小児科

四種混合ワクチンの『四種(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)』について解説します

四種混合ワクチンのポイント

  • “四種” とは、”ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ”です
  • この四種類の病気にかかると、重症化する危険性があります
  • ワクチンで予防可能です

ステロイドの塗り薬を使いましたが、やめるとすぐに悪化します

そもそも四種混合って何ですか?

四種混合(DPT-IPV) ワクチンですが、その名の通り “四種類” のワクチンが入っています。

  1. ジフテリア (Diphteria)
  2. 百日咳 (Pertussis)
  3. 破傷風 (Tetunus)
  4. ポリオ (Polio)

の4種類です。

ジフテリアって何ですか?

ジフテリアとは、ジフテリア菌による感染症のことをいいます。

ジフテリアの症状

ジフテリア菌に感染した場合、10%の人が以下の症状がでます:

  • 高熱
  • のどの痛み
  • 犬が吠えるような咳
  • 嘔吐

が特徴的です。
これらの症状は、ジフテリア菌により、偽膜が喉に形成されるため起こります。

ジフテリアは重症化することがあります

非常に重篤な場合は、偽膜により、窒息することがある恐ろしい病気です。
さらに、発病2〜3週間後にジフテリア菌が放出する毒素によって、心筋障害や神経麻痺を起こすことがあります。

1981年にジフテリア・百日咳・破傷風 (DPT) ワクチンが導入されて、現在では年間患者は0となっています。
ワクチンを接種している限りでは、この病原体への感染のリスクはかなり低いと考えてよいでしょう。

Dr.KID
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ワクチンのおかげで診る機会がなくなりました。

百日咳について

百日咳は、「百日咳菌」への感染でおこります。

百日咳の症状

最初の1週間は普通の風邪と同じように、咳と鼻水の症状が出ます。
この時期はベテランの小児科医でも、風邪と百日咳の区別は非常に困難です。

発症から2〜3週間後、徐々に咳が悪化してきます。

顔を真っ赤にするくらい連続して咳き込むようになります。
激しく咳をした後に息を吸い込むので、笛を吹くような音がでます。
これを「レプリーゼ」と呼んだりします。 百日咳では、

発熱しないことが多いのも特徴です。

百日咳も重症化します

乳幼児が百日咳にかかると、呼吸ができず、唇が青くなったり、痙攣(ひきつけ)や無呼吸が起こることがあります。

肺炎や脳症など重い合併症を起こしやすく、新生児や乳児では命を落とす危険性もあり、入院治療が必要となります。

Dr.KID
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乳児が罹患すると重症化することがあります。(私も乳児期に百日咳に罹患していたようで、咳がひどすぎて母親は死ぬんじゃないかと思ったそうです。)

 破傷風について

破傷風は破傷風菌の感染により起こります。

破傷風菌は土の中にいます。
土の中にいる破傷風菌は、皮膚の傷口からヒトの体内に侵入します。

破傷風の症状

破傷風菌が増殖すると毒素を放出し、筋肉の強直するような痙攣を起こします。

最初は、口が開かなくなります。
やがて全身の強直性けいれんを起こすようになり、治療が遅れると死に至ることもあります。

破傷風にかかった患者さんの半数は、本人や周りの人では気がつかないくらいの軽い刺し傷や擦り傷が原因です。
土中に菌がいるため、破傷風に感染する危険性は常にあります。

このため、ワクチンでの予防が必要といえます。

Dr.KID
Dr.KID
現代でも破傷風に罹患する患者さんは国内で年間100名ほどいます。

ポリオについて

ポリオとは、別名で「急性灰白髄炎」といいます。
俗に「小児麻痺」とよばれていますが、小児でなくても罹患します。

アメリカの大統領も罹患した病気です

アメリカのルーズベルト大統領が、39歳でポリオに罹り、両足が麻痺になったのは有名な話です。

ポリオの症状について

口から入ったポリオウイルスが、喉や小腸の細胞で増殖し、ポリオを発症します。

小腸でウイルスは1〜5週間くらいかけて増殖し、最終的に便から排泄されます。
感染しても症状がでないことが多いですが、症状が出た場合は非常に重篤になります。

最初は軽い風邪の症状が多く、発熱もあります。
次に、頭痛や嘔吐の症状がでてきます。

最終的に、ウイルスが血液を通って、脳や脊髄に感染し、手足の麻痺が起こります

非常に悪化した場合は、呼吸が止まり死亡してしまう例も昔は数多くありました。 麻痺が出る確率は、感染したヒトの中で、1000〜2000人に1人の割合です。

ポリオは一部の地域で根絶宣言されています

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ポリオは1960年代前半まで流行を繰り返していましたが、予防接種のおかげで1980年を最後に野生株のポリオワクチンによる麻痺患者の発生はなくなりました。

2000年にはWHOは日本を含む西太平洋地域のポリオ根絶を宣言しています。

根絶宣言されたのに、ワクチンをうたなければいけない理由

ポリオは現在でも、パキスタンやアフガニスタンなどの国々では起こっています。

そしてこれらの国から別の国へ飛び火したケースがあります。

日本を含む環太平洋地域は、ポリオの発生はなくなりましたが、環太平洋地域以外の国から、輸入品などを介して日本へ感染が拡大する恐れがあります。

そのため、感染しないようワクチンを打って備えておく必要があります。

四種混合ワクチンのスケジュールについて

四種混合ワクチンは3ヶ月〜2歳の間で4回打ちます。

  1. 生後3ヶ月
  2. 20日以上あけて2回目接種
  3. 20-56日以上あけて3回目接種
  4. 初回接種終了後 6〜12ヶ月あけて4回目接種

を行います。

また11〜12歳になったら、二種混合 (DT) の追加接種を行うことになっています。
“二種”は”ジフテリア・破傷風”の2種類です。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。