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【論文】イソフラボンは前立腺癌を予防するのか?

私事ですが、コーヒーによく豆乳を入れます。豆乳が元々好きなのと、大豆製品ってなんとなく健康に良さそうじゃないですか(適当ですみません)。

豆乳や大豆製品といえば、イソフラボンです。

イソフラボンが健康に与える影響はよく知らなかったのですが、前立腺癌に関する報告を見かけたので、今回、ピックアップさせていただきました。(あわよくば、コーヒーに入れる豆乳に予防効果があればよいと思って… ←動機が不純…)

研究の背景

前立腺癌について

前立腺癌ですが、

  • 世界では2番目に多いガン
  • 日本では3〜4番目に多いガン(男性のみ)
  • ガンによる死因としては7番目

と言われています。

少し古い報告になりますが、2008年のGLOBCANによると、

  • 899,000人が新規に発症
  • 258,000人が前立腺ガンで死亡(ガンでは6番目に多い)

と全世界では報告されています。

前立腺ガンの予防について

前立腺ガンを予防する食品として、

  • Lycopene
  • セレニウム
  • ビタミンE
  • 大豆イソフラボン

が報告されています。

セレニウムとビタミンEについては、ランダム化比較研究が行われ、有効性は否定されています。

まだ大豆イソフラボンの有効性は検証されていなかったため、今回の研究されたようです。

イソフラボンについて

イソフラボンには、

  • ゲニステイン(genistein)
  • ダイゼイン(daidzein)
  • エクオール(equol)

といったエストロゲン様の作用をもつ物質があります。

特にエクオール(equol)は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)の特性があると報告されています。
エストロゲンは男性ホルモン(テストステロンなど)に拮抗するため、前立腺癌の予防効果があるのではと考えられているようです。

しかし、これらのエストロゲン様作用については、否定的な報告もあります。

 

研究の方法

研究のデザイン・対象

今回の研究は、

  • 55〜75歳
  • PSA(前立腺特異抗原)2.5〜10.0 ng/ml
  • 前立腺生検でガンが否定された

男性を対象に、RCTが行われました。治療は、

  • 治療群:イソフラボン 60 mg/日
  • 対照群:プラセボ(偽薬)

を服用しています。

アウトカム

アウトカムは複数あり、

  • PSAの変化
  • 性ホルモンの変化
  • 12ヶ月後の前立腺生検の所見

となっています。

 

研究の結果と考察

合計で158人が研究に参加し、

  • イソフラボン群:78名(–> 75名)
  • プラセボ群:80名(–>78名)

となっています。()はドロップアウトを除外後

この2群において、年齢・家族歴・PSA値などは同程度です。

DaidzeinとEqualの変化

f:id:Dr-KID:20180926025822p:plain

こちらがダイゼイン(Daidzein)の結果になります(論文より拝借)。
イソフラボン群のほうがダイゼンが高くなっています。

f:id:Dr-KID:20180926030136p:plain

こちらはEquolの変化をみています。

EquolのProducer(産生する人)のみでみると、イソフラボン群のほうがEquolは高くなっています。

PSAの値について

f:id:Dr-KID:20180926030711p:plain

PSAの値に関しては、イソフラボン群もプラセボ群も統計学的な有意差はありませんでした。

(*ここまでの統計は単純な2群比較がされていましたが、繰り返し計測を考慮した解析(混合効果モデル)を使用したほうがよいかと思いました)

性ホルモンについて

計測された性ホルモンは以下の4つです:

  • テストステロン
  • DHT:dihydrotestosterone
  • エストラジオール
  • SHBG(sex hormone binding protein)

テストステロンに関しては、

  • 治療群:5.45 → 5.31
  • 対照群:5.12 → 5.28

と共に前後変化はありませんでした。

DHTは、

  • 治療群:0.94 → 1.01
  • 対照群:0.91 → 0.98

と共に前後変化はありませんでした。

エストラジオールは、

  • 治療群:28.56 → 26.53
  • 対照群:27.20 → 25.27

と共に低下していました。(治療群間の比較はされていません)

SHBGは、

  • 治療群:52.00 → 55.43
  • 対照群:50.11 → 51.71

と共に前後変化はありませんでした。

前立腺ガンの発症について

治療開始時には153人いましたが、そのうち89名(58%)が前立腺生検の病理所見が解析されています。

  • 治療群:42人のうち、9名(10.1%)に前立腺ガンの所見
  • 対照群:47人のうち、16名(34.0%)に前立腺ガンの所見

がありました。

著者らは報告していませんでしたが、Risk Ratio(RR)を計算すると、RR = 0.63 (95%CI, 0.31〜1.27)となります。95%CIがRR=1を跨いでいるので、統計学的な有意差はありません。

f:id:Dr-KID:20180926032117p:plain

(RCTならお作法として、Risk ratioをきちんと報告すべきですね)

サブルグープ解析

さらに65歳以上を対象にサブグループ解析がされていました。

  • 治療群:25人のうち、7名(34%)に前立腺ガンの所見
  • 対照群:28人のうち、16名(57%)に前立腺ガンの所見

を認めました。こちらは統計学的な有意差(P = 0.03)

私のほうでRRを計算すると、RR = 0.49 (95%CI, 0.24〜0.99)とギリギリ有意差が出ています。

f:id:Dr-KID:20180926032521p:plain

ちなみに、65歳未満をこちらで計算すると、

  • 治療群:17人のうち、2名(12%)に前立腺ガンの所見
  • 対照群:19人のうち、0名(0%)に前立腺ガンの所見

となります。

私的な考察

確かにサブグループ解析では有意差は出ており、イソフラボンの予防効果が示唆されますが、

  • 追跡不能(Loss to follow-up)が多い(40%ほど)
  • 65歳以上に区切った意図が不明確

など、やや疑問の残る解析でした。

やや斜めから見ると、著者らが意図的に65歳以上に区切って、有意差のある結果を定時したとも思えます(p-valueのhacking)。

RCTにもかかわらず、Risk Ratioの報告などがなく、著者らの手法にもやや疑問があります。

65歳以上を対象にして、大規模なRCTの結果をみてみたいです。

まとめ

イソフラボンは研究全体としては前立腺ガンの予防効果を認めませんでしたが、65歳以上のサブグループでは予防効果が示唆されていました。

しかし、除外された症例も多く、著者らの手法に疑問点が多いに残る結果です。

ここでは結論づけずに、65歳以上を対象にしたRCTの複数の結果が待たれます。

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。