- ワクチン接種後に発熱するのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用してよいでしょうか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防として使用したい」と考える保護者もいるようです。
一方で、ワクチン接種直後に解熱薬を使用すると、抗体の産生に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、解熱薬の使用とそのタイミングに関して知っておいた方が良いと思います。
- ワクチン接種後の発熱に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種直後に使用すると、抗体の産生に悪影響があるかも
- 少なくとも8時間くらいは間隔が必要
PLoS One. 2014 Jun 4;9(6):e98175
パラセタモールはアセトアミノフェンのことです。
ワクチン接種直後に解熱薬を使用すると、抗体価に影響するか?
研究の背景/目的
パラセタモールは, ワクチン接種後に発生する愁訴に対する治療薬として世界中で投与されている。
最近発表された結果は, パラセタモールがワクチン接種前に投与された場合, 乳児におけるワクチン接種の反応を阻害することが示唆されている。
本研究の目的はパラセタモールが若年成人において同様の効果を発揮するかどうかを確立することであった。さらに,パラセタモール摂取のタイミングの影響を調べた。
研究の方法
2つの非盲検ランダム化比較研究が行われた。496人の健康な若年成人を無作為に三つの群に割り当てた。
1つ目の治療グループには, 最初のB型肝炎ワクチン接種後に24時間パラセタモールを投与した(予防的使用)。
2つ目の治療グループには、ワクチン接種6時間後に開始した。(治療的使用)
対照群にはパラセタモールを投与しなかった。
参加者の誰も,二次追加ワクチン接種前後にパラセタモールを使用しなかった(6ヶ月目)。
抗HBsレベルはの二次追加ワクチン接種の前と一か月後に測定した。
研究の結果
二次追加ワクチン接種の一か月後,予防パラセタモール群の抗HBsレベルは対照群のレベルより低かった(p=0.048) (4257 mIU/mL対5768 mIU/mL)。
治療的パラセタモール群(4958 mIU/mL)を使用したグループの抗HBsレベルは、対照群のレベルとそれほど異ならなかった。
結論
成人におけるB型肝炎ワクチン接種後の抗体濃度に負の影響を及ぼすのは,予防的パラセタモール治療のみであり,治療的治療ではない。
これらの所見は,最大のワクチン接種効果を確実にし,ワクチン接種後の疼痛と発熱を治療する可能性を保持するために,予防的でなく、治療的にアセトアミノフェンの使用を考慮することを促す。
考察と感想
ワクチン接種後に熱が出るのが不安で、予防的に解熱薬を内服させたがる保護者も稀に遭遇します。
もちろん、発熱や痛みがあればお子さんが辛い思いをするので、それを事前に回避したいという親心から来ているのは分かります。
一方で、ワクチンの最大の目的は、接種そのものでなく、接種をして有効な抗体を獲得することにあります。
特にワクチン接種の直前・直後の解熱薬は避けた方が良く、8時間程度の間隔があれば、影響は大きくはないのだと思います。解熱薬を飲ませるべきか否かでなく、そのタイミングが重要とも言えます。
まとめ
今回は、オランダにて行われた研究で、ワクチン接種後の解熱薬の有無/タイミングが、抗体価の獲得に影響するかを検討しています。
ワクチン接種直後は抗体産生に悪影響がある可能性が示唆され、少なくとも8時間は間隔をあけた方が良さそうです。
まとめnoteもあります。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:目からはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/05 09:19:48時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/05 00:21:44時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています