今回は、妊娠中に新型コロナウイルスに感染した場合、新生児に抗体が移行していたかを検討した研究を紹介しようと思います。
妊婦が新型コロナウイルスのワクチン接種をすることで、新生児を守ることができるのかを検討する上で、非常に重要なデータになると思います。
- 妊婦から新生児に新型コロナウイルスの抗体が移行するか確認した研究
- 9割弱の症例でIgG抗体が移行していた
Assessment of Maternal and Neonatal Cord Blood SARS-CoV-2 Antibodies and Placental Transfer Ratios
2021年1月に公表されたようです。
妊婦が新型コロナウイルスに感染したら、新生児に抗体は移行する?
研究の背景/目的
母体由来の抗体は新生児における重要な免疫である。
妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に対する母体の抗体反応の動態を理解することは、新生児の管理および母体のワクチン接種戦略に役立つ。
今回の研究は、母体と新生児の 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)特異的抗体濃度の関連を評価することを目的に行われた。
研究の方法
このコホート研究は、ペンシルベニア州フィラデルフィアのペンシルベニア病院で行われた。
2020年4月9日から8月8日までの間に、合計1714人の女性が研究施設で分娩した
1471 人の母体および臍帯血の血清を利用して、母体/新生児の抗体測定した。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイク蛋白質の受容体結合ドメインに対する IgG および IgM抗体をenzyme-linked immunosorbent assayで測定した。
抗体濃度および胎盤移植率は、人口統計学的データおよび臨床データと組み合わせて解析した。
研究の結果
研究コホートは分娩中の女性1714 人で構成され、年齢の中央値(四分位間幅)は 32(28~35)歳であった。
母体/新生児のペアで血清が得られた 1471 人のデータのうち、分娩時に新型コロナ(SARS-CoV-2)のIgG および/または IgM 抗体が 1471 人中 83 人(6%;95% CI、5~7%)の女性に検出され、新生児の臍帯血からは 83 人中 72 人(87%;95% CI、78~93%)から IgG が検出された。
IgM は臍帯血検体からは検出されず、血清陰性の母親から生まれた乳児からは抗体は検出されなかった。
11人中5人(45%)はIgM抗体のみを有する母親から生まれ、11人中6人(55%)はIgG濃度が血清陽性の母親と比較して有意に低い母親から生まれた。
臍帯血IgG濃度は、母親のIgG濃度と正の相関があった(r = 0.886; P < 0.001)。
1.0 以上の胎盤移行比は、無症候性感染、および軽度、中等度、重度のコロナウイルス感染で観察された。
抗体の移行率は,母体感染の発症から出産までの時間が長くなるにつれて増加した。
結論
このコホート研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する母体の IgG 抗体が、妊娠中の無症状感染および症候性感染後に胎盤を介して新生児に移行していた。
臍帯血中の抗体濃度は母体の抗体濃度と相関し、感染発症から出産までの期間と相関していた。
我々の知見は、新型コロナウイルス感染からの新生児を守るために、母体由来のSARS-CoV-2特異的抗体の可能性を示している。
考察と感想
新生児の免疫は未熟であるため、感染症からの新生児を守るのは、母体由来の抗体に依存しています。
妊娠中に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染に応答して産生される母体抗体が胎盤を通過する程度を理解することは重要でしょう。
なぜなら、新生児を新型コロナウイルスからの守るため、および有効なワクチンが広く利用可能になった場合に適切な母体ワクチン接種戦略を開発するために重要だからでしょう
母親から胎児/新生児への抗体の移行は、IgG抗体でおこります。これが臍帯血で認められたのは、今後、母親がワクチンを接種した場合に、新生児へと抗体が移行して、感染から守ってくれる可能性が示唆されたといえます。
まとめ
こちらは、新型コロナウイルスに感染した妊婦において、新生児に抗体が移行したかを検討した研究です。
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)IgG抗体陽性の妊婦83人中72人で胎盤を介して新生児に移行し、臍帯血IgG濃度は母体抗体濃度と相関していたようです。
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