これまで止瀉薬として、
- ロペラミド(Loperamide; ロペミン®︎)
- タンニン酸アルブミン(Allubimin tannate; タンナルビン®︎)
をご紹介してきました。
今回は別の止瀉薬である、次サリチル酸ビスマス(Bismuth Subsalicylate)について解説していきます。
少し古い論文(1977年)ですが、こちらをピックアップしています。
あまりアメリカの事情に詳しくはありませんが、この時代にはOTCで「Pepto-Bismol」という市販薬が発売されて、よく下痢に使用されていたようです。
ですが、この薬の有効性に疑問をもった研究者らが、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究は、メキシコのとある大学において、
- 1975〜1976年
- 1日3回以上の下痢がある
学生を対象に、ランダム化比較試験が行われました。
治療としては、
- 次サリチル酸ビスマス(Bismuth Subsalicylate)
- プラセボ
のいずれかをランダムに投与しています。
アウトカムは、
- 下痢
- 吐き気・嘔吐
- 腹痛
などを比較・検討しています。
研究結果と考察
最終的に111人が解析対象となり、内訳は
- 56人:次サリチル酸ビスマス(Bismuth Subsalicylate)
- 55人:プラセボ
となっています。起因菌は、
| ビスマス | プラセボ | |
| 大腸菌 | 16 | 12 |
| 赤痢 | 15 | 17 |
| 不明 | 16 | 21 |
となっています。
24時間後の症状の改善
症状の改善率の結果は以下の通りです
| ビスマス | プラセボ | |
| 下痢 | 59/69 (86%) |
43/68 (63.2%) |
| 吐き気 | 29/31 (93.5%) |
23/33 (70%) |
| 嘔吐 | 5/5 (100%) |
2/6 (33%) |
| 腹痛 | 45/52 (86.5%) |
36/55 (65.5%) |
下痢の回数
下痢の回数は以下の通りとなります:
| 下痢の回数 | ビスマス | プラセボ |
| 0 | 7 | 5 |
| 1 | 7 | 2 |
| 2 | 4 | 4 |
| 3 | 4 | 3 |
| 4 | 3 | 7 |
| 5 | 2 | 3 |
| 6 | 0 | 2 |
| 7 | 0 | 0 |
| 8 | 0 | 1 |
| 9 | 0 | 0 |
| ≥ 10 | 0 | 3 |
全体として、次サリチル酸ビスマスを使用したグループのほうが、24時間後までの下痢の回数は少なくなっています。
全体としては、48時間後はほぼ変わりがなかったとも記載されていました。
感想と考察
全体としては、次サリチル酸ビスマスを使用すると、使用後24時間以内は下痢症状の改善が見込めそうという結果でした。
気になった点としては、下痢の原因ですね。赤痢や大腸菌感染が多いですね。現在の先進国ではウイルス性が大半を占めると思うので、この結果の外的妥当性は必ずしも保証されていないと思いました。
そのほか、プロバイオティクスと比較してどうかと安全性は気になりますね。
まとめ
今回の研究は、全体としては、次サリチル酸ビスマスを使用すると、使用後24時間以内は下痢症状の改善が見込めそうという結果でした。
しかし、対象となったのは大学生が中心なのと、病原体が現代とは異なるので、少し注意して解釈したほうがよさそうですね。