVIG) における安全性と有効性を検討しています。
方法
高リスクKD患者62人を2時間かけてメチルプレドニゾロンパルス療法(30 mg/kg)を行い、続いて24時間にわたりIVIG 2 g/kgで治療しました[mPSL+IVIGグループ]。
この研究を開始する前に参加病院でIVIG 2 g/kgのみで治療した32人の高リスク患者をコントロール群とし(IVIGグループ)、アウトカム比較しました。
高リスク患者は、 3つの予測因子(CRP > 7 mg/dL、総ビリルビン > 0.9 mg/dL、またはAST > 200 IU/L)の少なくとも2つが同定されています。
結果
患者の66% (95%信頼区間 [CI] 54~78%)はmPSL+IVIG群で迅速な解熱を示したが、 IVIG群では44% (95% CI 26~62%)であった (p=0.048) 。
冠動脈病変は、 mPSL+IVIGおよびIVIG群の患者のそれぞれ24.2% (95% CI 13.2~35.2%)および46.9% (95% CI 28.6~65.2%)で観察された (p=0.025) 。
結論
これは、 mPSL+IVIGが高リスクKD患者の一次治療として有効かつ安全であることを示す最初の報告である。
考察と感想
川崎病の急性期の治療の違いによる有効性の違いを検討しています。
標準治療はIVIG + アスピリンですが、治療抵抗性のありそうな患者に対して、初回からステロイドで炎症を抑えようという発想の研究ですね。
ここから、長いステロイドの旅が再開したようですね。
あくまで前向きコホートで、コントロールは過去の治療患者のデータになります(こう考えると、両方向性のコホートとも言えそう…)。有効性を検証するには、RCTが必要ですね。
まとめ
川崎病の急性期に標準治療にステロイドを追加したところ、解熱する可能性が高まり、冠動脈病変のリスクも低下したようです。
あくまで観察研究ですので、RCTでの結果の検証も必要と思います。
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