小児科

小児のITPの診断に、骨髄穿刺は必要か?[カナダ編]

ITPの診断は基本は臨床診断ですが、骨髄検査は診断の一助になります。

一方で、骨髄検査をすべきか否かは意見が分かれており、その点は昔から議論されています。 

今回は、カナダから報告された古い論文を見てみましょう。

マミー
マミー
小児のITPの診断ってどう行うのですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去のエビデンスをみてみましょう。

   ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。

 研究の概要

 背景・目的

小児における急性ITPの暫定的診断を確認するために骨髄穿刺 (BMA) が行われることがある。

今回は、このBMAの標本にいて、白血病の有病率を評価した。

方法

1984年1月1日〜1996年5月31日までのオンタリオ州トロントにある、The Hospital for Sick Children (三次医療小児病院)において、BMAの全報告をレビューした。

組み入れた患者は、以下の通りであった:

典型的な血液学的特徴

     
血小板数 < 50 x 10^9/L  
Hb > 100 g/L
(6-12ヶ月)
> 110 g/L
(> 1歳)
白血球数 > 5 x 10^9/L
(6ヶ月〜6歳)
4 x 10^9/L
(> 6歳)
好中球数 > 1.5 x 10^9/L
(6ヶ月〜6歳)
> 2 x 10^9/L
(> 6歳)

慢性ITP,血小板減少症関連慢性疾患(ダウン症など血小板減少を起こしうる慢性疾患)、または末梢血塗抹標本上の白血病芽球を有する小児は除外された。

 

結果

小児の急性ITPの暫定診断を確認するためにBMAを484回実施されていた。

ITPの典型的な血液学的特徴を有する小児332人では白血病の診断は明らかにされなかった。

つまり、この状況で白血病の診断を見逃すリスクは1%未満である。

結論

典型的な急性ITPにおいて、BMAで白血病を検出する可能性は低く、1%未満である。

典型的な急性ITPの小児にはルーチンのBMAは必要ない。

考察と感想

  典型例 非典型例
N 332 152
ITP 324 135
白血病 0 3
骨髄低形成 1 7
その他 0 1
不適切な検体 7 6

データは上述のようでした。

典型的なITPであれば、白血病は0のようですね。検査の適応を判断する際に、典型例か否かを確認する作業は重要といえます。

Dr.KID
Dr.KID
上述の基準は参考になりそうですね。

まとめ

今回は、典型的なITPの臨床像出会った小児332人において、骨髄穿刺で白血病などが検出される可能性を検討しています。結果として、1例も白血病を認めていないようです。

このため、典型的な急性ITPの小児にはルーチンの骨髄穿刺は必要ないことが示唆されています。

 

 

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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。