科学的根拠のある子育て・育児

スクリーンタイムの延長は、その後の発達に影響するか?[アメリカ編]

スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。

この理由の1つとして、小児の発達に与える影響が挙げられます。。

特に2歳未満の乳幼児は、テレビ番組などメディアから学習することはできず、その時間は保護者などとの交流・双方向性の教育の機会が奪われてしまいます。

今回は、その点を見た論文をご紹介します。

ポイント

  •  生後6ヶ月〜2歳時点でのメディアへの暴露時間が、3歳での発達に与える影響を推定
  •  メディア暴露時間と言語・視覚運動機能の指標は、ほとんど関連性を認めなかった
マミー
マミー
スクリーンタイムってどうなのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。

オーストラリアも似たような方針を出しています。

 研究の概要

背景・目的:

乳幼児期のテレビ視聴が、3歳時の言語および視覚運動技能と、どの程度関連しているかを調べること。

方法:

前向きコホート(Project Viva)の参加者である872人の小児を対象に調査した。

使用したデザインは縦断的調査であり、マサチューセッツでの多施設で行われた。

6か月、 1年、 2年の調査時に、母親は「過去24時間に子供がテレビを見た時間数」を報告し、それからテレビ視聴の加重平均を推定した。

多変量回帰分析を用いて、誕生〜2歳までのテレビ視聴時間と3歳時の言語・視覚運動能力の関連性を予測した。

Dr.KID
Dr.KID
言語は「Peabody Picture Vocabulary Test III」を、視覚運動能力は「 total standardized Wide-Range Assessment of Visual Motor Abilities scores」を使用したようです。

結果:

乳幼児期(2歳まで)の1日平均テレビ視聴時間は1.2 (標準偏差:0.9)時間であり、他の研究よりも少ない傾向にあった。

3歳時の言語能力(Peabody Picture Vocabulabulary Test III)の平均スコアは104.8 (標準偏差:14.2)で、。視覚運動能力の平均は102.6であった(標準偏差:11.2)。

多変量回帰分析では、以下の変数を統計学的に調整した:

  • 母親の年齢、収入、教育
  • Peabody Picture Vocabulary Test IIIスコア
  • 配偶者の有無、出産歴
  • 小児の年齢、性別、在胎期間に対する出生時体重、授乳期間、人種/民族、第一言語、および平均1日睡眠時間

多変量解析によると、乳児期におけるテレビ視聴の追加時間は、 3歳時における言語(Peabody Picture Vocabulary Test III)スコアや視覚運動能力のスコアと関連しないことがわかった。

結論:

乳児期(0〜2歳)のテレビ視聴は3歳時の言語または視覚運動技能と関連しないようである。

考察と感想

意外な結果でした。前回は低所得者を中心としたデータでしたが(下図)、明瞭な用量反応関係を認めていました。


(図は論文より拝借)

今回は、多変量回帰分析の係数を見ても、

  言語 視覚・運動
6ヶ月 0.43
(-0.32〜1.18)
0.01
(-0.65〜0.66)
1歳 0.24
(-0.37〜0.85)
-0.02
(-0.55〜0.52)
2歳 0.59
(-0.28〜1.46)
-0.29
(-1.06〜0.48)

ほとんど影響していないのが分かります。

Dr.KID
Dr.KID
意外な結果ですねえ…

上の図のデータは低所得者が中心で、テレビの視聴時間のばらつきも大きかったです。

一方で、この集団はテレビの視聴時間はそもそも短い傾向にあり、割と収入の多い世帯も多かったです。このように考えると、一見、相反するデータですが、異なる集団での効果を見ているのかもしれないですね。

まとめ

今回の研究は、アメリカのマサチューセッツ州において、6ヶ月〜2歳でのメディア暴露時間が、3歳時点の発達に影響するかを検討しています。

この研究においては、両者に関連性はほとんど認めなかったようです。

乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓

スクリーンタイムのまとめnote

乳幼児のスクリーンタイムの考え方

created by Rinker
¥1,725
(2024/04/19 13:55:50時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDが執筆した医学書:

小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/19 19:59:35時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。