乗り物酔い

乗り物酔いに対する低用量経鼻スコポラミンの有効性[アメリカ編]

今回は、乗り物いに対して点鼻型のスコポラミンは有効か、安全かを検証した研究の紹介です。

マミー
マミー
乗り物酔いに有効なお薬はありますか?

ユーキ先生
ユーキ先生
1990年くらいから、さまざまな研究がされていたようです。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • スコポラミンの点鼻製剤の有効性を検証したランダム化クロスオーバー研究
  • プラセボと比較して、投与後15分以内に作用が発現し、乗り物酔いに有効
  • 認知的な障害や副作用の増加はないことが示唆

参考文献

Simmons RG, Phillips JB, Lojewski RA, Wang Z, Boyd JL, Putcha L. The efficacy of low-dose intranasal scopolamine for motion sickness. Aviat Space Environ Med. 2010 Apr;81(4):405-12. doi: 10.3357/asem.2668.2010. PMID: 20377145.

 2010年にアメリカから公表されたようです

乗り物酔いにおいてスコポラミン点鼻薬は有効?[アメリカ編]

研究の背景/目的

スコポラミンは有効な乗り物酔い予防薬であるが、経口および経皮製剤は吸収が遅い

そこで、スコポラミンの経鼻製剤(INSCOP)を用いて、吸収を促進し、潜在的な効果を検証した。

研究の方法

平均年齢23.5±3.0歳、Modified Motion Sickness Susceptibility Questionnaire-Short Formの平均スコア11.3±4.7点の乗り物酔いしやすい16名の被験者が研究に参加することを志願した。

各被験者にスコポラミン経鼻剤(INSCOP)0.4 mgまたはプラセボを、無作為二重盲検クロスオーバーデザインで投与し、投与後40分で、中程度の吐き気が出るまで階段状にコリオリクロスカップリングを体験してもらった。

有効性データ、認知・生理・覚醒度評価は、ベースライン制御時および実験試験期間中に収集された。

Dr.KID
Dr.KID
回転椅子で船酔いをシミュレーションしたようですね。

研究の結果

コポラミン経鼻投与は、耐えられる頭部動作の平均回数を有意に増加した[INSCOP 275.9 +/- 120.5, Placebo 230.7 +/- 76.4; t (15) = 2.21].

血漿中濃度による薬物吸収の推定では、薬物は投与後15分までに測定可能なレベルまで比較的急速に吸収された。

拡張期血圧および心拍数は、スコポラミン経鼻剤(INSCOP)投与後、プラセボと比較して有意に低下した。

認知機能や薬物による重大な副作用は報告されなかった。

また、カロリンスカ眠気尺度で示される覚醒度の有意な低下は報告されなかった。

結論

本研究の結果は、スコポラミン経鼻剤が、乗り物酔いの感受性の高い人の治療に有効であり、有意な認知作用や鎮静作用がないことを強く示唆するものであった。

鼻腔内投与は、認知的な障害や副作用の増加なしに、ダイナミックなオペレーション環境での使用に有望な代替手段を提供する。

考察と感想

スコポラミンの点鼻薬はプラセボと比較して回転椅子による乗り物酔いへの耐性を向上させる効果があったようですね。

また、使用してから比較的速やかに血中濃度が上昇したのが、経皮製剤や経口薬とは異なるようですね。

残念な点としては、日本ではスコポラミンの点鼻製剤はないことですね。

Dr.KID
Dr.KID
味などで内服が困難な場合に点鼻は役立ちそうな気がします。

まとめ

スコポラミンの点鼻製剤の有効性を検証したランダム化クロスオーバー研究です。

プラセボと比較して、投与後15分以内に作用が発現し、乗り物酔いに有効で安全な治療法であることが明らかになった

また、認知的な障害や副作用の増加はないことが示唆された。

 

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Dr.KID
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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。