- 下痢の時、ミルクを薄めたほうがよいのか?
という話題はありますが、過去の個々の研究をみても、この方針は否定的なものが多いです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、吸収が悪くなることが知られています。このため、ミルクを薄めた方が吸収に良いのではないか、と必要性を感じる医療者がいるようです。
今回は、この方針に科学的根拠があるか検討した論文を解説してみようと思います。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 乳児が下痢の時、ミルクを薄めたほうがよいか検討
- ミルクを薄めても下痢の期間や量はほとんど変わらない
- 必要なエネルギー摂取量が低下する
基本的に、胃腸炎のとき、ミルクを薄めるべきかは複数の研究が行われていて、否定的な研究が多いです。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクを薄めたほうがよいか検討した研究になります。
1989年にフランスから報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 胃腸炎で入院
- 1〜9ヶ月
乳児が対象です。
治療
治療は、脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- 通常のミルク
- 半分に薄めたミルク
のいずれかをランダムに割り当てています。
研究結果
結果は以下の通りでした:
ミルク | 薄めた | 薄めない |
下痢の期間 | 39時間 (7) |
47時間 (8) |
下痢の量 | 833 (205) |
924 (161) |
ミルクを薄めても、下痢の持続時間や下痢の量は、それほど大きく変わるわけではなさそうでした。
一方、ミルクを薄めることによってエネルギー摂取量は半分程度に落ち込んでしまったようです。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、ミルクを薄めても、下痢の期間と量はほとんど変わらない印象でした。
むしろ、エネルギー摂取量が減ってしまう結果です。
まとめ
今回は、1986年にフランスから報告された、乳児の下痢とミルクの濃度に関連した研究です。
ミルクを薄めても、下痢の期間や量は変わらない印象です。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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