小児科

赤ちゃん(乳幼児)の長引く下痢について【二次性乳糖不耐症】

  • 『急性胃腸炎といわれましたが、全然下痢が治りません』
  • 『下痢が2週間以上も長引いています』

と長引く下痢で受診される方が時々います。

下痢の原因として「急性胃腸炎(おなかのかぜ)」は保護者の方々はよく知っていますが、下痢が長引いてしまう原因として乳糖不耐症や吸収不良症候群があることを知っている方は少ないでしょう。

さらに、これら長引く下痢の対処法についてはご存知ない方がほとんどと思います。

 そこで、本記事では下記の内容を解説します。

本記事の内容

  1. 長引く下痢とは?
    □ 胃腸炎の自然経過
    □ 二次性乳糖不耐症 
  2. 治療方法について
    □ ミルクの変更
    □ 乳糖分解酵素の補充

小児科外来では長引く下痢で受診されるお子さんが時にいます。小児科で長引く下痢に対してどのように考えているか、対処法をどうしているかを解説していきます。

長引く下痢について

 長引く下痢についてついてですが、

  • 「長引く」とは何週間か?
  • 二次生乳糖不耐症とはなにか?

をまず知ることが重要です。
医療者と保護者の間で認識にズレが生じていることがあるからです。

急性胃腸炎の自然経過について

「下痢が長引いています」とご相談されることが多々ありますが、どの程度を「長引いている」と判断するかは、保護者の方々で様々です。ひょっとしたら数日の下痢でも「なかなか治らない」と感じる方がいてもおかしくないと思います。

小児科では「約2週間経過しても治らない下痢」の場合、「下痢が長引いている」と判断することが多いと思います。

なぜなら、通常の胃腸炎であれば、およそ1週間〜10日ほどで軽快するからです。

二次性乳糖不耐症について

乳幼児で下痢が2週間以上長引いており、ミルクや牛乳など乳製品を摂取すると下痢が悪化する場合に乳糖不耐症を疑います。

乳糖不耐症には、「先天性(生まれつき)」と「二次性」がありますが、小児のほとんどは胃腸炎に引き続いて発症する「二次性」の乳糖不耐症がほとんどです。

胃腸炎にかかった後、ミルク・母乳・乳製品に含まれる乳糖を分解する力(乳糖分解酵素:ラクターゼ)が低下するために起こります。

「下痢が2週間以上長引いています」「乳製品をとると下痢をします」以外の特徴として、時に便が酸性臭を認めることがあります。

二次性乳糖不耐症の治療について

二次性乳糖不耐症の治療ですが、

  1. 乳糖を一時的に避ける
  2. 乳糖分解酵素を補充してあげる
  3. 気長に様子をみる

の3点になります。

乳糖を一時的に避ける

二次性乳糖不耐症の原因は、乳糖分解酵素の力が弱まり、乳糖を分解できないことが原因です。

それならば、乳糖を一時的に避けるのが治療選択としてあります。
乳糖を摂取しなければ下痢の原因がなくなり、軽快することが期待できるからです。

具体的には1〜3週間ほど乳製品を除去します。
市販品でも、乳糖不耐用のミルクが発売されており、

  ミルクアレルギーへの使用 大豆成分 その他
森永 ノンラクト NG あり  
森永 ニューMA-1 OK なし 独特な味
ボンラクトアイ NG あり  
ペプディエット OK あり 独特な味
明治 ミルフィーHP OK なし  

それぞれの製品に特徴がありますので、お子さんに合わせて選択すると良いでしょう。

例えば、ミルクアレルギーや大豆アレルギーのあるお子さんには不向きな製品もあります。 

乳製品の除去をする時に気をつけること

乳製品の除去についてですが、あらかじめある程度の期間を決めてから開始したほうがよいでしょう。

というのも、二次性の乳糖不耐症であれば乳糖を含む製品をさければ1〜2週間ほどで軽快することが多いです。

乳製品は乳幼児にとって大事なカルシウム、ビタミン、タンパク質源となっています。極端な除去を長期間する弊害もありますので、期間を決めて効果がなければ、潔くやめる判断も必要になります。

 

乳糖分解酵素の補充について

乳糖不耐症の場合、

  • ガランターゼ®
  • ミルラクト®

があり、これらを医師が処方することがあります。

これら乳糖分解酵素を補充してあげることで、乳糖不耐症の軽快を助けてあげるのが目的で使用されています。

気長に軽快を待つ

二次性乳糖不耐症であれば、乳製品を一時的に中止すると軽快する方もそれなりにいますが、治療がうまくいかず、長期間にわたって下痢が続いてしまうことがあります。

色々と試しても軽快しないようでしたら、しばらく様子をみてみるのも悪くはないと思います。

胃腸炎で傷ついた腸の粘膜が軽快するには、少し時間がかかることがあります(場合によっては月単位時間がかかることも)。

なかなか治らないと不安になってしまい多数の医療機関に受診されている方を時々みますが、お尻の皮膚をケアしつつ、しばらく様子をみているのも選択肢の1つと思います。

 

まとめ

今回は乳幼児の長引く下痢の原因の1つである乳糖不耐症について解説してきました。ポイントとしては、

  • 乳幼児の長引く下痢・乳製品の摂取で悪化する
  • 乳糖のないミルクに変更する
  • 乳糖分解酵素を医師の処方薬で補充する
  • 気長に様子をみる

の4点です。

下痢の時はお尻の皮膚も荒れやすいので、亜鉛華軟膏などでケアすると良いでしょう。

あわせて読みたい

  

Reference

・CURRENT Diagnosis and Treatment Pediatrics, Twenty-Fourth Edition
・Nelson Textbook of Pediatrics, 2-Volume Set
・Nelson Essentials of Pediatrics, 8e
・Medical Note presents
・小児科学, 10e
・小児の薬の選び方・使い方
・HAPPY!こどものみかた
・子どもの風邪
・小児科診療ガイドライン
・今日の治療薬

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。