世界的に新規抗菌薬の開発は停滞気味にあります。抗菌薬を新規に開発しようとする製薬会社は減る一方ですし、実際に新規抗菌薬の開発数は減少傾向にあります。
これは日本も例外ではありません。
20年毎にみた抗菌薬の開発数について
(文献*1, 2より拝借)
こちらは1950年代〜2010年代までの新規抗菌薬の開発数の推移を見ています1,2。1956〜75年の20年間には93品目、1976〜95年の20年間には92品目が開発され臨床に導入されていました。
一方で、1996〜2015年の20年間は、26品目の開発と以前の1/3以下に下がっています。
(文献*1, 2より拝借)
こちらは累積開発数の推移ですが、セフェムやペニシリン系などを中心に急速に増加してきましたが、1995年以降はすでに頭打ちであるのが分かります。
新規薬剤開発費の推移
(文献*1, 2より拝借)
こちらは医薬品の生産金額の推移を見ています。
医薬品の生産金額は循環器系の薬を始め、全体として増加傾向にあります
例えば1980年に3.5兆円だった生産金額は、2015年には2倍である7兆円ほどに増加しています。
一方で、抗菌薬の生産金額はこのトレンドに反し、1980年の8100億円から2200億円にまで低下しています。
製薬業界でも縮小傾向の抗菌薬開発
さらに、国内の製薬業界においても、各社で抗菌薬の研究・開発部門を縮小・閉鎖する傾向があります。
例えば、製薬業界におい て,かつては研究開発で競い合っていた
- アステラス製薬
- 杏林
- 塩野義製薬
- 第一三共
- 大日本住友製薬
- 武田薬品工業
- 富山化学工業
- Meiji Seika ファルマ
などでは縮小または閉鎖をし、自社開発品目は少なくなっているようです。
まとめ
かつては「耐性菌が出てきても、また新しい抗菌薬が出るから」という考えがあったのかもしれません。確かに新規の抗菌薬開発が隆盛であった頃は、少し楽観的であっても良かったのかもしれません(不適切使用を許容するわけではありませんが…)
現在は「新しい抗菌薬」が本当に良いタイミングで新規に開発されない可能性も十分にあり、日々の診療で抗菌薬の選択を適切に行っていく必要があります。
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参考文献
- 八木澤守正. 菌薬を概観する:過去,現在,そしてこれから. 日本化学療法学会雑誌. 2017;65(2):149-167.
- Kumazawa J, Yagisawa M. The history of antibiotics: The Japanese story. J Infect Chemother. 2002;8(2):125-133