止瀉薬

タンニン酸アルブミンの有効性について

タンニン酸アルブミンの下痢止めとしての有効性を検討した論文はごくわずかです。1992年にドイツからトルコへ旅行した方620人のうち、旅行者下痢症を発症した186人を対象に行われたランダム化比較試験がありますので、こちらを紹介します。

参考文献

Ziegenhagen, D. J., Raedsch, R. & Kruis, W. [Traveler’s diarrhea in Turkey. Prospective randomized therapeutic comparison of charcoal versus tannin albuminate/ethacridine lactate]. Med. Klin. (Munich).87, 637–9 (1992)

ドイツ語で記載された文献ですので、そこまで正確な意訳は難しいですが、分かる範囲で記載しています。こちらの論文は、友人から頂いたものです。

旅行者下痢症を発症した方に、医療用石炭(medical coal)またはタンニン酸アルブミン・乳酸エタクリジン(TA/EL)を投与して、有効性を検討しています。

研究結果

時間

医療用石炭
n  = 90

TA/EL
n = 89

0-24

8.9
(3.8)

10.9
(4.2)

24-48

6.7
(2.7)

5.4
(2.3)

47-72

4.2
(1.9)

1.2
(0.9)

72-96

2.0
(1.2)

1.0
(0.7)

96-120

1.5
(1.0)

1.2
(0.8)

下痢の回数は、治療開始1−2日ごろから、タンニン酸アルブミン・乳酸エタクリジン(TA/EL)グループのほうが少ない傾向にあります。

下痢が持続する割合をグラフにすると以下の通りです。

下痢が持続している人の割合を比較していますが、タンニン酸アルブミン・乳酸エタクリジン(TA/EL)のほうが、下痢が早く軽快する傾向にあるのがわかります。これらの結果から、タンニン酸アルブミンの有効性が示唆されています。

小児においてタンニン酸アルブミンの有効性を検討した英語論文は全くありません。このドイツでの研究結果を小児のウイルス性胃腸炎などに一般化するのはやや困難であると思われます。

また、乳性カゼインを含むために生じるアレルギーのリスク、ロペラミドなどで認めた腹部膨満や腸閉塞のリスクといった比較的稀な合併症の評価も不十分と考えています。

まとめ

ちょっと今回は言語的な制約もあり、かなりあっさりな解説ですが、タンニン酸アルブミンは、旅行者下痢症の

  •  下痢の期間・回数を改善させるかも
  •  小児の急性胃腸炎に対する有効性は不明
  •  乳性カゼインを含むために乳アレルギーには注意が必要
  •  重篤な副作用の評価も不十分

となります。これだけみると、あまり小児に投与する気は起きないのが、個人的な感想です。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。