小児科

小児肥満と健康障害について

小児の肥満について、これまでに様々な記事を書いてきました。

こどもの肥満は将来の糖尿病や心疾患のリスクになりえるので、早い時期からの対応が望ましいのですが、なかなか一筋縄ではいきません。 

小児肥満について「どこから肥満というか?」という基準は曖昧ですが、肥満の定義について簡単にまとめました。

 

日本は「肥満度」という独自の方法を用いて、肥満を定義しています。このため、世界のスタンダードとは大きく異なる基準になってしまっています。

 

さて、大人で肥満と聞くと「メタボ(メタボリックシンドローム)」を連想する方が多いかもしれません。

実は、小児でもメタボリックシンドロームという概念は存在します。

 

 

冒頭には小児肥満と生活習慣病について記載しています。

今回は、小児肥満による健康障害について、簡単に説明していければと思います。

小児肥満と健康障害

小児肥満には、大きく分けて3つのタイプの健康問題があるといわれており、

  1. 身体的問題
  2. 心理的問題
  3. そのほかの問題

の3つになります。

1. 身体的問題について

小児でも肥満が長引くと、成人と同じような合併症がでてきます。

例えば、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 高尿酸血症
  • 肝障害
  • 動脈硬化
  • 睡眠時無呼吸

あたりが主要な合併症といえます。

 

2. 心理的な問題について

小児肥満でも、心理的な問題を抱えてしまうことが多いです。例えば

  • いじめの標的になる
  • 自尊心が低下する
  • 無気力になり、不登校になる

といった問題が起こることがあります。

特に小学生高学年や中学生は、容赦なくいじめを行われてしまうケースがあります。

 

3. そのほかの問題について

そのほかの問題点として、

  • 運動機能が低下する
  • 将来の死亡リスクがあがる

などの報告もあります。

小児期の問題だけでなく、成人までその悪影響をひきづってしまうケースもあるのです。

 

小児肥満と主な身体的問題について

小児肥満による身体的問題として多いのが、

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肝障害

の4つです。

▪️ 高血圧について

10代の1〜3%は高血圧で、その半分は肥満が起因するといわれています。

小児期の高血圧を放置すると、成人期の高血圧に移行しやすいため、注意が必要です。

 

▪️ 糖尿病

小児でも糖尿病になることはあります。

肥満により、過剰な脂肪が蓄積し、血糖値を下げるインスリンの効果が弱まってしまいます(インスリン抵抗)。

小児の2型糖尿病患者の70%〜80%は、小児肥満を合併していたといわれています。

糖尿病を放置してしまうと、

  • 目:網膜症
  • 腎臓
  • 神経

などに障害は発生するため、注意が必要です。

 

▪️ 脂質異常症

脂質異常症というと、

  • LDLコレステロールが高い
  • 中性脂肪が高い
  • HDLコレステロールが低い

といった特徴があります。

血液中の脂質の値が異常値ですと、動脈硬化を起こしやすいです。

 

▪️ 肝障害について

栄養を過剰摂取した状態が続くと、肝臓に脂質が蓄積するため、いわゆる脂肪肝になります。

脂肪肝と同時に、肝臓に炎症が起きたり、繊維化を起こしてしまうケースもあります。

まとめ

 今回は小児肥満による健康障害について、簡単に説明してきました。

小児肥満になると、身体的な問題、学校生活での心理的な問題、そして将来の健康への悪影響が懸念されています。

 

小児肥満症診療ガイドライン2017

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。