- 下痢の時、ミルクを薄めましょう
- 腸が荒れているので、まずは経口補水液を
という指示もあるようです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、さらに炭水化物やタンパク質、脂質の吸収が悪くなることが知られています。このため、ミルクを避けた方がよいのではないか、と必要性を感じる保護者や医療者がいるようです。
嘔吐がひどい場合は、経口補水液を使用するのも選択肢の1つですが、飲めるお子さんに母乳やミルクを避ける必要はないと考えられています。
今回は、この根拠となる論文を解説してみようと思います。
先に結論とポイントから述べましょう。
- 乳児が下痢の時、ミルクを薄める必要があるか検討
- ミルクを薄めても、入院期間は変わらない
- ミルクを薄めると、体重の回復が悪い
基本的に、胃腸炎のとき、飲める状況であれば、わざわざミルクを薄めないでよいでしょう。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクを薄めたほうがよいか検討した研究になります。
1985年にイングランドから報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 胃腸炎で入院
- 3〜18ヶ月の乳幼児
- 下痢が1日5回以上ある
乳幼児が対象です。
治療
治療は、脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- 通常のミルク
- 薄めたミルク
のいずれかをランダムに割り当てています。
薄めたミルクのグループは、25%、50%、75%、100%と12時間毎に濃度を上げているようです。
研究結果
最終的に93人が参加しています。
結果は以下の通りでした:
ミルク | 薄めない N = 47 |
薄めた N = 46 |
入院期間 | 3.8日 (2〜9) |
4.4日 (2〜10日) |
体重変化 | + 55g | -41.9g |
ミルクを薄めても入院期間の短縮にはならないし、体重の回復は遅れる傾向にありました。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、ミルクを薄めても、入院期間にはあまり影響がなく、体重の回復には不利な印象でした。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、ミルクを薄めるべきかを検討しています。
ミルクを薄めても、入院期間や体重の増加にはあまり寄与していないのが分かりました。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/13 00:36:18時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について