抗菌薬

小児の胃腸炎と抗菌薬に関する考察 [急性胃腸炎の疫学]

  •  子供が下痢しています。抗菌薬をください
  •  下痢をした時の家庭での対処法を教えてください
  •  小児の胃腸炎はなぜ抗菌薬がいらないのですか?

などなど、小児科外来をしていると様々な質問を保護者からいただきます。
小児の下痢の原因はどのような病原体があるのか、一般的に家庭でどのようにしたら良いのか、ガイドラインや過去の報告を見ながら説明していきましょう。

各種ガイドラインは小児の胃腸炎に対して何を推奨しているのか?

マミー
マミー
子供の下痢って一般的にどうしたらいいんですか?

Dr. KID
Dr. KID
ガイドラインを参照しながら解説していきましょう。

まず、急性胃腸炎の標準治療について、簡単におさらいをしておきましょう。
日本1・欧州2・アメリカ3のガイドラインによると、急性胃腸炎の標準治療は適切な水分摂取、年齢に適した食事摂取であり、基本的に抗菌薬を必要としません。
急性胃腸炎に抗菌薬が不要である主な理由の1つに、原因はウイルスが大半を占めるからです。

 例えば、アメリカ4とカナダ5で行われたプロバイオティクスが乳幼児の急性胃腸炎に有効かを検証した研究があります。この研究では、救急外来に受診した小児の便から病原体の頻度を調査しています。この結果は、ロタウイルスワクチンが導入後の先進国における小児科外来の急性胃腸炎の疫学をそれなりに反映していると思います。

マミー
マミー
本当にウイルス性ばかりですか?

Dr. KID
Dr. KID
過去の研究結果を見てみましょう。

 

アメリカ4

カナダ5

ノロウイルス

19.6%

26.3%

ロタウイルス

17.7%

24.3%

アデノウイルス

9.1%

11.0%

赤痢

5.0%

カンピロバクター

1.2%

サルモネラ

0.9%

2.3%

大腸菌(O157)

0.8%

毒素原性大腸菌

0.7%

志賀毒素産生性大腸菌

0.7%

ジアルジア症

0.5%

クリプトスポリジウム

0.4%

赤痢アメーバ

0.3%

ビブリオコレラ

0.3%

エルシニア

0%

CD toxin A/B陽性

7.4%

13.0%

不明

42.8%

23.0%

「不明」とされた割合が高いですが、細菌の培養は網羅的に行われており、ほとんどがウイルス性と判断しています。

検出された病原体の多くはウイルス性で、細菌は数%〜10%ほどです。こちらのデータがロタウイルスワクチン導入後の病原体の疫学を反映していると仮定しても、細菌性腸炎の全ての症例で抗菌薬が必要なわけではないので、日本国内の処方率でもやや過剰な処方が行われていると考えられます。

ちなみに、CD toxin A/Bの陽性例が7.4%〜13.0%といますが、過剰に恐れる必要はありません。新生児の30%ほどがクロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)を保菌していますが、乳児期以降は保菌率が減少していきます6

また、2歳以下の小児ではCD toxinの受容体が発現していないため発症できず、基本は健常な乳幼児の胃腸炎の原因として考えていません。

マミー
マミー
胃腸炎はウイルス性が多いのは本当なんですね

Dr. KID
Dr. KID
データを見る限り、ウイルス性がほとんどです。また、細菌性だとしても、抗菌薬が本当に必要なお子さんは限られています。

まとめ

小児の急性胃腸炎は…

  •  ウイルス性が多い
  •  各国のガイドラインは抗菌薬のルーチンでの投与を推奨していない
  •  水分・塩分・糖分の補給と、年齢に応じた食事をしっかり
Dr. KID
Dr. KID
以下の記事も参考にどうぞ。

こどもが嘔吐や下痢をした時の、水分と食事摂取について こどもが急に吐いてしまいました 下痢が続いています 脱水は大丈夫でしょうか? など、急な嘔吐・下痢の対処法や水分摂取...

参考文献

  1. Ohnishi K, Ainoda Y, Imamura A, Iwabuchi S, Okuda M, Nakano T. JAID/JSC Guidelines for Infection Treatment 2015−Intestinal infections. J Infect Chemother. 2018;24(1):1-17. doi:10.1016/j.jiac.2017.09.002
  2. Guarino A, Ashkenazi S, Gendrel D, Lo Vecchio A, Shamir R, Szajewska H. European society for pediatric gastroenterology, hepatology, and nutrition/european society for pediatric infectious diseases evidence-based guidelines for the management of acute gastroenteritis in children in Europe: Update 2014. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;59(1):132-152. doi:10.1097/MPG.0000000000000375
  3. Shane AL, Mody RK, Crump JA, et al. 2017 Infectious Diseases Society of America Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Management of Infectious Diarrhea. Clin Infect Dis. 2017;65(12):1963-1973. doi:10.1093/cid/cix959
  4. Schnadower D, Tarr PI, Casper TC, et al. Lactobacillus rhamnosus GG versus Placebo for Acute Gastroenteritis in Children. N Engl J Med. 2018;379(21):2002-2014. doi:10.1056/NEJMoa1802598
  5. Freedman SB, Williamson-Urquhart S, Farion KJ, et al. Multicenter Trial of a Combination Probiotic for Children with Gastroenteritis. N Engl J Med. 2018;379(21):2015-2026. doi:10.1056/NEJMoa1802597
  6. Schutze GE, Willoughby RE. Clostridium difficile infection in infants and children. Pediatrics. 2013;131(1):196-200. doi:10.1542/peds.2012-2992

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。