賢明な医療の選択

小児外傷患者に全身のCTスキャンをルーチンに使用するのは避ける[Choosing wisely]

今回は、小児の鈍的外傷におけるCT検査に関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
小児の鈍的外傷におけるCT検査に関して、教えてください

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:小児の鈍的外傷におけるCT検査
  •  ルーチンでは使用しない

American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely

小児外傷患者に全身のCTスキャン(パンスキャン)をルーチンに使用するのは避ける[Choosing wisely]

Avoid the routine use of whole-body computed tomography (CT) scanning (pan-scanning) in pediatric trauma patients.

While CT scans can be a helpful adjunct to diagnosing traumatic injuries, their usage should be tailored to the mechanism of injury and clinical findings. Radiation from CT scans places children at a low, but real risk of developing potentially fatal malignancies later in life. Decision rules have been developed to guide the judicious use of CT scans for evaluating traumatic head, cervical spine, chest, and abdominal/pelvic injuries. Chest CTs, in particular, have limited value in the evaluation of pediatric blunt trauma patients as few findings require specific treatments that change management. Adherence to published guidelines helps reduce unnecessary scans and reduce costs while minimizing significant missed injuries.

小児外傷患者に全身のCTスキャン(パンスキャン)をルーチンに使用することは避ける。

CTスキャンは外傷の診断に役立つが、その使用は外傷のメカニズムと臨床所見に合わせるべきである。CTスキャンによる放射線は、子どもたちが後に致命的な悪性腫瘍に罹患する可能性を、低いながらも現実的なものにしています。

頭部、頸椎、胸部、腹部・骨盤の外傷を評価するために、CTスキャンを適切に使用するための判断基準が開発されている。

特に胸部CTは、小児の鈍的外傷患者の評価においては、管理を変更するような特定の治療を必要とする所見がほとんどないため、その価値は限られている。

公表されているガイドラインを遵守することで、不必要なスキャンを減らし、コストを削減しつつ、重大な見落としのある傷害を最小限に抑えることができる。

考察と感想

小児の鈍的外傷におけるCT検査に関してでした。

ルーチンな全身CTは行わないというのは、その通りだと思いました。放射線への被曝のリスクは以前より指摘されているのも1つでしょう。
あと、様々なdecision ruleも開発されており、有効活用したいところです。

参考文献も読んでみようと思います:

Brenner DJ, Hall EJ. Computed tomography – an increasing source of radiation exposure. N Engl J Med. 2007; 357:2277-2284.

Pearce MS, Salotti JA, et al. Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: A retrospective cohort study.Lancet [Internet] 2012 Aug 4;380(9840):499–505.

Kuppermann N, Holmes JF et al. Pediatric Emergency Care Applied Research Network (PECARN). Identification of children at very low-risk of clinically-important brain injuries after head trauma: A prospective cohort study. Lancet [Internet]. 2009 Oct;374(9696):1160–1170.

Hoffman JR, Mower WR, et al. Validity of a set of clinical criteria to rule out injury to the cervical spine in patients with blunt trauma. National Emergency X-Radiography Utilization Study Group. N Engl J Med. 2000 Jul 13;343(2):94-99.

Leonard JC. Pediatr Clin North Am. 2013 Oct;60(5):1123-1137.

Stephens CQ, Boulos MC, et al. Limiting thoracic CT: a rule for use during initial pediatric trauma evaluation. J Pediatr Surg. 2017 Dec;52(12):2031-2037.

Streck CJ, Vogel AM, et al.; Pediatric Surgery Research Collaborative. Identifying children at very low risk for blunt intra-abdominal injury in whom CT of the abdomen can be avoided safely. J Am Coll Surg. 2017 Apr;224(4):449-458.

まとめ

今回は、小児の鈍的外傷におけるCT検査に関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。