科学的根拠

トラネキサム酸(トランサミン®︎)と小児のかぜについて

今回はトラネキサム酸(商品名:トランサミン®︎など)について解説をしていきましょう。

この薬は、1962年に岡本彰祐と岡本歌子により日本国内で開発されました。
日本ではトランサミン®︎などの商品名で販売され、また現在はジェネリック医薬品も複数存在します。

トラネキサム酸は、何と言っても、止血剤(抗線溶薬)として有名なお薬です。
外傷後や手術後の出血予防や出血量を少なくすることを目的として使用されています。

一方で、抗炎症効果を期待して、上気道炎、いわゆる風邪(かぜ)などでも、しばしば処方されることがあります。
具体的には、扁桃腺炎・喉頭炎による咽頭痛、口内炎による口内痛及び口内粘膜アフタなどで使用されます。
抗炎症作用として喉の痛みを緩和することは出来るかもしれませんが、発熱そのものを抑える作用はないと考えられます。

さらに肝斑(シミ)に使用されていることもあるようです。

Dr.KID
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具体的な有効性の研究結果については、次回以降にお伝えできればと思います。

こちらは添付文書より拝借したデータになります。
健常な成人男性に内服させた場合、薬を飲んで2時間くらいが血中濃度が最も高くなるようです。
薬の半減期は1.2時間ほどと推定されています。

トラネキサム酸を含む処方薬について

トラネキサム酸というとトランサミン®︎が馴染み深いですし、お子さんに処方された方も沢山いると思います。トラネキサム酸の商品名として、

  •  トランサミン®︎
  •  ヘキサトロン®︎
  •  ラノビス®︎
  •  リカバリン®︎
  •  プレタスミン®︎

があります。

トラネキサム酸を含む市販薬について

トラネキサム酸を含む市販薬もいくつかあるようで、以下に具体例を掲載します。

商品名 適応年齢
ペラックT錠 7歳以上
ハレナース 7歳以上
ベンザブロックS錠 12歳以上
ストナT 15歳以上
ルキノンエースα 15歳以上

*注意:これらの薬を推奨しているわけではありません。

文献検索

さて、トラネキサム酸が小児のかぜで有効であるか検討した論文があるか検索をしてみました。

PubMed

まずPubMedで見てみましたが、以下の論文が該当しました。

小児が対象かは現時点では定かでありませんが、

がありました。いずれも欧州(おそらくイタリア)で行われた研究のようです。

日本国内でも全く検討されていないわけではないようです:

Dr.KID
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2019年1月中に文献の取り寄せをして、いくつか手に入れることができました!

Embaseでの検索

Embaseでの検索ですが、以下の組み合わせで行いました。

  • (‘tranexamic acid’/exp OR ‘tranexamic acid’) AND (‘child’/exp OR child) AND (‘common cold’/exp OR ‘common cold’ OR (common AND (‘cold’/exp OR cold)))
  • (‘tranexamic acid’/exp OR ‘tranexamic acid’) AND (‘child’/exp OR child) AND (‘respiratory infection’/exp OR ‘respiratory infection’ OR (respiratory AND (‘infection’/exp OR infection)))
  • (‘tranexamic acid’/exp OR ‘tranexamic acid’) AND (‘children’/exp OR children) AND (‘respiratory infection’/exp OR ‘respiratory infection’ OR (respiratory AND (‘infection’/exp OR infection)))
  • (‘tranexamic acid’/exp OR ‘tranexamic acid’) AND (‘children’/exp OR children)

いずれも該当しそうな論文は見つかりませんでした。

まとめ

小児では咽頭炎などで処方される機会が見受けられますし、どうやら一部の市販薬でも使っているようです。

その反面、小児の喉のかぜで有効性を検討した研究数は非常に少なく、PubMedやEmbaseからリンクして気軽に文献まで辿り着くことも困難でした。

複数の文献は取り寄せ可能で記事にしましたが、残りの資料が手に入るようでしたら今後、追加で記事にしていこうと思います。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。