ITPの診断は基本は臨床診断ですが、骨髄検査は診断の一助になります。
一方で、骨髄検査をすべきか否かは意見が分かれており、その点は昔から議論されています。
今回は、アメリカから報告された古い論文を見てみましょう。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児ITPにおいて、「白血病の可能性を除外するため」骨髄検査をするというプラクティスがあります。しかし、この念の為「除外する」という診療の妥当性はどうなのでしょうか。
小児の白血病における患者において、急性ITPの典型例である孤立性の血小板減少がみられているのか、検討した研究になります。
方法
小児血液専門医に紹介された急性リンパ芽球性白血病の小児のうち、何人が血小板減少単独であったかを決定するため、Pediatric Oncology Groupのカルテのレトロスペクティブレビューが実施された。
血小板減少単独とは、
- 血小板数<50 000/mm^3
- それ以外は正常な全血球数と身体所見
と定義された。
結果
過去2回の急性リンパ芽球性白血病プロトコールに登録された小児2239人の記録を再検討した。
血液内科医が最初に診察した時点では、急性リンパ芽球性白血病の小児において、上述の通り定義した「血小板数減少単独」である症例は1人も認められなかった(0%: 0/2239)。
結論
孤立性血小板減少症の小児におけるルーチンの骨髄穿刺は、急性リンパ性白血病を除外するために不要であることを示唆する。
考察と感想
ITPの診断で骨髄検査が行われる背景として、白血病の除外という考え方があります。つまり、本当は白血病であったけれども、最初はITPを疑われた(つまり、血小板減少のみであった)症例を見つけて、ITPの治療から除外するのが目的とも言えます。
一方で、本当にそのような症例はいるのだろうか?、という疑問も湧いてきます。つまり、白血病患者において、最初に孤立性の血小板減少症を認め、ITPと誤認されるような例の存在に関して調査したわけです。
最終的には2239名の白血病の小児において、小児血液内科への初診の時点では、「身体所見や他の検査所見に異常がない、孤立性の血小板数減少」となるような症例はいなかったようです。
「孤立性の血小板数減少」に関しては、
- 血小板数 < 50,000/μL
- 末梢血塗抹でBlast cellなし
- Hgb > 11 g/dL
- 好中球数 > 1500 /mm^3
- 肝臓・脾臓の腫大なし(肋骨弓下2cm以上)
という定義にしたようです。
データのスクリーニングのステップでは、以下のように行ったようです:
- 対象患者 2239名
- Blast cellsが末梢血塗抹でいない:459
- 血小板数 < 50,000/mm^3に該当: 142
- Hb > 11g/dL: 12
- 好中球数 > 1500 /mm^3 : 1
- 肝臓・脾臓の腫大なし: 0
まとめ
今回は、小児2239名の白血病において、初期の段階で典型的なITPの所見のみ(孤立性の血小板減少のみで、その他の異常なし)を認めるか検討しています。
この2239名においては、1例も孤立性の血小板減少を認めておらず、小児のITPの診断には、必ずしも骨髄検査は必須ではないことが示唆されています。
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