麻疹

麻疹ワクチン接種と免疫グロブリン後暴露予防の有効性 – アウトブレイクの設定における2013年ニューヨーク市

麻疹は、感染症の中でも特に感染力が強く、未だに多くの国でアウトブレイクを引き起こしています。ワクチン接種は麻疹の予防の鍵となりますが、その効果や適用に関する疑問が浮上してきました。2013年、ニューヨーク市で発生した麻疹のアウトブレイクを背景に、Robert J Arciuoloらの研究チームは、麻疹ワクチン接種と免疫グロブリンの後暴露予防の有効性を詳しく調査しました。この論文では、アウトブレイクの設定におけるワクチンおよび免疫グロブリンの有効性を明らかにするための彼らの取り組みと結果を紹介します。

 
参考文献

Arciuolo RJ, Jablonski RR, Zucker JR, Rosen JB. Effectiveness of Measles Vaccination and Immune Globulin Post-Exposure Prophylaxis in an Outbreak Setting-New York City, 2013. Clin Infect Dis. 2017 Nov 13;65(11):1843-1847. doi: 10.1093/cid/cix639. PMID: 29028959.

麻疹ワクチン接種と免疫グロブリン後暴露予防の有効性 – アウトブレイクの設定における2013年ニューヨーク市

研究の背景/目的

麻疹、流行性耳下腺炎、および風疹ワクチン(MMR)または免疫グロブリン(IG)は、麻疹後の曝露予防(PEP)に定期的に使用されます。しかし、現在の麻疹PEPの有効性に関する文献は限られており、変動があります。ここでは、2013年にニューヨーク市(NYC)で発生したアウトブレイク中に麻疹に曝露された子供たちのMMRとIG PEPの有効性を調査しました。

研究の方法

連絡先は2013年3月13日から2013年6月30日までの間にNYC保健精神衛生局によって特定されました。連絡先の麻疹免疫とPEPの受け取りが決定されました。19歳未満の非免疫の連絡先のMMR、IG、および任意のPEP(MMRまたはIG)のPEP効果率[(1 – 麻疹を発症する相対リスク) × 100]が計算されました。

研究の結果

合計3409の連絡先が特定され、そのうち208(6.1%)、274(8.0%)、および318(9.3%)がそれぞれMMR、IG、および任意のPEPの有効性の分析の適格基準を満たしました。

含まれる連絡先の中で、44人がMMR PEPを受け取り、77人がIG PEPを受け取りました。

MMR PEPの効果は83.4%(95%信頼区間[CI]、34.4%、95.8%)。IG PEPを受け取った連絡先は麻疹を発症しなかった。IG PEPの有効性は100%(近似95% CI、56.2%、99.8%)。

任意のPEP(MMRまたはIG)を受け取ることの有効性は92.9%(95% CI、56.2%、99.8%)でした。

結論

PEPを受け取った連絡先は疾患を発症する可能性が低かった。私たちの結果は、麻疹に曝露した後のPEPの投与に関する現在の推奨をサポートしています。これらの結果は、症例の特定に続く麻疹伝播を制限するための迅速な公衆衛生の流行反応の重要性を強調しています。

考察と感想

アメリカでは2000年に麻疹が撲滅されたと宣言されたものの、未接種の集団を中心に、国外からの麻疹の持ち込みによるアウトブレイクが続いています。これを収束させるための迅速な対策として、患者の隔離や、麻疹に曝露した非免疫者への後暴露予防(PEP)が実施されています。アメリカの予防接種実施委員会(ACIP)の推奨により、麻疹に初めて曝露されてから72時間以内に、麻疹に免疫がない人々に対して、麻疹、風疹、おたふくかぜのワクチン(MMR)でのPEPが行われています。さらに、特定の高リスク群に対しては免疫グロブリン(IG)によるPEPも推奨されています。しかし、PEPの効果に関するデータは限られており、その効果にはばらつきが見られます。2013年のニューヨーク市のアウトブレイクにおいて、麻疹に曝露された非免疫の子供たちへのPEPの効果が詳細に調査されました。

麻疹のアウトブレイクが発生した際、19歳未満の接触者に対して行われた曝露後予防(PEP)は、非常に効果的であることが確認されました。特に、MMR PEPは83%、IG PEPは100%の有効性を示しました。この効果は、接触者が曝露時に免疫がなかった場合に特に顕著でした。さらに、他の研究との比較では、MMR PEPの効果は100%または90.5%とされています。IG PEPの高い効果は、初回の曝露から6日以内にIGを投与したこと、および過去の研究で使用されていたものよりも高い用量を使用したことが背景にあると考えられます。このアウトブレイクは、麻疹がアメリカで撲滅されて以来、最大のものであり、この研究の結果は現行のACIPの推奨を強力に支持しています。全体として、これらの結果から、麻疹の伝播を効果的に防ぐためには、PEPの迅速な投与が極めて重要であることが明らかになりました。

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/26 20:15:38時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。