科学的根拠のある子育て・育児

鼻水の色で抗菌薬の処方率が大きくかわる現実 [アメリカ編]

  •   鼻水が緑色 or 黄色になってきました

というご相談をよく受けるころがあります。鼻水の色が変化するのは、小児のかぜでは自然の経過なのですが、体調の変化は気になるところでしょう。

一方で、「鼻水が緑色 or 黄色 = 細菌感染」と考えてしまう医療者もいるようです。その結果として、抗生剤が処方されてしまうケースもあります。「鼻水が緑色 or 黄色だから抗生剤を」という医療が見受けられています。

実際に、医師が緑色 or 黄色の鼻水を診察した場合、どのくらい抗生剤の処方率が上昇するか検討した研究もあります。今回はそちらを紹介してみましょう。

先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。

ポイント

  •  シミュレーションのケースで、鼻水の色が変化した場合に抗菌薬の処方率が変化するか検討
  •  鼻汁の色が変わった場合、副鼻腔炎と診断する割合が上昇し、抗菌薬の処方率も大きく上がる
マミー
マミー
鼻水の色が変化してきました。心配です。

Dr.KID
Dr.KID
かぜの自然経過の1つですよ。

参考文献

Mainous AG 3rd, et al. Colour of respiratory discharge and antibiotic use. Lancet. 1997 Oct 11;350(9084):1077

鼻水の色のみで、抗菌薬の適応は決まりません。

 研究の概要

今回は、鼻水の色の変化によって、医師の抗菌薬の処方パターンがどう変化するか検討した研究になります。

1993年にアメリカから報告された調査になります。

 対象の医療者

対象となったのは、

  • ミネソタ、サウスカロライナ、テキサス、オレゴンで働いている
  •  家庭医、総合診療医、内科医214人に

になります。

シナリオ

2つのシナリオを用意しています。通常の急性上気道炎(かぜ)の経過で、違いは鼻水の色の変化(黄色 or 緑色)のみです。

このシナリオをみて、医師がどのように診療パターンが変化するかを検討しています。

研究結果

結果は以下の通りでした:

鼻水 透明 緑色 or 黄色
診断    
急性上気道炎 93% 52%
急性副鼻腔炎 1% 38%
二次性の細菌感染合併 1% 6%

「鼻水が緑色 or 黄色」といった色の変化があっただけで、診断が大きく変わっているのが分かります。

さらに、治療はどのように変化しているでしょうか。

鼻水 透明 緑色 or 黄色
抗菌薬の処方率 8% 59%

「鼻水の変化」という情報のみで、抗菌薬の処方率が大きく変わっています。

また最終的に「急性上気道炎」と診断した医師においても、抗菌薬の処方率は「5% vs. 28%」と大きく上昇していたようでした。

感想と考察

アメリカの研究になってしまいますし、シナリオは成人になってしまいますが、「鼻水の色の変化」という情報のみで、抗菌薬の処方率が大きく変化しているようです。

1990年代の研究ですので、現代ではもう少しまともな処方になっていると願いたいところですが、実際のところはどうなのでしょうか。

Dr.KID
Dr.KID
鼻水の色だけで、抗菌薬処方の適応は決まりませんよ。

まとめ

今回は、1993年にアメリカから報告された、鼻水の色と抗菌薬の処方の関連性を検討した研究です。

この時代の医師は、かぜに矛盾しないシナリオでも、「鼻水が黄色 or 緑色だから」という理由で抗菌薬を処方してしまう傾向にあったようです。

現代ではどの程度変化しているのかも、気になりますね。

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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