Cancer Epidemiology (がんの疫学)

Cancer Epidemiology (がんの疫学)(22)| アルコールと発がんについて

今回は、アルコールと発がんについて疫学的なデータを簡単に解説していこうと思います。

アルコールの過剰摂取は、すべてのがんによる死亡のうち、3%ほど寄与していると推定されています。

アルコールと発がんのデータ

まずはアルコールと健康のデータを見ていきましょう。

アルコールと健康について

不適切なアルコール摂取による死亡は、世界的には300万人で生じています。この数は、世界の総死亡の5.3%ほどになります。
DALYに換算しても同様で、global disease burdenの5.1%ほどはアルコールと考えられています。

不適切なアルコール摂取は200以上の疾患や傷害と関連しているとされています。

また、アルコールの不適切な摂取は、20-39歳での死亡の13.5%に寄与していると推定されています。
例えば、アルコールの過剰摂取は、精神疾患、問題行動や、慢性疾患、傷害・事故などとも関連しています。

アルコールと発がんについて

アルコールと発がんに関しては、dose-response relationshipがすでに数多くの研究から報告されています。(Lancet 2018; 391:1513)

例えば、

  •  上部消化管(口腔、食道、喉頭)
  •  下部消化管(胃、大腸、直腸、肝臓)
  •  その他(乳、膀胱、子宮内膜、卵巣、前立腺、肺、膵臓)

などの癌との関連性が示唆された研究結果があります。

アルコール飲料と発がん物質について

例えばアルコールを摂取すると代謝されてアセトアルデヒドになります。アセトアルデヒドはGroup 1 発がん物質とIARCで認定されています。

詳細なメカニズムは多様ですが、アセトアルデヒドはDNAや蛋白に影響を与えたり、活性酸素を合成する影響を介して発がんしていると考えられています。

それ以外にも、様々な栄養素の吸収を阻害することおも知られています。例えば、ビタミン類(A, B complex, C, D, E)などが挙げられます。

また、アルコール飲料には飲料の生成過程でニトロサミン、フェノールなどが含まれる場合があり、これらも発がんの原因になる可能性もあります。

この他にも、ホルモンバランスや免疫システムに影響する経路も報告されています。

アルコール摂取量のスタンダードは?

アルコールの摂取量に関してですが、例えばビール、ワイン、ウイスキーやブランデーなど異なる製品ではアルコール濃度が異なります。このため、どのくらいの量を”standard”とするか決めなければいけません。

大まかな目安では、以下の図のように定義されています(U.S. standard drinkより)

表にまとめると以下の通りです:

種類 Ounce
(17g = 0.6 ounce)
%アルコール
ビール 12 5%
Malt liquor 8.5 7%
ワイン 5 12%
Spirits
Liquor
Vodka
Whiskey
Gin
Rum
1.5 40%

大体の目安ですが、以下の通りです(U.S. standard drinkより):

適度な飲酒とは?

適度な飲酒(Moderate Drinkers)とは、Dietary Guideline for Americansによると、

  •  女性:1日1杯以下
  •  男性:1日2杯以下

となっています。ACSやAHAによると

  •  女性:1日1杯以下
  •  男性:1日1ー2杯以下

です。ただ、アルコールの代謝は個人レベルで異なるため、万人に当てはまる基準ではないでしょう。例えば、ALDH2の変異型の割合を調査した研究では、以下のように報告されています:

アルコールと発がんについて

アルコールとタバコについて

アルコールと発がんについてですが、タバコとのjoint effectも計測されています。


(Tuyns et al, 1997)

こちらのTableを見ると、アルコールとタバコを併用することで、本来の個々の危険因子の影響の大きさより、さらに大きく悪影響をきたしているのが分かります。

ここからはアルコール摂取量と個々のがんのリスクの容量反応関係を見てみましょう。

アルコール摂取量と口腔癌について

(Bagnardi, et al. British Journal of Cancer 2001)

アルコール摂取量と食道癌について

(Bagnardi, et al. British Journal of Cancer 2001)

アルコール摂取量と肝臓癌について

(Bagnardi, et al. British Journal of Cancer 2001)

アルコール摂取量と大腸癌について

(Moskal, et al. 2007)

アルコール摂取量と乳がんについて

Collaborative group on hormonal factors in breast cancer, Br J Cancer. 2002.

アルコール摂取と発がんについて

がんの42%ほどは予防可能と考えられていますが、アルコールが占める割合は以下の通りです。(American Cencer Society)

おわりに

今回はアルコール飲料とがんについて簡単にデータを提示してきました。意外と様々ながんと関連しているのが理解できたのではないでしょうか。

次回は、職業と発がんについて解説していこうと思います。

 

ABOUT ME
Dr-KID
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。