科学的根拠

小児で咳止めとしてコデインがNGな(使用してはいけない)理由

  •  コデインって麻薬の一種て本当ですか?
  •  コデインに咳止めの効果はないのですか?
  •  なぜコデインが小児の市販薬で使用禁止になったのですか?

など、コデインに関する質問が色々とあると思います。

コデインは麻薬性の中枢性鎮咳薬と言われています。
咳止めとしての有効性に関しては、過去にランダム化比較研究がされており、偽薬(プラセボ)と比較して、咳止めの効果はありませんでした。

コデインやデキストロメトルファンは小児の夜の咳に無効かもしれない  『夜に咳が辛そうで、起きてしまうので、咳を止めてくれる薬をください』  『咳がひどいので、なんとかして止めたいのです』 ...

日本では2019年度から小児の咳止めで使用禁止になりましたが、すでに海外の先進国では2010年あたりから続々と使用禁止の基準が厳しくなっています。

この辺りも含めて、今回、説明していこうと思います。

Dr.KID
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国内では、小児の咳止めとして、コデインが処方されているケースもあります。

小児の咳止めとしてのコデイン:海外の状況

「海外では…」と一言でいっても広いので、今回は北米(アメリカ・カナダ)とヨーロッパ、そしてWHOの推奨を確認しながら、小児の咳止めとしてのコデインについて解説していこうと思います。

まず、基本的に「コデイン小児咳止めとして使用してはならない」というスタンスです。
例えば、アメリカ小児科学会(AAP)やFDAをはじめとした団体から、「12歳以下の小児にコデインは使用しないように」と通達が出ています。

さらに、ヨーロッパ(Europe Medicine Agency)からも、「12歳以下の小児にコデインを使用しないこと。12-18歳の小児の場合、喘息など呼吸器疾患のある小児にコデインを使用しないこと」と勧告が出ています。

WHOでも同様の指針で、小児に咳止めとしてコデインを処方することに反対しています。

Dr.KID
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世界的な学術団体や公的機関が小児への咳止めとしてのコデインの使用に反対をしています。

コデインがNGな理由について

コデインが小児の咳止めとしてNGになった理由として、こちらの論文を紹介しつつ説明していこうと思います。

コデインはどんな時に使用されているのか?

コデインですが、実は古くから(50年以上前)使用されている薬で、主に咳止めや痛み止めとして使用されていることが多いです。

日本でどの程度使用されているかの詳細はわかりませんが、今回のアメリカからの論文によると、米国では年間で8万人以上の小児がコデインを使用していると推定されています。
処方している科については、

  •  耳鼻科:19.6%
  •  歯科:13.3%
  •  小児科:12.7%
  •  家庭医:10.1%

の順になっています。別の報告によると、小児の救急外来での処方も多かったようです。

Dr.KID
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かなりの量が処方されている…

耳鼻科での処方例が多い理由

耳鼻科での処方が多い理由として、小児の扁桃摘出術・アデノイド摘出術など、耳鼻科系の手術後に、痛み止め・咳止めとして、伝統的によく処方されていたようです。

Dr.KID
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日本国内ではどうでしょうかね?

コデインと呼吸抑制について

コデインを内服すると、肝臓でP4502D6という酵素によって代謝され、モルヒネになります。
実は、この代謝酵素の活性に個人差・人種差があり、「Ultra-rapid metabolizer」と言われる、超速攻型の代謝活性のある方は、あっという間にコデインがモルヒネとなります。

この結果、血中のモルヒネ濃度が必要以上に上昇してしまい、呼吸抑制を起こす可能性があるようです。

こちらもアメリカからの報告になりますが、1969年〜2012年までに報告された例だけで10名の小児がコデインの内服と関連して死亡したそうです。
しかも、ほとんどの症例が扁桃・アデノイド摘出術の後でした。

さらに、2013年に3名の小児(整形外科の術後、耳鼻科の手術後、咳止めとしての処方後)にコデインと関連した死亡が報告されています。

このような報告が相次いでいるため、2010年頃から世界的にコデインが問題視され、勧告が出ています。

国外でのコデインの使用禁止・禁忌の勧告について

国外でのコデイン使用に関する勧告は、2011年頃から始まっています。

地域 内容
2011 WHO 小児への使用を推奨しないと勧告
2012 アメリカ 扁桃摘出術後に使用しないように勧告
2013 欧州 12歳以下の小児、18歳以下の扁桃摘出後、授乳中の母親に対して使用しないように勧告
2013 カナダ 12歳以下で使用しないように勧告
2015 アメリカ OTC(一般用医薬品)での使用禁止を検討開始

ざっくりとまとめると上の表のようになります。

日本でもこの流れに乗って、2019年度より小児の一般用の医薬品での使用が中止されました。

日本でのOTC薬での使用状況

NS先生(@nuno40801)のブログに小児の市販の風邪薬の成分が詳細に検討されています。

「アルペンこどもかぜ薬」「新ジキニンシロップ」など、いくつかのかぜ薬にコデインが含まれていました。

さらに、ここ最近は「ノンコデイン」を謳い文句にしている市販薬もあります。
なんとなく「ノンコデイン」と言われると安全そうなイメージがしてしまうかもしれませんが、そもそも小児にコデインの使用を控えるのは、小児科的には当たり前のことです。

Dr.KID
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謳い文句にも注意が必要です。

さらに、これらの市販薬のかぜ薬には第一世代の抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン・クロロフェニラミンなど)が含まれているため、気をつけたほうが良いでしょう。

Dr.KID
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現状、市販薬でおすすめできる小児のお薬はかなり限られています。

まとめ

小児へのコデイン投与に対する危険性と、禁止となった世界的な流れについて、論文をつまみ読みしながら解説してきました。

かぜをひいて咳き込んでいると、ついつい咳止めで止めたくなりますが、病原体を排泄する行為ですので、副作用の懸念のある薬を使用してまで、無理して咳を止めることはないでしょう。
また、咳止め以外にも、鼻水の吸引、加湿、鼻に生理食塩水の点鼻、暖かい飲み物を飲む、(1〜2歳以上であれば)蜂蜜なども咳に対する有効性が報告されています。

かぜによる咳であれば、基本的には自然に軽快しますので、ホームケアをしながら、ゆっくりと回復するのを待つのが安全と思います。

Dr.KID
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かぜの治療では、薬による不要なリスクを避けることも重要です。

子供のかぜと抗ヒスタミン薬(ペリアクチン、ポララミン)の副作用 「鼻水が出ているので、止める薬をください」 と小児科外来でお願いされることが多々あります。 ですが、風邪に対する鼻水止め(...

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。