ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。
今回は、この検査が診断の一助になるか、感度・特異度の観点から見ています。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
著者らは前向き研究で、4つの異なる血小板関連IgG抗体(PAIgG) のアッセイを比較した。
様々な血小板減少性疾患の患者の血小板をACDに採取し、洗浄し、 表面のPAIgGを3つのアッセイを用いて測定した。
方法
様々な血小板減少性疾患の患者の血小板をACDに採取し、洗浄し、 表面のPAIgGを3つ(+1)のアッセイを用いて測定した。それぞれ、
- MoAb (A direct binding assay using I^125 monoclonal anti-IgG)
- SPA (A direct binding assay using I^125-staphylococcal protein A)
- Two stage assay
- Total PAIgG
を使用した。
検体は、
- 29名の健常児
- 62名のITP or SLEによる血小板減少の患者
- 73名の非免疫性血小板減少(癌、敗血症、子癇前症、慢性白血病、TTP, HUS, 急性白血病、骨髄異形成)の患者
が対象であった。
結果
免疫性および非免疫性血小板減少症患者の両方に対して、 4つのアッセイはすべて同様の結果を示した。
免疫性血小板減少による重度の血小板減少において、それぞれのアッセイの感度、非免疫性血小板減少患者における特異度は以下の通りでした:
感度 | 特異度 | |
MoAb | 60% | 38% |
SPA | 88% | 25% |
2-stage | 82% | 63% |
Total | 88% | 57% |
両者を分けるのに有効なカットオフを見つけることはできなかった。
結論
ITPにおける血小板関連抗体のアッセイは、感度は高いものの、特異度は低い傾向にあるようだ。
考察と感想
血小板関連抗体に関して、日本における考え方は以下の通りです:
PAIgGが異常値を来す疾患として,免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病;ITP)が挙げられる。PAIgGは血小板膜タンパク質に存在するIgGを見ているだけなので,必ずしも病態と直結しない。つまり,特発性ITP以外でも自己免疫疾患がある場合,あるいは薬剤性,慢性肝疾患による血小板減少の際にも異常値を来すことがある。PB-IgGは検体血漿と正常血小板血漿を混合して凝集反応を見る。ITPでも陽性となるが,同種抗体は主に血小板膜糖タンパク質(glycoprotein)やHLA class Iの抗原刺激に対して産生する抗体である。そのためその本質は,抗HLA(human leukocyte antigen)抗体あるいは抗HPA(human platelet antigen)抗体である。【異常値に遭遇した際の対応】
PAIgGが異常値(高値)を呈する主な病態は前述のとおりである。中でもITPは異常高値を示すため,他の疾患との鑑別の一助になる場合もある。一方,PB-IgGは,血小板輸血不応状態の他、輸血後紫斑病や新生児血小板減少症(NAIT)などがある。【その他のポイント・お役立ち情報】わが国で汎用されているMPHAの抗血小板抗体検出感度はあまり高くない。したがって,臨床所見からPB-IgGの存在が強く疑われるにもかかわらず,MPHAで検出されない場合は,MAIPA(monoclonal antibody immobilization of platelet antigen)などの他の方法を用いるが,自施設で可能な病院は多くない。(リンク)
- PAIgGは血小板膜タンパク質に存在するIgGを見ているだけなので,必ずしも病態と直結しない。
- 特発性ITP以外でも自己免疫疾患がある場合,あるいは薬剤性,慢性肝疾患による血小板減少の際にも異常値を来すことがある。
の2点は覚えておきたいですね。
まとめ
今回は、免疫性の血小板減少において、血小板関連抗体の感度・特異度を、異なるアッセイで見ています。
それぞれのアッセイは、似たような結果で、感度は高く、特異度は低い結果だったようです。
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