科学的根拠

プロバイオティクスは小児の下痢に無効かも インドネシア編

プロバイオティクスは小児の下痢で、先進国・途上国を含めて世界的に使用されています。
有効性に関しても多数検証されているようですし、近年行われたメタ解析でも有効性が示唆されているようです。

とはいえ、全ての胃腸炎、様々な国で普遍的に有効ではないのかもしれません。

今回はプロバイオティクスの有効性を証明できなかった研究をご紹介しようとも追います。

研究の方法

今回の研究は、二重盲検化ランダム化比較試験がインドネシア・ジャカルタのKenariで2012年に行われました。
対象となったのは、

  •  6〜36ヶ月
  •  Bristol Criteriaで4点以上の便
  •  下痢開始から48時間以内
  •  重度の脱水なし
  •  慢性疾患なし
  •  亜鉛の投与なし

などが対象になっています。

治療は2グループに分けられ、

  • Lactobacillus (L.) rhamnosus R0011を 1.9 x10^9
    + L. acidophilus R0052を 0.1 x10^9
    + 亜鉛
  • プラセボ + 亜鉛

に分けられています。どちらも経口補水液(ORS)が処方されています。

アウトカム

研究のアウトカムは、

  •  下痢の期間(中央値)
  •  排便回数

を比較しています。

研究結果と考察

最終的に112人が研究に参加しました。

  •  56人がプロビオティク + 亜鉛
  •  56人がプラセボ

です。患者背景の比較は以下の通りになります。

両グループで大きな差はなさそうですね。強いていうなら年齢の中央値が4ヶ月ほどですね。

アウトカムについて

研究のアウトカムは以下の通りです:

  整腸剤 プラセボ
下痢の期間
(range)
68.5
(13-165)
61.5
(21-166)
排便回数
(range)
5.0
(0-23)
5.5
(0-29)

どちらもほぼ似たような結果で、もちろん統計学的な有意差はありませんでした。

感想と考察

両グループとも亜鉛を使用しているので、これまでの研究とやや異なる趣でした。
途上国ですと、亜鉛欠乏で下痢が遷延することがあるので、処方されたのでしょうか。

患者層については、外来メインと思われます。
過去の研究では入院患者で行われたものも多く、外来と入院では重症度が異なるため、治療効果が一定でない可能性もあります。

あとは胃腸炎の病原体によっても治療効果が異なるのかもしれないですね。
あくまで印象ですが、ロタウイルスを中心に行われた研究ではわりと有効性が確認できているのですが、今回の研究のように病原体の種類がわからなかったり、ざっくばらんに患者を集めた場合はだいぶばらつきが大きい気もします。

まとめ

今回の研究によると、インドネシアの小児外来患者(6〜36ヶ月)の下痢に関して、プロバイオティクスの有効性は証明できませんでした。

どの患者層にも一様に有効であるわけではないのかもしれないですね。

他の研究結果をみつつ、どんな人に有効そうか、そうではないかを見極めていこうと思います。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。