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小児の抗インフルエンザ薬は結局どれを使用すればよいのか?〜タミフル vs. リレンザ vs. イナビル vs. ラピアクタの比較試験〜

今回はこちらの論文をピックアップしました。

小児の抗インフルエンザ薬(Neuraminidase阻害薬)4剤を比較した日本発のRCTです。

抗インフルエンザ薬(Neuraminidase阻害薬)で小児によく使用されるのは;

  • タミフル(Oseltamivir;内服薬):2001年に承認
  • リレンザ(Zanamivir;吸入薬):2001年に承認
  • イナビル(Laminamivir;吸入薬):2010年に承認
  • ラピアクタ(Peramivir;静注薬):2011年に承認

の4種類です。
(*2018年よりゾフルーザも登場…)

抗インフルエンザ薬を使用する利点

既に数多くの研究が小児を対象に、抗インフルエンザ薬の有効性を検証しています。
抗インフルエンザ薬の使用は、発熱やそのほかのインフルエンザの症状を軽減させることが既に分かっています。

実際、プラセボ(偽薬)比較で

  • タミフルはインフルエンザの症状を平均29時間ほど短縮する
  • タミフルは急性中耳炎の合併率を下げる

といった利点が報告されています。
一方で、リレンザには有効性がなかった報告もあり、結局、4剤のうち、どの薬が良いのか明確ではありません。

今回の研究でみていること

この研究では、4剤(タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタ)を使用して;

  1. インフルエンザウイルスの動態
  2. インフルエンザ症状の期間

の比較をしています。

研究方法について

この研究はインフルエンザA型に罹患した4歳〜12歳の小児を対象に行われています。
抗インフルエンザ薬は発症後早期に内服すると効果があるため、発熱後48時間以内に受診した方に限って研究をしています。

ランダム化比較研究(RCT)をしています

今回は患者にランダムに治療を割り付ける、RCTという手法です。

RCTの利点は、「無作為(ランダム)」に治療を割り当てることで、それぞれの治療群の患者背景のバランスがとられます。
正しくランダム化を行うことで、治療群Aと治療群Bは、平均して似たような集団になります。(このことを比較可能性(exchangeability/ comparability)があるといいます)

今回は「オープンラベル」ですので、患者も医師も誰がどの治療を割り当てられたか分かる状態です。
欠点として、盲検化(blind)をした場合より、情報を知ってしまうことによるバイアス(information bias)が入りやすくなる点があります。

治療は等しく割り当てる

4つの治療をランダムで割り当てています。
治療前には、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタに割り当てられる確率が、どの患者でもそれぞれ25%で均等な状態です。

アウトカムについて

この研究では、

  1. ウイルスがクリアランスされるまでの期間
  2. 発熱期間
  3. (咳、咽頭痛など)症状が緩和するまでの期間
  4. 再発熱の割合

などをみています。

研究結果

当初は40名x 4群で160名の予定でしたが、123名の中間解析で終了しています。
2013-2015年のシーズンで、さらに1年分を追加するメリット、デメリットを考慮して終了したようです(流行株の変化など)。

9名が除外され、114名が解析の対象になっています。
8割前後の患者がH3N2のA型、1〜2割がH1N1pdm9のA型です。

ウイルスのクリアランスはラピアクタが早い

タミフルと比較して、ラピアクタは統計学的に有意に早くウイルスがクリアランスされていました。
リレンザとイナビルは、タミフルと比較して有意差はありません。

臨床的な有意差は4群でなし

  • 解熱までの期間(9割は2日以内に解熱)
  • 症状緩和までの期間(9割は3日以内に軽快)
  • 再発熱のリスク

は4剤とも同程度で、統計学的な有意差はありませんでした。

研究の考察

考察の要点は;

  1. ラピアクタは静注であるため、作用するまでの時間が短い、血中での持続時間が長い
  2. ウイルスのクリアランスと症状緩和の相関は、過去の研究同様になかった。統計学的な検出力(Power不足)の可能性はある

です。

私的考察

RCTは臨床研究のゴールドスタンダードです。
今回の研究は、サンプル数が十分に集まらず中間解析での発表となっていますが、多くの臨床医のもつ「インフルエンザの薬は結局どれがいいの?」という疑問に答えた研究と言えます。
(結局、4剤はどれも同じ…、ですが)

ラピアクタとタミフルで発熱期間が変わらない

一番興味を引いたのは、やはりラピアクタとタミフルの比較です。
近年、ラピアクタが登場してから、入院患者でのラピアクタ使用率は確実に上がっています。

こちらの日本のDPCデータを用いた研究によると、小児のインフルエンザ入院患者で6割近くにラピアクタが使用されています。
(さすがに使用しすぎだと思います。小児感染症専門医のいる病院では、ほとんど使用していないそうです。)

ラピアクタを使用するには、点滴なので入院患者の場合投与しやすい、解熱や症状緩和までの期間の減少できるかもしれないという期待、などが主な判断材料とされています。

薬価の高いラピアクタの使用にはそれなりに理由が必要

残念ながら、今回の研究では「症状が早くよくなるから、ラピアクタを使用する」というのは理由にはしづらいと思います。
ラピアクタの方が薬価は高く、タミフルでなくラピアクタを使用するには、その価格差に見合った「理由・妥当性」が今後必要と思います。

以前、小児感染症の専門家の先生から、入院患者でもラピアクタはほとんど使用せず、タミフルで十分ともお聞きしています。

一方で、市中病院ではラピアクタを積極的に使用しているところが多いので、今後、これらの薬をどう使用すべきかは、さらに議論が広がると思います。

 

ABOUT ME
Dr-KID
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。