科学的根拠

乳酸菌はロタウイルス性胃腸炎の治療に有効なのか? フィンランド編

ずっとプロバイオティクスの胃腸炎に対する有効性の歴史を遡ってきましたが、どうやら1990年代前半〜中盤にかけて徐々に小児でRCTが組まれている印象です。

今回はそのうちの1つをピクアップしました。
薬局などで処方されるプロバイオティクスと、フィンランドにて市販薬としてよく使用されているプロバイオティクスの有効性を比較しています。

研究の方法

今回の研究は、1993年にフィンランドでロタウイルスの流行期に行われました。対象となったのは、

  •  4ヶ月〜35ヶ月の乳幼児
  •  7日以内の下痢
  •  ロタウイルス陽性
  •  1日に3-4回以上の下痢がある
  •  入院が必要である

などの基準を満たした小児です。

治療

胃腸炎の標準治療である適切な補液をした後に、

  •  凍結乾燥させた Lactobacillus casei sp. GG (LGG)
  •  Lactobacillus casei subsp. rhamnosus (Lactophilus)
  •  Streptococus thermophilus, L. bulgaricus, L. rhamnosusのコンビ(Yalacta)

のいずれかをランダムに割り当てられ、5日間投与されています。

アウトカム

アウトカムは、

  •  下痢の期間
  •  嘔吐の期間
  •  ロタウイルスに特異的なIgA抗体の産生

などをみています。

研究結果と考察

最終的に、49人が研究に参加し、内訳は

  •  LGG: 16人
  •  Lactophilus: 14人
  •  Yakacta: 19人

となりました。平均年齢は17-21ヶ月ほどですので、2歳前後のお子さんが多かったようです。入院前の下痢の期間は2日ほどでした。

下痢や嘔吐について

下痢の期間は以下の通りでした:

  LCG Lactophilus Yalacta P
下痢の期間 1.8
(0.8)
2.8
(1.2)
2.6
(1.4)
0.04
下痢の有無        
1日目 11
(69%)
13
(93%)
13
(68%)
0.20
2日目 3
(19%)
9
(64%)
11
(58%)
0.02
3日目 0
(0%)
3
(21%)
6
(32%)
0.05

LCGを使用したグループが最も短く、1日ほど早く警戒している印象です。
下痢が止まったのも、2日目の患者が多く、この内容に一致しています。

嘔吐の結果はこちらです:

嘔吐の有無 LCG Lactophilus Yalacta P
1日目 10 5 9 0.34
2日目 0 4 2 0.05
3日目 0 1 2 0.42

嘔吐に関しても、2日目はLCG群が少なくなっています。全体としてはそれほど変わらなそうな印象です。

IgA抗体の産生について

IgA LCG Lactophilus Yalacta P
急性期 0.3 0.3 0.1 0.41
回復期 27.5 29.6 6.1 0.01

回復期のロタウイルス特異的なIgAの量は、LCGとLactophilus群では同等でしたが、Yalacta群ではやや低かったです。

考察と結果

今回の結果はLCG群が最も成績がよく、下痢の期間を短縮させ、IgA抗体の産生も良好でした。一方で、Lactophilusは抗体産生は良好であるものの、下痢の期間を短縮する効果はなく、Yalactaに関してはどちらも劣る内容でした。

この結果を見ると、治療の有効性を語る際には、やはりプロバイオティクスと一括りにするのではなく、その種類まで気にする必要がありそうです。
疫学の世界では「well-defined intervention」と言いますが、治療効果を計測する場合に、まず治療そのものがきちんと定義されている必要があります。
この論文を読んでいて、その基本について思い出しました。

LCGの結果は綺麗と思いました。というのも、IgA抗体がきっちり上がり、臨床的なアウトカムも良好だからです。
一方で、Lactophilusは下痢の期間は短縮させないものの、IgA抗体の上がり方は良好です。この辺り、矛盾を感じてしまいました。

確かにIgA抗体は腸管粘膜で分泌され、病原体を退治する役割があるので、反応が良ければ早く治りそうなのですが、必ずしも臨床的なアウトカムに反映されないこともあるようです。
この辺り、アウトカムの計測に関して、生物学的な指標と臨床的な指標がイコールにならないことがある点を示唆していると思いました。

まとめ

今回の研究では、LactophilusやYalactaと比較して、LCGはロタウイルス性胃腸炎による下痢の期間を短縮させていました。

LCGやLactophilusはIgA抗体の産生を誘導しているのかもしれませんが、必ずしも臨床的なアウトカムとリンクしない可能性もあります。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。