抗インフルエンザ薬

小児のインフルエンザにゾフルーザ®︎(Baloxavir)を使用すると、2割強でウイルス変異が生じた

ゾフルーザ®︎(Baloxavir)の発売が始まって、大人では使用している医師もいるようですが、小児に限って言えばデータがなさすぎて、慎重な姿勢を示す小児科医が多いと思います。私もその一人です。

今回の研究は、ゾフルーザ®︎(Baloxavir)を使用して、どのような経過を辿るのか、副作用を含めて安全性は大丈夫か、ウイルスの排泄期間はどうかを調査した論文を紹介します。

NS先生(@)のツイートとブログ(リンクはこちら)を参考に文献にたどり着くことができました。

Dr.KID
Dr.KID
NS先生のアンテナは鋭いですね!

今回の参考文献はこちらです。

研究の方法

  •  1〜11歳
  •  インフルエンザ感染が確定
  •  発熱後 48時間以内

の小児を対象に、安全性と発熱期間の推移を追跡しています。

アウトカムについて

アウトカムは、Baloxavir内服から

  •  症状軽快までの期間(咳・鼻閉の軽快 & 体温 < 37.5℃)
  • 解熱するまでの期間
  •  再発熱
  •  合併症
  •  ウイルスの検出

などを指標にしています。

研究の結果

最終的に107人がBalocavirの治療を受けて、3名はウイルスPCR陰性のため除外されています。年齢の中央値は8歳、24時間以内に治療を受けた章には84.6%です。

副作用について

副作用の頻度は以下の通りです(一部のみ抜粋:詳細は原著論文を参照のこと):

副作用 %
全て 34.6% (37/107)
消化器症状 15% (16/107)
嘔吐 7.5% (8/107)
下痢 2.8% (3/107)

重篤な副作用は認められなかったようです。

Dr.KID
Dr.KID
あくまで107人の症例ですので、まれな副作用は調査を続ける必要があります

過去の研究でオセルタミビルでも嘔吐は10%前後で認められていたので、同程度ですね。

症状期間について

症状軽快までの期間(咳・鼻閉の軽快 & 体温 < 37.5℃)でしたが、

  • 症状期間の中央値は44.6時間(95%CI, 38.9–62.5)
  •  81.6%の患者は120時間までに症状は軽快
  •  解熱までの期間は21.4時間 (19.8-25.8時間)
  •  3日目の再発熱:11/99 (11.1%)
  •  4日目の際発熱: 11/103 (10.7%)

ウイルスの排泄について

  • ウイルスの排泄が終了したのは、中央値で24時間
  •  A型は24時間, B型は144時間

でした。

ウイルスの変異について

治療前に変異(PA/I38T/M)はありませんでしたが、治療後にこの変異が生じた症例は、18/77 (23.4%)でした。

特に変異を認めた症例は、ウイルスの排泄期間が長引き(180時間)、症状が軽減するまで期間も長くなったようです(79.6時間)

さらに、インフルエンザに対する抗体が40以下の症例は、そうでない症例と比較して、症状が軽快するまでの期間が長い傾向にありました(85.4時間 vs. 56時間)

データのまとめ

データをまとめると以下の通りです。

変異 あり
N=18
なし
N=49
全て
N=104
症状 79.6h 42.8h 44.6h
発熱 29.5h 20.8h 21.4h
再発熱
3日以降
23.5% 8.5% 10.7%
ウイルス
排泄
180h 24h 24h

23.4%(18/77)でウイルスの変異が生じているのは、結構高い確率と思いました。この点は著者らも「変異の頻度を減らすための使用量のレジメを評価する必要がある」と述べています。

小児において、基本的にオセルタミビル(タミフル®︎)が推奨されていますが、今回の結果ではそれは揺るがないと思いました。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。