小児科

輸血における提供者の性別が受け取り者の死亡率に与える影響

輸血療法は、多くの医療状況において重要な治療法の一つですが、提供者の性別が輸血受け取り者の死亡率にどのような影響を与えるかについての研究は限られており、矛盾した結果が報告されています。

本研究では、多施設、二重盲検試験を通じて、赤血球輸血を受ける患者が男性提供者からの赤血球単位または女性提供者からの赤血球単位を無作為に受けることで、提供者の性別が輸血受け取り者の生存率に与える影響を調査しています。

この研究の結果は、輸血の実践と方針策定に役立つ重要な知見を提供することが期待されます。

 

輸血における提供者の性別が受け取り者の死亡率に与える影響

研究の背景/目的

赤血球提供者の性別と輸血受け取り者の死亡率との関連について、矛盾した観察研究からのエビデンスが存在します。輸血の実践と方針に関するエビデンスは限られています。

研究の方法

この多施設、二重盲検試験では、赤血球輸血を受ける患者を無作為に割り付けて、男性提供者からの赤血球単位または女性提供者からの赤血球単位を受けるようにしました。

患者は、試験期間中、入院患者および外来患者の後続の対象者を含めて、試験群の割り当てを維持しました。

無作為化は、血液供給者からの赤血球単位の歴史的割り当てに合わせて、60:40の比率(男性提供者群と女性提供者群)で行われました。主要評価項目は生存であり、男性提供者群を基準群としました。

研究の結果

輸血前に無作為化された計8719人の患者がいました。男性提供者群には5190人、女性提供者群には3529人が割り当てられました。登録された患者の平均年齢(±標準偏差)は66.8±16.4歳でした。

最初の輸血が入院患者であったのは6969人(79.9%)で、そのうち2942人(42.2%)が外科受診していました。

輸血前の基準ヘモグロビンレベルは79.5±19.7g/リットルであり、女性提供者群で5.4±10.5単位、男性提供者群で5.1±8.9単位の赤血球が投与されました(差0.3単位;95%信頼区間[CI]、-0.1~0.7)。

試験期間中に、女性提供者群で1141人、男性提供者群で1712人が死亡しました。全体的な生存に関する主要な分析では、死亡の調整済みハザード比は0.98(95%CI、0.91~1.06)でした。

結論

この試験では、女性提供者からの赤血球単位を用いた輸血戦略と、男性提供者からの赤血球単位を用いた戦略との間で、生存率に統計学的に有意な差は認められませんでした。

考察と感想

研究の結果は、赤血球提供者の性別による輸血受け取り者の生存率に有意な違いがないことを示しています。これは、輸血の実践と方針に関する重要な情報を提供しており、現在の輸血プロトコルにおいて、提供者の性別に基づく選択が不要であることを示唆しています。

しかしながら、この研究はあくまで一つの試験であり、結果はさらなる研究によって確認されるべきです。他の患者集団や異なる状況下での試験が実施されることによって、性別に基づく輸血の効果に関するより広範な知見が得られるでしょう。

また、今回の試験では主に生存率に焦点を当てていましたが、他の臨床的なアウトカムや患者の生活の質に対する提供者の性別の影響も検討することが有益です。これにより、患者中心の医療の提供に役立つ情報が得られるでしょう。

最後に、提供者の性別以外の要因、例えば提供者の年齢や健康状態、輸血前の保存期間などが、輸血の効果にどのような影響を与えるかを調査することも重要です。これらの要因を考慮に入れた研究が、輸血の安全性と効果を最大化するための最適な戦略を策定する上で役立ちます。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし

知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。

感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。

絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし

こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/04/28 20:20:34時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。