新型コロナウイルス

乳幼児の新型コロナウイルスの感染率は?保育所での拡大は?[フランス編]

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はすべての年齢の人に感染します。

しかし、これまでに発表されたデータによると、検査室で確認された感染症例のうち、小児(17歳以下の人)が占める割合はわずか1~8%、入院患者の2~4%という報告もあります。

さらに、小児では入院、集中治療室への入院、酸素療法、人工呼吸を必要とすることはほとんどありません。

一方で、小児が実際にどのくらい感染していたのか、また保育所などでの感染拡大にどの程度影響していたのかを検討した研究は多くはありません。このため、今回の研究が行われたようです。

マミー
マミー
新型コロナの保育所などでの感染は大丈夫なのですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
最近公表された研究があったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

 

ポイント

  •  乳幼児と保育所職員における新型コロナウイルスの感染率を推定した研究

   2021年2月に公表されたようです

乳幼児の新型コロナウイルスの感染率は?保育所での拡大は?[フランス編]

研究の背景/目的

乳幼児が 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の拡大に、どの程度寄与しているかは不明である。

本研究の目的は、フランスで全国的にロックダウンが行われた際に、キーワーカーの子どもたちのために開園を続けていた保育園を対象に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体の血清有病率を推定することであった。

研究の方法

フランスで行われた全国的なロックダウンの期間中(2020年3月15日~5月9日の間)に22のデイケアセンターのいずれかに通園していた小児および職員を、この横断的、多施設、血清有病率調査に対象とした。

COVID-19の患者や小児に、職業的に曝露されていない病院職員は、コントロール群に登録された。

主要アウトカムは、小児、保育所職員、および比較対照群における SARS-CoV-2 の血清有病率であった。

キャピラリー全血中の SARS-CoV-2 に対する抗体の存在を、迅速クロマトグラフィー免疫測定法を用いて測定した。

有病率を IgG または IgM 検査陽性者の割合として計算し,Bayesian smoothingを用いてアッセイの不完全な感度と特異度を考慮した。

Dr.KID
Dr.KID
比較対象が少し微妙な気もします…

研究の結果

2020年6月4日~7月3日の間に、小児327名(平均年齢1.9歳[SD 0,9歳]、範囲5カ月~4.4歳)、保育所職員197名(平均年齢40歳[SD, 12歳])、比較対象群の成人164名(42歳[SD, 12歳])を登録した。

血清学的検査で陽性が観察されたのは、14人の小児(生の血清有病率4.3%;95%信頼区間2.6-7.1)と14人の保育所職員(7.7%;4.2-11.6)であった。

アッセイの不完全な感度と特異度を考慮した結果、小児の 3.7%(95%信頼区間 [95% CrI] 1.3-6.8)および保育所職員の 6.8%(3.2-11.5)が SARS-CoV-2 に感染していたと推定された。

9人の参加者が血清学的検査で陽性(生の血清有病率5.5%、95%信頼区間[2.9-10.1])であり、アッセイの特徴を考慮した後の血清有病率は5.0%(95%信頼区間[1.6-9.8])であった。

探索的分析から、血清陽性の子供は、検査室でCOVID-19が確認されている成人の家庭のメンバーに曝露された可能性が、血清陰性の子供よりも高いことが示唆された(14人中6人[43%]対307人中19人[6%];相対リスク7.1[95%CI 2.2-22.4])。

結論

血清学的検査の結果、SARS-CoV-2感染の幼児の割合は低かった。保育園内での感染よりも家族内感染の方が有力であると考えられた。

この探索的仮説を確認するためには,さらなる疫学研究が必要である.

考察と感想

サンプル数は少ないのでフランスを代表しているとは言い難いですが、この時期の成人は10%弱が陽性という結果もあったようなので、小児は少ないと言えるかもしれません。

また、ほとんどの小児は家庭内での感染で、これも既報通りと思います。

Dr.KID
Dr.KID
家庭内の大人が感染しないようにするのが重要ですね。

まとめ

こちらは、新型コロナウイルスの感染に関して、保育所での状況を調査した研究になります。

フランスの成人より感染率は低く、感染源は家庭内が多かったようで、既報と同じような結果でした。

 

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Dr.KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。