蜂蜜(はちみつ)は、かぜ症状(急性上気道感染症の症状)に対する一般的な治療薬としてよく知られている。
一般に、かぜ薬にはほとんど効果がなく、抗ヒスタミン薬や強い咳止め(コデインやデキストロメトルファン)には、有害な副作用を引き起こす可能性があります。
さらに、抗菌薬はかぜに無効であり、耐性菌増加の一因となるため、使用は特に問題となります。
Cochraneの系統的レビューが発表されていますが、この結果によると、ハチミツは小児の「咳」を改善することが示されています。
一方で、他症状で系統的な評価はされていません。
- はちみつが小児の咳に有効かを検討したシステマティック・レビュー
1歳未満の小児は、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、はちみつは投与しないでください。
はちみつは、こどもの風邪の症状に効果があるのか?
研究の背景
プライマリーケアにおける上気道感染 (URTI) に対して、抗生物質の使用は, 抗菌薬耐性を悪化させる。
抗生物質処方に代わる効果的な代替薬が必要である。
蜂蜜は急性上気道炎(かぜ)の一般的な治療であり、その使用に関するエビデンスはいくつかある。
蜂蜜には抗菌作用があり、ガイドラインでは小児の急性咳嗽に蜂蜜を推奨しています。
研究の方法
急性上気道炎における症状緩和のため、蜂蜜の有効性を評価するために、本研究が行われた。
方法としては、システマティックレビューとメタ分析が使用された。
Pubmed, Embase, Web of Science, AMED, Cab Abstracts, Cochrane Library, LILACS, CINAHLをキーワードとMeSH用語の組み合わせで検索した。
研究の結果
1345の記録が同定され, 最終的に14の研究を含めた。
バイアスのリスクは、全体としては中程度と判断された。
蜂蜜は通常のケアと比較して,
- 複合症状スコア(平均差−3.96;95%信頼区間−5.42~−2.51;I^2=0%)
- 咳の頻度(標準化平均差(SMD) −0.36;95% CI−0.50~−0.21;I^2=0%)
- 咳の重症度(SMD-0.44;95% CI-0.64~-0.25;I^2=20%)
を改善した。
著者らは, 蜂蜜とプラセボを比較するため二つの研究を組み合わせたところ、複合症状の軽減が示唆された(SMD-0.63、95%信頼区間-1.44~0.18、I 2=91%)。
#Rの練習
久しぶりに。
原著通りにメタ解析でできるといいですね。
図はStataより綺麗な印象。 pic.twitter.com/EyGzhXS6oe— Dr. KID (@Dr_KID_) November 10, 2020
結論
ハチミツは上気道感染症状の改善に優れていた。 抗生物質に代わる広く入手可能で安価な選択肢を提供する。
蜂蜜は抗菌薬耐性の広がりを遅らせる努力を助けるかもしれないが、さらなる高品質のプラセボ対照試験が必要である。
考察と感想
はちみつの有効性を評価した研究で、前回のコクランとかねがね同じような結果でした。
一方で、この著者らは「咳以外の症状を評価する」と記載はあるものの、結局は咳の頻度と重症度を述べているにすぎませんでした。
また、「抗菌薬 vs. はちみつ」という対立構造を論文では強調していますが、少し違う気がしました。
もちろん風邪で抗菌薬が処方されてしまうことがありますが、どちらかというと対症療法(デキストロメトルファンなど)のほうが重要な気がします。
まとめ
今回は、はちみつが風邪症状の改善に有効かを評価した、最新のシステマティック・レビューとメタ解析で、咳を軽快させる効果が認められています。
1歳未満のお子さんへのはちみつはNGです:
小児で使用される咳止めのエビデンスをまとめたnoteもあります。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
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