科学的根拠

ぬるま湯に浸したスポンジと解熱薬の解熱効果の比較

前回、こちらの記事でもぬるま湯に浸したスポンジと解熱薬の有効性を検討した研究を紹介してきました。

ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭くのと解熱薬はどちらが効果的?熱が高くて辛そうな時、どうやって解熱させるかですが、  解熱薬を使用する  ゆるま湯に浸したスポンジ・タオルで体を拭く ...

「解熱薬」というくらいでしから、熱を下げてナンボでしょうが、どのくらいの間隔で、どの程度熱が下がるのかを知っておくことは重要でしょう。
また、ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭くことで、体温が少し低下するのを知り、少し驚きました。

もちろん1つの研究で確定的なことは決して言えないため、類似の研究を見つつ総合的な判断をしたいところです。

今回はこちらの研究をピックアップしました。
1990年ごろにアメリカで行われた研究になります。
研究デザインは過去の研究と似通っているので、一貫した結果が得られているのか見てみましょう。

研究の方法

今回の研究は、73人の小児を対象に、アメリカで行われたランダム化比較試験で、

  •  38.9℃以上
  •  生後7週間以上、4歳未満
  •  3日以内の抗菌薬内服なし
  •  4時間以内に解熱薬を使用していない

患者を対象に研究が行われました。治療は、

  1.  ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭く(20分)
  2.  解熱薬を使用する(アセトアミノフェン)
  3.  ⑴と⑵を両方使用する

の3種類をランダムに割りあてて、30分後・60分後に体温を計測しています。

研究の結果

合計73人の患者が参加し、内訳は以下の通りになります(Tableは原著論文より拝借)。

1歳台での参加者が多かったようです。

解熱効果について

こちらは、

  1.  ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭く(20分)
  2.  解熱薬を使用する(アセトアミノフェン)
  3.  ⑴と⑵を両方使用する

の解熱効果を見ています。

「(3) 解熱薬 + スポンジ」> 「(2) 解熱薬」 > 「(1) スポンジ」の順に解熱効果は大きかったようです。

少しグラフにしてみてみましょう。

(灰色:スポンジのみ、茶色:解熱薬のみ、黒:スポンジ+解熱薬)

60分というやや短い時間ですが、スポンジのみより解熱薬を使用した方が体温は下がりそうな印象です。
また、スポンジと解熱薬を同時に使用すると相加効果もありそうです。
熱を下げるメカニズムが両者で異なるので、これはある意味当然の結果かもしれません。

考察と感想

今回の研究も、以前ご紹介したものと類似の結果でした。
古い論文なので、現在、アメリカやヨーロッパで、ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭く行為をしているのか定かではありませんが、どうやら解熱効果が全くないわけではなさそうです。
ただし、お子さんによってはかなり不快に感じるケースもあるので、この伝統的な方法が本当に良いかは少し疑問です。

この方法を応用するとすれば、水分摂取がしっかりできて、ある程度活気のあるお子さんを、ぬるめのお湯に浸ったり、シャワーで体を洗ってあげることでしょうか。
確かに外来で「熱があるけれど、お風呂の入っていいいですか?」と質問された時は、「ぬるめのお湯やシャワーで短時間ですませるのなら、良いと思いますよ」とお返事をすることがあります。(詳しくはこちら↓)

かぜをひいた時にお風呂に入れてもよいですか?カゼのときにお風呂に入ってはダメですか? 外来で患者さんからの質問で多いのは 「カゼひいてる、熱があるので、入浴はしないほうがよいで...

「アセトアミノフェン(解熱薬)で本当にお熱は下がりますか?」と質問を受けることがあります。
体内の炎症の勢いにもよりますが、30分程度で0.5℃、1時間で1℃くらいの解熱効果はありそうな結果でした。
これは平均的にみた結果ですので、とあるお子さんはもっと下がるかもしれませんし、別のお子さんは下がりにくいこともあり、ケースバーケースです。同じお子さんでも、毎回、熱の下がり方は一緒ではありません。

まとめ

今回の結果では、「解熱薬+スポンジ」>「解熱薬」>「スポンジ」の順に解熱効果は大きそうでした。

ぬるま湯を浸したスポンジで体を拭く場合、お子さんは高率で嫌がると思うので、この方法が熱があるお子さんに本当に適しているのか、少々疑問が残ります。
また、論文は古いもので、現代で欧州や北米で同じような対処法をしているかは、はっきりとはわかりません。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。