4/27に医学書院から「Dr.KIDの小児診療×抗菌薬のエビデンス」を出版します。
今回は、新書について解説させていただこうと思います。
- 新書のコンテンツについて
- 書籍の想定読者
- 本書にあまり向かない読者
を簡単に説明していきます。
Amazonまたは医学書院から主に購入が可能です。
書籍のイメージは以下の通りです。医学書院さんが、ツイートしてくださっています(参考になればと思います)。
【新刊ご紹介】Dr.KID(@Dr_KID_)先生の待望の新刊『Dr.KIDの 小児診療×抗菌薬のエビデンス』ついに見本誌が到着しました!!来週4/27(月)より発売です。皆様もう少々おまちください📘✨https://t.co/Z3euwB7EeH pic.twitter.com/m8CmOBMyIu
— 医学書院 小児診療のための本 (@igskodomo) April 23, 2020
書籍の説明
まずは本書の目次から見ていきましょう。
目次
- 世界からみた日本の抗菌薬の使用状況
- 世界からみた日本の小児の抗菌薬の使用状況
- 不適切な抗菌薬を処方する理由
- 小児の急性上気道炎と抗菌薬
- 小児の溶連菌感染症と抗菌薬
- 小児のマイコプラズマ感染症と抗菌薬
- 小児の急性胃腸炎と抗菌薬
- 小児の下気道感染症と抗菌薬
- 小児のインフルエンザ感染症と抗インフルエンザ薬
- 小児の急性中耳炎と抗菌薬
- 小児の皮膚感染症と抗菌薬
内容的には、1〜3は総論、4〜11が各論になります。
1〜3章:総論
最初は過去に行われた国内外の研究結果を元に、日本の抗菌薬の処方パターンを分析した結果を解説しています。
オランダやスウェーデンなど、世界的に抗菌薬の適正使用が進んでいる国と比較して、日本全体および日本の小児科において、抗菌薬の処方パターンがどう違うのか、というデータを提示しています。
こちらの記事は、過去に私が執筆した記事ですが、こういった内容をブラッシュアップして1〜3章を総論として記載しています。
4〜11章:各論
各論では、小児でよく診療する疾患を1つずつ解説しています。
抗菌薬の適正使用で考える際、まずコモンな疾患から介入するのが良いと私は考えています。
なぜかというと、よく診る疾患での適正使用を改善させることで、日本全体での介入効果が大きいと考えているからです(稀な疾患が重要ではないという意味ではありません。悪しからず)。
実際、それぞれコモンな疾患を1つずつ注目しても、抗菌薬の使用は適正レベルから程遠いのが分かります。
例えば、風邪や溶連菌感染症においても第3世代セフェムが多用されています。
マイコプラズマ感染症に関しては、日本から報告された耐性菌のレベルは非常に高いです。
こういった内容を1つずつ、データを元に改善点がないのか、どのようなエビデンスを知れば、より良い診療に向かうのか、といった点で述べています。
ブログで執筆した記事も含まれますし、本書のために新たに執筆した内容も多く含まれます。
風邪に抗菌薬は必要ないと知りながら,つい抗菌薬を処方してしまう…このように,日本の抗菌薬の適正使用は世界最低のレベルにある.
本書は,小児感染症と疫学領域を融合させながら,日本を代表するデータベースを用いて,小児の抗菌薬処方パターンを分析し,問題点をあぶり出している.
(Amazonより)
おまけ:疫学教室
疫学教室では、疫学系の論文で使用される用語や考え方を、臨床の先生向けに解説しています。
- 抗菌薬の使用量の計算について
- 日本のビッグデータ。GeneralizabilityとTransportability
- 疫学用語、正しく使えてますか?(Risk, RateとOdds)
- 因果関係とは何か?
- 情報バイアス:3つのバイアス①
- 交絡因子とその対処法:3つのバイアス②
- 選択バイアス:3つのバイアス③
- P値と95%信頼区間
- P値とダイコトマニア
- P値とS値
- E値とバイアス分析
①〜⑦に関しては、できるだけ本文とリンクさせて執筆しました(一部、そうではない箇所もありますが…)
⑧〜11は、本文のテーマと離れていますが、これから論文を書く人、P値や統計学的な有意差だけを見て「治療効果あり」「重要な研究である」「意味がある」と陥りがちな方へ向けて、現在の疫学・統計学での考え方を執筆しました。
少し小難しい内容と思われる方がいるかも知れませんが、論文を読んで診療に活かすべきかを考える際に重要なことと思い執筆しています。
本書の対象読者
本書の対象読者ですが、小児を診療する方(医師・薬剤師)、あるいは感染症を専門にしている方を想定しています。
特に、「この診療で本当にいいのかな?」「あの先生は、溶連菌にはXXと言っていたけど、その根拠はどこから?」といった、現在の診療の支えとなっているエビデンスを知りたい方向けです。
また、小児でよく見る感染症において、「他の病院がどういう診療をしているのか比較してみたい」など、見直しをしたい方も対象と思います。
そのほか、
- 日本では抗菌薬がどのように使用されているのか?
- どのパターンのどこに改善点があるのか?
- それに必要なエビデンスは何か?
こう言った小児の抗菌薬のデータやエビデンスに興味がある方は、疑問に答えるように執筆しています。
本書に向かない方
1つ1つのエビデンスを、疫学的な見地を元に、丁寧に、明確に、詳細にデータを元に記載したのが本書です。
本書はよくも悪くも、データ・ドリブンなアプローチで執筆した本になります。
メインの執筆者である私は小児科出身の疫学者で、小児の健康に関するデータを扱っている背景を活かすためです。ノウハウ本や感染症診療を網羅したような本は、豊富な臨床経験のある感染症の専門医がメインで執筆するべきと私は考えています。
そのため、
- 病態生理を知りたい
- ノウハウを手取り早く知りたい
- 小児の感染症診療を網羅した本が欲しい
- ガイドラインの推奨の根拠はあまり興味がない
- 疫学的な知識に興味がない
と言った方は、あまり本書から得られるものは少なく、むしろお金と時間を浪費してしまうと思います。
小児の感染症のノウハウをくまなく知りたい方は、本書ではなく、上山先生や伊藤・笠井先生の書籍を読まれることを強くお勧めします。
まとめ
今回は、私と小児感染症の先生方で執筆した書籍の紹介をしました。
多くの方に手にとっていただければと思います。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス(医学書)
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
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