科学的根拠のある子育て・育児

アメリカ小児科学会が推奨するスクリーンタイムを超えた場合、発達に影響するのか?[台湾編]

スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。

この理由の1つとして、小児の発達に与える影響が挙げられます。。

特に2歳未満の乳幼児は、テレビ番組などメディアから学習することはできず、その時間は保護者などとの交流・双方向性の教育の機会が奪われてしまいます。

今回は、その点を見た論文をご紹介します。

ポイント

  •  メディアへの暴露時間が、発達に与える影響を推定
  •  メディア暴露時間が長いと、認知・言語・運動能力の遅れは関連性を認めた
マミー
マミー
スクリーンタイムってどうなのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。

オーストラリアも似たような方針を出しています。

 研究の概要

背景・目的:

生後36か月未満の幼児の発達技能に対して、テレビ曝露の影響を推定した文献は少ない。

本研究では、乳幼児を対象にテレビの視聴時間を調査し、認知・言語・運動発達技能に対する影響を評価した。

方法:

台湾南部にある大学医療センターの小児クリニックからデータを収集した。

参加者は、 15か月〜35か月の間に

  • テレビに頻繁に曝露された75人の子供
  • テレビに曝露されていない or 稀にしか曝露されていない75人の子供

の2グループで構成された。

カットオフは以下の通りにしていたようです:

  テレビ曝露 コントロール
1.5〜2歳 あり なし
2歳〜 < 2時間 > 2時間

この2グループで、年齢と性別を用いてマッチングをした。

「Bayley乳幼児発達スケール第2版」および「Peabody発達運動スケール第2版」を用いて発達技能を同定した。

ロジスティック回帰分析などで、テレビが発達に与える影響を推定した。

Dr.KID
Dr.KID
単施設の大学病院外来で行われた横断研究なので、選択バイアスの混入はあるでしょうね。

結果:

テレビに頻繁に曝露されていた75人の子供では、2歳までに毎日平均67.4分のテレビを見ていた。これは、アメリカ小児科学会の基準を参考にすると、過剰なテレビ曝露である。

テレビに頻繁に視聴していた小児は、認知、言語および運動発達の遅延リスクが高い傾向にあった。

さらに、これらの関連性は、時間依存性の傾向を認めた。

結論:

小児科医は、幼児における認知、言語、および運動発達を確実にするために、親および養育者へのテレビ曝露の影響を説明することを推奨する。

幼い子どもにテレビを見て過ごす時間を過度に与えることは、発達上有害であるという事実に、アドボカシー活動では対処しなければならない。

考察と感想

参考になりそうなデータは以下の通りです:

15〜23ヶ月

テレビ視聴 あり
(n = 29)
なし
(n= 29)
認知機能の遅れ 20.7% 17.2%
言語発達の遅れ 31.0% 27.6%
運動発達の遅れ 17.2% 20.7%

 

24〜35ヶ月

テレビ視聴 あり
(n = 46)
なし
(n= 46)
認知機能の遅れ 41.3% 10.9%
言語発達の遅れ 60.9% 21.7%
運動発達の遅れ 39.1% 13.0%

異なる年齢層でも、テレビを過剰に見ているグループの方が、発達の遅れを指摘される割合は高い印象です。

多変量ロジスティック回帰分析によると、

  •  認知機能の発達の遅れ:OR 3.9 [1.4〜5.9]
  •  言語発達の遅れ:OR 3.3 [1.5〜7.3]
  •  運動発達の遅れ:OR 3.7 [1.5〜9.3]

と、テレビ視聴と発達の遅れの関連性が指摘されてますね。

Dr.KID
Dr.KID
横断研究ですので、因果の方向性は分かりづらいですね。

まとめ

今回の研究は、台湾の大学病院外来にて、AAPの推奨する時間以上のメディア暴露が、発達に影響するかを検討しています。

推奨する時間以上のテレビを視聴していた小児は、認知・言語・運動発達の遅れを指摘される割合が高い傾向にあったようです。

乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓

スクリーンタイムのまとめnote

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。