乗り物酔い

代償性傾動が乗り物酔いを防ぐか、寄与するか?

今回は、運転手と乗客をシミュレーションして、乗り物酔いの程度が異なるかを研究した論文をご紹介します。

マミー
マミー
どうして運転手は乗り物酔いをしないのか?

ユーキ先生
ユーキ先生
確かにそう言われても。。。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • 代償性傾動が乗り物酔いを防ぐか、寄与するかを調べた研究になります。

  • 傾動が本人の能動的な制御下にあるか(例:自動車の運転手)、外部からの制御下にあるか(例:高速で傾動する車両の乗客)によって影響を受ける可能性がある。

参考文献

Aviat Space Environ Med. 2003 Mar;74(3):220-7.

 2003年に公表されたようです

代償性傾動が乗り物酔いを防ぐか、寄与するか?[オランダ編]

研究の背景/目的

自動車の操縦では、乗員は低周波(1Hz以下)の力にさらされるため、乗り物酔いを引き起こす可能性がある。

本研究では以下の仮説を検証した: 

実験1:傾きの(重力+水平方向の加速度:重力慣性力(GIF))に合わせることで、傾きが「能動的」(自分で起こしたもの)で乗り物酔いを軽減できる可能性があるか?

実験2:「受動的」(サスペンション装置で)に傾けると、乗り物酔いが軽減される可能性があるか?

研究の方法

実験1:

12名の着座した被験者に、体のX軸方向に連続した水平方向の並進振動(3.1m×S(-2)ピーク加速度、0.20Hz)を与えながら、重力慣性力(GIF)に対して(1)整列または(2)ずれた(180度位相のずれた)頭部の傾きを与えた。

2つのセッションは、1週間後の同じ時間帯に行われ、順序は相殺された。

頭部の傾きは、動いているLEDディスプレイを追跡して制御し、頭部の軌跡は加速度計で確認した。

運動は、中等度の吐き気を催すまで(運動エンドポイント)、または30分で打ち切るまで続けられた。

実験2:

別のグループの12人の被験者に、連続した水平方向の体のX軸方向に連続した水平方向の並進正弦波振動(2.0m×S(-2)ピーク加速度,0.176 Hz)にさらされた。

このとき、サスペンション装置によって耳のy軸を中心に傾けられたキャブに座っていました。体のz軸とGIFが一致したり、ずれたり(180度位相がずれたり)した。

Dr.KID
Dr.KID
なかなかハードな実験ですね…。私は被験者になりたくない…

研究の結果

実験1:

運動終了点までの平均(±SD)時間は、整列させた場合の方が誤列させた場合よりも有意に長かった(19.2±12.0分)。12.0分)は、不整列時(17.8±13.0分、p<0.05、両側)よりも有意に長かった。

実験2:

モーションエンドポイントまでの平均(±SD)時間または終了点までの平均(±SD)時間は、整列させた場合(21.8±10.9分)の方が不整列させた場合(28.3±5.8分)よりも有意に短かった。( p < 0.01, two-tail)。

結論

代償性傾動が乗り物酔いを防ぐか、寄与するかは、傾動が本人の能動的な制御下にあるか(例:自動車の運転手)、外部からの制御下にあるか(例:高速で傾動する車両の乗客)によって影響を受ける可能性がある。

考察と感想

乗り物酔いに関して、運転者は平気だけれども、乗ってる人が酔うというのはみなさん経験があると思います。

これは、乗り物の揺れや傾きがある程度予測可能で自分で制御できるのか(体を傾けられるのか)、あるいはそれは困難で追従するしかないか、の違いもあるようですね。

Dr.KID
Dr.KID
なんとなく直感的に理解していたことがデータになっている気がします。

まとめ

代償性傾動が乗り物酔いを防ぐか、寄与するかを調べた研究になります。

傾動が本人の能動的な制御下にあるか(例:自動車の運転手)、外部からの制御下にあるか(例:高速で傾動する車両の乗客)によって影響を受ける可能性がある。

 

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Dr.KID
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Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。