科学的根拠

鼻洗いは、小児の気管支喘息やアレルギー性鼻炎に有効か?

今回、ご紹介する研究は、「鼻洗いは、小児の気管支喘息やアレルギー性鼻炎に有効か?」を検証しています。

気管支喘息やアレルギー性鼻炎の詳細はこちらで説明していますので、疾患そのものを少し詳しく知りたい方は、こちらをご参照ください。

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気管支喘息とアレルギー性鼻炎はオーバーラップしていることもあり、例えば、

  •  気管支喘息の患者の2/3に、アレルギー性鼻炎がある
  •  アレルギー性鼻炎の患者の20-50%くらいに、喘息がある

とも推定されているようです。

気管支喘息の治療は、重症度によって異なりますが、

  •  ロイコトリエン拮抗薬(キプレス®︎、オノン®︎など)
  •  吸入ステロイド

などを使用しますし、アレルギー性鼻炎では

  •  抗ヒスタミン薬
  •  ステロイドの点鼻

などが治療に使用されます。

これらの治療は過去の臨床研究で有効性がしっかりと検証されています。一方で、これらの治療に、鼻洗いを追加するメリットがないかを検証したのが今回の研究です。

研究の方法

今回の研究は韓国で2015-2016年に行われ、

  •  6〜18歳
  •  アレルギー性鼻炎と喘息あり
  •  最近の感染症(急性副鼻腔炎や中耳炎など)がない
  •  その他の慢性疾患がない

などを対象に参加者が選ばれています。

アレルギー性鼻炎はlevocetirizine 5mg、喘息はciclesonide 80 mcg/dayまたは montelukast 5 mg/dayでコントロールされているお子さんが対象でした。

治療について

治療については、

  •  鼻洗いをする
  •  コントロール

のいずれかにランダムに割り当てています。鼻洗いグループは、等張の生理食塩水60〜150 mlを1日2回12週間を行なっています。

アウトカムについて

アウトカムは0週と12週に

  • FEV1
  • PC20
  • FENO
  • ACT(Asthma Control Test)
  •  鼻汁中の好酸球(%)

などを計測して、2つのグループで比較しています。

研究結果と考察

20人が研究に参加し、10人が鼻洗い、10人がコントロールとなりました。途中でLoss to follow-upとなった方はいません。患者背景ですが、

  •  年齢は平均9歳
  •  男児が8割
  •  IgEは300〜600ほど
  •  ハウスダスト、花粉、動物に対して全員何らかの感作あり

でした。

PC20 について

PC20は、Provocative Concentration 20の略語でして、FEV1を20%低下させるためのメタコリン濃度になります。

PC20 鼻洗い コントロール P-value
0週 0.68 1.14 0.436
12週 2.91 0.61 0.186
P-value 0.017 0.333  

鼻洗いのグループを前後比較すると、若干ですがスコアが改善しているように見えます。コントロールグループはスコアがやや低下していますが、統計学的な有意差はありません。

12週後のグループ間の値を比較していますが、こちらは鼻洗いグループの方が良いものの、統計学的な有意差はありませんでした。

Dr.KID
Dr.KID
グループ内での前後の差を、グループ間で比較したらどうだろうか?と思いました。

その他の指標について

ACT score、QQOL-ARK score、アレルギー性鼻炎の重症度についてですが、結果を要約すると、鼻洗いをしたグループは、

  •  ACT scoreは改善した
  •  QQOL-ARK scoreは低下した(QOLが改善した)
  •  鼻炎の重症度分類、FENOの分布は変わらず

でした。一方で、コントロールグループでは、

  • ACT scoreは変わらず
  •  QQOL-ARK scoreは変わらず
  •  鼻炎の重症度分類、FENOの分布は変わらず

という結果でした。

考察と感想

今回の研究では、鼻洗いをしたグループはACT scoreやQOLのスコアなど、自覚症状に基づいた指標が若干ですが改善している印象です。一方で、客観的な指標(例えば、FENOなど)はあまり変化していませんでした。

今回の研究で少し疑問に思ったのはサンプル数の少なさです。10人 vs 10人で見ており、やや検定力が足りないのではないかと感じてしまいました。
また、アウトカムのグループ間比較も、単純に12週の値を比較していました。しかし、0週の値にばらつきがあるので、0週と12週の差や比を比較した検定をしても良かったのではないかと思いました。

気になった点としては、鼻洗いをしたことによるバイアスでしょうか。
鼻洗い自体を盲検化することは不可能ですので、自覚症状の評価は、ひょっとしたら鼻洗いグループの方が改善方向に評価してしまっているかもしれませんね。
この辺りは、今回の鼻洗いの研究のようにプラセボが置けない場合によく問題になってきます。
「頑張って鼻洗いをしたのだから…」と評価が甘くなってしまう可能性はあり得ます。

まとめ

今回の研究では、気管支喘息やアレルギー性鼻炎のあるお子さんの標準治療にさらに鼻洗いをすると、喘息のコントロールやQOLが改善する可能性が示唆されています。

しかし、サンプル数は少なく、不十分な検定もありますので、追加検証は必要と思います。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。