小児科

初産婦へのINSIGHT育児介入が第二子の睡眠に与える影響

初産婦への介入が、第二子以降へ波及効果が認めらることを証明したユニークな論文をご紹介します。

マミー
マミー
2人目の子供で色々と新しいことを知って、最初から知りたかったってこと多くないですか?

ユーキ先生
ユーキ先生
確かにそういうことって多いですよね。実際、第1子の時から介入すると、第2子の子育てにも役に立ったという研究があるようです。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • 初産婦に対するINSIGHTという方法による反応型育児の介入
  • 第一子だけでなく第二子に波及し、睡眠時間および行動にプラスの影響を及ぼした

参考文献

Hohman EE, Savage JS, Marini ME, Anzman-Frasca S, Buxton OM, Loken E, Paul IM. Effect of the INSIGHT Firstborn Parenting Intervention on Secondborn Sleep. Pediatrics. 2022 Jul 1;150(1):e2021055244. doi: 10.1542/peds.2021-055244. PMID: 35703026. 

 2022年にPediatricsから公表されたようです

初産婦へのINSIGHT育児介入が第二子の睡眠に与える影響

研究の背景/目的

初産婦を対象としたINSIGHT(Intervention Nurses Start Infants Growing on Healthy Trajectories)反応性子育て(Responsive Paremting)介入は、対照群と比較して初産児の睡眠を改善した。 

この分析の目的は、第二子の兄弟姉妹に対する介入の波及効果を検証し、乳児の睡眠における出生順の差を調べることであった。 

研究の方法

INSIGHTの母親の第二子(n = 117)が観察コホートであるSIBSIGHTに登録された。 

乳児睡眠簡易調査票(Brief Infant Sleep Questionnaire)を3週、16週、52週目に収集した。 

一般化線形混合モデルにより、16週と52週における出生順の違いと同様に、初子無作為化による第二子間の差異を評価した。 

Dr.KID
Dr.KID
いわゆる波及効果の検証ですね。

研究の結果

RP群の第二子は、対照群の第二子よりも夜間の睡眠時間が42分長く(95%信頼区間[95%CI]:19~64)、合計の睡眠時間は53分長い傾向(95%CI:17~90)であった。 

RP群の第二子は、対照の第二子はよりも、睡眠に自己回復する傾向が強く(オッズ比[OR]=2.0、95%CI:1.1~3.7)、起床後に睡眠に戻される傾向が弱かった(OR=0.5、95%CI:0.3~0.9)。 

RP群の第二子は、3週目(OR=2.9、95%CI:1.1-7.7)および16週目(OR=4.7、95%CI:2.0-11.0)に就寝時間が午後8時までとなる傾向が強かった。 

家族内の兄弟姉妹を比較しても、睡眠育児の実践にほとんど差は見られなかった。16週目の時点で、第二子は第一子よりも37分長く眠っていた(CI:7-67、P=0.03)。 

結論

初産婦に対するINSIGHTによる反応型育児の介入は第二子に波及し、睡眠時間および行動にプラスの影響を及ぼした。

初産婦への介入は、初産児とその後の子どもの両方に利益をもたらす。 

考察と感想

初産婦を対象としたIntervention Nurses Start Infants Growing on Healthy Trajectoriesという反応型の育児介入には、一貫した就寝時のルーチンや自己鎮静を促す夜間の育児実践に関する教育が含まれていたようです。 

この介入を行うことで、対照群と比較して、介入は初産児の睡眠行動および睡眠時間の改善が認められたようです。 

今回の研究はその続編でして、さらなる介入をしなくても、第二子の睡眠の健康にプラスの波及効果をもたらし、第二子は対照グループの家族の第二子よりも睡眠時間が長く、睡眠に自己鎮静する傾向が強かったということです。 

Dr.KID
Dr.KID
波及効果をみたという意味で、疫学的にはとても面白い結果ですね。 

ちなみに、INSIGHT自体は 

  1.  乳幼児の空腹と満腹の合図を認識し、空腹にのみ反応するように選択的に食事を与える
  2.  空腹ではないが泣いている乳幼児をなだめるために、授乳の代わりになるものを使う(例:おしゃぶり)
  3.  健康的な食べ物を適切な量だけ与え、食べる量は子ども自身が決められるようにする
  4.  野菜のような発達段階に応じた食品を、繰り返し与え、積極的に模範を示すことで、その受容性を向上させる。
  5.  良好な睡眠衛生を確保する。
  6.  運動不足を減らすために、乳幼児を遊びの時間に積極的に参加させる

を目的にしていたようですね。 

まとめ

初産婦に対するINSIGHTというRCTがありますが、この方法による反応型育児の介入は第一子だけでなく第二子に波及し、睡眠時間および行動にプラスの影響を及ぼしたようです。

このように初産婦への介入は、初産児とその後の子どもの両方に利益をもたらすようです。

 

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Dr.KID
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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。