小児科

こどもが動物に咬まれたときの対処法と注意点

 

  • 「ペットに咬まれてしまました」
  • 「猫にひっかかれてしまいました」

など、動物との触れ合いから、咬まれたり引っかかれたりして、怪我をしてしまうことがあります。
また、ご自宅で飼っているペットのこともあれば、公園などで他の家の犬などに咬まれてしまうケースもあります。

Dr.KID
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私も幼少時に公園で飼い犬に急に咬まれたことがあります…

反面、応急処置や受診の基準については、中にはよく分からない方もいるでしょう。
そこで、今回は動物(主に犬や猫を対象)に咬まれた時の対処法について解説していきます。

Dr.KID
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急に咬まれることがあります。

本記事の内容

  • 動物咬傷で注意すべきポイント
  • 動物に咬まれた時の応急処置

動物に咬まれることを「動物咬傷」と言いますが、今回はこれらのポイントに絞って説明します。
沢山の方が動物咬傷で受診されているわけではありませんが、外来を続けていると定期的にいる印象です。
今回は主に犬猫を中心にお話をしていければとも思います。

動物に咬まれた時に注意すべきこと

動物と一言でいっても、様々な種類がいますが、人間を含み動物には口腔内に様々な雑菌が存在します。
このため、動物に咬まれてしまった時には、細菌感染への注意が必要です。

パスツレラ(Pasteurella)感染症

動物に咬まれたことで発症する疾患として、パスツレラ(Pasteurella)感染症があります。

簡単に説明しますと、咬み傷・引っ掻き傷の数時間後に、激痛を伴う腫れと、異臭のする浸出液が出てくるのを特徴としています。

(猫ひっかき病の場合、受傷後数週間でリンパ節が腫脹してきます)

パスツレラ症を起こしやすい動物

ペットで多いのは犬猫ですが、特に猫にパスツレラが生息している可能性は70〜90%ほどといわれており、咬まれた場合は高い確率で傷口が感染します。

Dr.KID
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猫に咬まれた、ひっかかれた時は注意が必要です。

一方で、犬にはパスツレラが生息している可能性は20〜40%ほどですので、咬まれた時の感染の確率は猫ほど高くはありません。

*動物の口腔内には、パスツレラ以外にも雑菌が多数生息しているため、咬まれた場所からの口腔内の雑菌による感染にも注意が必要となります(ヒトに咬まれた場合も同様です)。特に猫の牙は細く鋭いため、傷が深くなりやすく、感染しやすいと言われています。

動物に咬まれたときの応急処置について

動物に咬まれた場合の対処法ですが、傷の対処法と同じで

  • 水道水でしっかりと流す
  • 出血がある場合、ガーゼやタオルで圧迫止血する

が基本となります。腫れている時や、痛みがひどい時は、氷や濡れたガーゼなどで冷やすと痛みが多少は和らぎます。

受診の目安について

傷の程度にもよりますが、判断がつかないで心配であれば一度病院を受診して医師の判断を仰ぐと良いでしょう。

特に傷口が深い、腫れている、熱がある、痛みがひどい時は、傷口の医学的な処置が必要となりますので、迷わず受診されてください。

受診先としては、軽い傷であれば小児科でも診てくれるかもしれませんが(外傷を診ない小児科は多いです)、傷口が深かったり、腫れていたりする場合は救急科や形成外科の方が受診先としては良いかもしれません。

病院での処置について

病院によって方針は異なると思いますが、

  • 傷口をしっかり洗浄し、止血をする
  • 傷の大きさによっては縫合をする(議論が分かれています)
  • (感染症の予防として)抗生剤を投与する

を行います。
傷口の状態とワクチン歴から破傷風トキソイドを接種することがあります。

狂犬病が心配です

時に、狂犬病のことを気にされる方もいます。

狂犬病については、現在の日本では飼い犬のワクチン摂取が義務化されたおり、日本国内での発生はありません(海外渡航時に咬まれて発症した例はあります)。

動物との関わり方について

ペットと子供というと、可愛いらしいコンビで、とても微笑ましい光景です。

しかし、ペットと言っても100%安全ではありませんので、リスクがあることは承知しておいても良いと思います(もちろん、感情に心配しすぎる必要もないと思っています)。

ペットがお子さんに対して、主従関係をどう認識にしているかによって、咬む可能性も異なりますし、お子さんがペットに手を出してしまったり、嫌がることをした場合は怒って咬みつくこともあるでしょう。
動物との関わり合い方についても考える必要があります。

 また、動物咬傷とは別件になりますが、ペットからの感染で、細菌性腸炎を乳幼児が発症してしまうこともあります。

まとめ

今回は主に哺乳類の動物に咬まれたときの注意点や対処法について記載しました。

基本は皮膚の外傷の応急処置と一緒になりますが、動物の口腔内にいる雑菌による感染のリスクにも注意が必要となります。

また、ペットに咬まれてしまうケースもあり、ご自宅でペットを飼っている場合、触れ合い方について考えておく必要があります。

Dr.KID
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ペットにもそれなりのリスクがあることを知っておくと良いでしょう。

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www.dr-kid.net

Reference

・CURRENT Diagnosis and Treatment Pediatrics, Twenty-Fourth Edition
・Nelson Textbook of Pediatrics, 2-Volume Set
・Nelson Essentials of Pediatrics, 8e
・Medical Note presents
・小児科学, 10e
・小児の薬の選び方・使い方
・HAPPY!こどものみかた
・子どもの風邪
・小児科診療ガイドライン
・今日の治療薬

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。