小児科

発熱と解熱剤について、それぞれ詳しく解説します

熱に対する恐怖症

『こどもが発熱した。どうしよう…』と子供の発熱でパニックになる保護者は多いです。

Dr.KID
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発熱を過剰に恐ることを「熱恐怖症」といったりします。

発熱=有害ではありませんよ

とあるアンケート調査では;
『発熱は感染防御としての反応ではなく、子どもにとって有害な体の反応である』
と、保護者の56%が考えているようです。

つまり、かなりの保護者が『発熱=有害』と誤解しているのが分かります。
熱に対して過剰な恐怖を抱くと;

  • 発熱そのものが危険である
  • 40℃以上だと痙攣や脳障害を起こすおそれがある
  • 発熱は必ず下げるべき

という偏った考えにつながります。
しかし、この考え方はいずれも科学的な根拠に乏しいです。

Dr.KID
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病原体に体が対抗する手段の1つとして発熱しています。

発熱は生体の正常な反応

 

そもそも、発熱は感染症や炎症性疾患、あるいは環境に対する生体の正常な反応で、病気そのものではありません。
もう少し簡単にいうと、ウイルスや細菌が体に侵入してきた場合、白血球がウイルスを退治しようとするので熱が出るのです。

Dr.KID
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病原体と戦っている証拠ですね。

保護者からよくある質問

熱に関して、保護者から色々と質問をうけますが、最も多いのはお風呂です。

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発熱時の入浴はダメってほんと?

水分摂取ができていて、本人が辛そうでなければ入浴はOKです。

お風呂につかる習慣は日本独特の文化で、風邪のときに入浴しない方がよいか調べた科学的な研究は少ないです。
ですので一般論になりますが、入浴は風邪などの症状に悪影響はしません。
むしろ、皮膚の清潔を保ち、リラックスできるため、入浴を禁止にしなくて良いでしょう。

実際 『日本の小児科医の88%は、風邪の子どもに入浴許可をしている』 というデータもあります。

ぬるめのお風呂にすると良いでしょう

お風呂はOKですが、熱すぎるお風呂は避けましょう。
高温のお湯につかることで、体温が上昇し、発熱が増悪する可能性があります。
さらに、脱水症を招いてしまうことがあります。

水分がしっかり摂れていればお風呂に入っても大丈夫ですが、「湯冷め」にも注意しましょう。
「湯冷め」をすると、寒気や震えの原因となります。

熱があるときは冷水浴をして、体を冷やしたほうがよい?

さすがに最近は『熱が出たので、こどもを冷水に入れてます』という方はいませんが、昔は結構されていたようです。

もちろん冷水はNGです。
冷水に浸かって、体を一時的に冷却することは可能です。
しかし、冷たいため体の震えが生じ、かえって体内で熱を産生してしまいます。
冷水によって血管が締まるため、血圧も上昇してしまいます。

このため、冷水に浸るのは、おすすめできません。
冷水ではなく、適温かぬるま湯が最適と考えられています。

Dr.KID
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さすがに今の時代に冷水を使用する方はいないと思いますが…。

結論として;

  • 熱がある時はぬるま湯への入浴は可能
  • 熱すぎるお風呂や冷水浴は避けるようにしましょう
  • 水分がとれていない時は無理して入らない

の3点を気をつけましょう。

解熱薬は何のために使用するべき?

解熱薬を使用する目的が分かれば、どのような状況で解熱剤を使用すればよいか、理解できると思います。
大事なことですが、解熱薬の使用目的は、体温を正常値に戻すことではありません。

『体温』という数値を下げるのが目的でなく、発熱に伴う不快感や苦痛を軽減するために使用しています。
発熱していても、本人が活発に遊んでいるなら、無理に解熱薬を使用しなくて良いでしょう。

 解熱剤は何を使用すればよいでしょうか?

子どもの発熱には『アセトアミノフェン』という薬が推奨されています。
この薬が最も安全性が高いです。
アセトアミノフェンの成分が入っている処方薬は:

  • カロナール
  • コカール
  • アンヒバ
  • アルピニー
  • ピリナジン

あたりです。

薬の名前は製薬会社が好き勝手につけているので異なりますが、成分は全て同じ『アセトアミノフェン』です。

Dr.KID
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実は同じ成分!

市販薬でもこどもの解熱剤があります

病院が混んでいる、休日・夜間で受診しづらい、家に解熱剤をストックしておきたい、などの場合は、市販薬を購入しても良いでしょう;

 薬選びのポイント

成分がアセトアミノフェンを使用しているか確認しましょう。
市販薬には余分な成分が入っていることが多々ありますが、余分な成分が少ないものを買うと良いでしょう。

Dr.KID
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市販薬は本来不要な抗ヒスタミン薬が入っていたり、問題点が多いです。

解熱薬にまつわる都市伝説

解熱薬にまつわる都市伝説(つまり科学的根拠のない説明)があります。
特に、昔ながらのベテラン医師が、知識をアップデートしておらず、ひと昔前の指導を続けていることが多々あります。

解熱薬で熱性痙攣を予防できる?

結論からいうと解熱薬で熱性痙攣を予防できませんし、熱性痙攣を誘発もしません。

熱性痙攣は、小児の8〜10%程度でみられます。
解熱薬が熱性痙攣を予防できるか研究した方もいますが、熱性痙攣を予防できませんでした。

また、解熱薬が熱性痙攣を引き起こすと考える昔ながらの小児科医も多数いますが、これも科学的根拠のない意見です。


Dr.KID
Dr.KID
と考えていたのですが、最近、解熱剤の使用で熱性けいれんの予防効果のある研究が発表されていました。

解熱薬は坐薬の方が早く効いて、効果は強い?

よく保護者の方が誤解されていますが、この都市伝説もウソです。
坐薬のほうがなんとなく強く・早く効きそうな気がしますが、決してそんなことはありません。

薬物の添付文章には;

  • 内服の場合:最大効果となるのは0.46時間
  • 坐薬の場合:最大効果となるのは1.6時間

と書かれています。
このように、坐薬より内服(飲み薬)のほうが早く効きます。

また、解熱効果は内服薬であろうと坐薬であろうと、効果は同じという結果がでています。
ですので、 『坐薬のほうが薬は効くまでに時間がかかり、 効果は内服と変わらない』が正しいでしょう。

Dr.KID
Dr.KID
なんとなく坐薬のほうが強くて早く効きそうと考えている保護者が多い印象です。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。