疫学

Cancer Epidemiology (がんの疫学)⑦| 乳癌の疫学

前回は世界における肺癌の疫学について簡単に説明してきました。

Cancer Epidemiology (がんの疫学)⑥| 肺癌の疫学前回は世界におけるがんの疫学について簡単に説明してきました。 https://www.dr-kid.net/cancerepi5 今...

今回は、乳癌に注目して疫学の話をしていこうと思います。

Cancer Epidemiologyの教科書は以下↓

乳癌の発症と死亡

肺癌の発症と死亡数ですが、2018年に

  •  209万人の新規発症
  •  63万人の死亡

が生じたと推定されています。

世界的に、乳癌は女性の新規に発症するがん1位ですし、死亡数も1位です。

現在は、徐々に途上国の症例が増加しつつあります。また、平均的には予後が比較的良い癌であるため、罹患率が上昇傾向にあります。

ご存知の方が多いと思いますが、年齢が発症に大きく影響しています。

国別にみた発症と死亡

国別にみた発症と死亡は以下の通りです。

発症、死亡とも

  1.  中国
  2.  アメリカ
  3.  日本

の順番です。人口と高齢化の分布が決め手でしょう。

年齢調整後の発症・死亡率について

各国で年齢の分布が異なるので、その分布を調整した発症率と死亡率は以下の通りです。

年齢調整発症率は以下の通りでした:

  1.  ハンガリー
  2.  セルビア
  3.  フランス

年齢調整死亡率は以下がトップ3です:

  1.  ハンガリー
  2.  セルビア
  3.  ギリシア

年齢を調整して、率に変換すると少し景色が変わりますが、トップ2はハンガリー、セルビアで変わらないのですね。

国別にみた年齢調整発症率

国別にみた乳癌の発症率を見てみましょう。

主に欧州、北米、豪州あたりの発症率が高いです。

国別にみた年齢調整死亡率

乳癌の年齢調整死亡率はどうでしょうか。

アフリカ、アジアの一部の死亡率が高いのが分かります。

地域で見た年齢調整発症率と死亡率

年齢調整発症率と死亡率は以下の通りになります。

発症率は、北米、欧州、豪州・ニュージーランドなどが高いのが分かります。

一方で、死亡率はメラネシア、ポリネシア、アフリカなどで高い傾向にあります。

発症率の経時トレンド

発症率の経時トレンドを見てみましょう。

一般的に、乳癌は様々な地域で増加傾向にあります。

死亡率のトレンド

一方で、死亡率は徐々に減ってきています。おそらく、スクリーニングで早期発見が可能になったのと、治療が徐々に進歩してきたためでしょう。

乳癌の危険因子について

乳癌の危険因子として代表的なものは年齢や女性ホルモンですが、それ以外にもいくつか危険因子が分かっています。

タバコ 最もメジャーな危険因子
年齢 50歳以降に診断されることが多い
運動 運動不足は乳癌の危険因子
ホルモン補充療法 ホルモン補充療法を閉経後に5年以上使用すると、乳癌のリスクが上昇する
出産歴 ・出産なし
・30歳以降の出産
・母乳の経験なし
などは乳癌のリスク上昇
アルコール アルコール摂取は乳癌のリスク上昇
遺伝子 BRCA1とBRCA2
高濃度乳腺
(dense breast)
高濃度乳腺でリスク上昇
月経歴 ・12歳未満の初経
・55歳以降の閉経
はリスク上昇
既往歴 乳癌の既往歴
家族歴 乳癌の家族歴
放射線治療の既往 放射線の被曝は乳癌リスク上昇
DESの使用歴 Diethylstillbestrol (DES)の使用歴は乳癌のリスク上昇
*1940-71年に流産のハイリスクの女性に使用されていた

 

おわりに

今回は乳癌の国際的な疫学について簡単に解説してきました。
気になる方は、IARCはGLOBCANなどの資料を参照されると良いでしょう。

次回は大腸癌について解説していければと思います。

Cancer Epidemiologyの教科書は以下↓

ABOUT ME
Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。