新型コロナウイルス

新型コロナウイルスの年齢による有症状の割合や、学校閉鎖の効果は?

今回の研究は、アジアや欧州の複数のデータに数理モデルを使用して解析し、学校閉鎖など小児への介入効果や、年齢による感受性のパターンなどを推定した論文です。

ポイント

  •  複数の国のデータを用いて解析
  •  若年者は有症状感染者となる割合は、高齢者と比較して低い
  •  無症状者における感染性が低い場合、小児への介入効果は限定的なものかもしれない
マミー
マミー
学校閉鎖の是非って科学的にどう議論されていますか?

Dr.KID
Dr.KID
とても難しい問題です…。過去の文献をみてみましょう。

Nature Medからの報告です

 研究の概要

背景・目的:

新型コロナウイルスの世界的流行のデータでは、小児の症例の割合が著しく低いことが示されている。

観察された症例における年齢差は、

  1. 感染に対する感受性が低い
  2. 臨床症状を示す傾向が低い
  3. 接触のパターン
  4. 1と2と3の組み合わせ

によって説明されうる。

方法

中国、イタリア、日本、シンガポール、カナダおよび韓国からの流行データに年齢構造数理モデルを適合させることで、これらの可能性を評価する。

結果:

20歳以上の成人と比較して、20歳未満の感染に対する感受性は約半分であった。

臨床症状は10歳から19歳の感染者の21% (95%CI:12~31%)に現れた。
一方で、70歳以上の感染者では、臨床症状を有する割合は69% (57-82%) に上昇すると推定される。

不顕性感染者における感染性/伝達率が低い場合、 小児を対象とした介入(学校閉鎖など)は、SARS‐CoV‐2伝播の減少に比較的小さな影響しか与えない可能性がある。

結論

年齢特異的な臨床区分や感受性の推定値は、国による人口統計学的差異の結果として、 新型コロナウイルスの世界的負担の予測値を示唆するかもしれない。

多くの低所得国では人口構造が比較的若く、中〜高所得国では人口構造は高齢者が多い。つまり、中〜高所得国と比較して、低所得国での1人当たりの臨床症状発生率は、人口構造が若いため、低いと予想される。その一方で、低所得国における併存症の分布も疾患の重症度に影響を及ぼすだろう。

感染の効果的な制御手段がなければ、比較的高齢人口の多い地域では、流行の後期にCOVID-19の症例が不釣り合いに多く見られる可能性がある。

感想と考察

なかなか難しい論文で、疫学を生業にしていますが、感染症疫学は、私の分野(因果推論)とは異なるのもあるのでしょう。
感染症疫学モデルはそこまで詳しくないので、半分も理解できていないと思います。

学校閉鎖の有効性に関して、よく議論されていますが、「全く効果がない」「意味がなかった」という言い切り型はいささか極論です。多少は有効性はあったけれども、それほど大きくはない(インフルエンザなどと比較して)というのが、過去の別の文献でも予々、一致していると思います。私個人としても、そう考えています。

流行の初期に行ったので、それほど有効性が確認できなかったという考え方もありますし、そもそも小児は感受性や感染性が大人より低いため、色んな考え方があります。

 

ピーク 発症数 タイミング
インフルエンザ 17-35% 10-89日
新型コロナ 10-19% 1-6日

例えば、流行のピークをどの程度減らすかという指標で見ても、学校閉鎖の効果は、新型コロナに関しては、インフルに対するそれより低いのが分かります。

また、この論文では、無症候性感染者の感染性を考慮した解析もされていますが、以下のように推定されています:

感染性 ピークの感染者減少率
0% 8-17%
50% 10-20%
100% 11-21%
Dr.KID
Dr.KID
解析に使用したモデルには、様々な仮定が置かれています。

今後は学校閉鎖を終了して学校を再開することの是非が問われてくると思います。学校でのクラスターが多発するかは、注意してみていく必要があるでしょう。

まとめ

今回の論文は数理モデルを使用して、年齢による感染の感受性パターン、学校閉鎖など小児への介入が与えたインパクトを推定していました。

不顕性感染者における感染性/伝達率が低い場合、 小児を対象とした介入(学校閉鎖など)は、SARS‐CoV‐2伝播の減少に比較的小さな影響しか与えていない可能性があるようです。

 

第2回のアンケートが始まっているようですね↓↓

 

Dr. KIDが執筆した医学書:

小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/27 20:15:47時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。