科学的根拠

生理食塩水に抗菌薬を加えた鼻洗いは、慢性副鼻腔炎に有効か?

  •  生理食塩水による鼻洗いは、急性・慢性副鼻腔炎に有効かもしれない

という結果をいくつか示してきました。

副鼻腔炎は副鼻腔という鼻の奥にある空洞に炎症が起こった状態で、細菌が増殖していることもあります。
このため、「鼻洗い用の液に抗菌薬を加えれば、もっと効くのでは?」と疑問が湧いてきます。

今回、こちらの疑問に答えようとした研究を発見しましたので、ご報告させていただきます。

研究の方法

今回の研究は二重盲検化ランダム化比較試験がアメリカで行われました。対象となった患者は、

  •  慢性副鼻腔炎の診断あり
  •  4~17歳
  •  慢性疾患なし
  •  副鼻腔炎に対して手術歴なし

などを基準に参加者を集めました。

治療について

治療はランダムに

  •  等張生理食塩水
  • 等張生理食塩水 + ゲンタマイシン

を割り当てています。100mlほどを使用して1日1回鼻洗いをするように指導しています。

アウトカムについて

アウトカムは鼻の症状、心理面の変化、QOL、副鼻腔の所見(CT)などを比較しています。

研究結果と考察

最終的に40人が参加し、生理食塩水のみは19人、ゲンタマイシンは21人でした。対象となった集団の特徴は、

  •  年齢:平均8歳
  •  性別:生理食塩のみは男児が8割、ゲンタマイシンは男児が4割
  •  人種:8割以上が白人

でした。

QOLについて

7週後にQOLを比較しています。

  生理食塩水 生理食塩水 +
ゲンタマイシン
P
QOL 7.36 7.82 0.63
副鼻腔感染 3.00 2.76 0.95
鼻づまり 3.36 2.59 0.5
アレルギー症状 2.57 2.82 0.85
精神的苦痛 3.07 2.47 0.57
活動制限 2.14 1.65 0.29

QOLはスコアが高いほどよく、スコアが低いほど悪いです。それ以外の症状は、低いほど症状がないことを示しています。

生理食塩水のみでも、ゲンタマイシンを追加しても、両者でほとんど違いはありませんでした。

CT所見について

CTの評価は左右別々に、上顎洞、篩骨洞、蝶形骨洞、前頭洞を0〜2点で評価しています。合計スコアの平均も比較しています。

生理食塩水 生理食塩水 +
ゲンタマイシン
治療前 6.28 5.29
治療後 3.13 2.0
3.15 3.29
   
治療前 6.5 5.62
治療後 3.0 1.56
3.5 4.06

ゲンタマイシン入りの方が、若干ですが成績は良さそうに見えますが、両者に統計学的な有意差はありませんでした。

副作用について

40人のうち、研究に関連していそうなものは

  •  耳の痛み:2名
  •  中耳炎:2名
  •  鼻出血:1名

でした。論文の記載から、これらが同一患者か否かははっきりとはわかりませんでした。

確かに鼻洗い中にいきんでしまったり、強く鼻をかみすぎると耳が痛くなったり、中耳炎のリスクはありますので、注意は必要そうですね。今回の研究から見積もると、5%くらいのリスクでしょうか。

感想と考察について

今回の研究は、通常の生理食塩水による鼻洗いに抗菌薬を追加したら、より有効性が高まるかを検証しています。
残念ながら、抗菌薬を追加しても、副鼻腔炎に対して有効性は確認できませんでした。

本研究で気になった点というと、やはりCTの撮影でしょうか。
過去の研究はWater’s法のレントゲンで副鼻腔炎の評価をしていますが、今回の研究ではCTでした。確かに、CTの方がはるかに副鼻腔が綺麗に見えるので、そちらの方が良さそうですが、この短期間に2回も撮影することに少々疑問があります。

【論文】CTで放射線被曝をすると、白血病や脳腫瘍のリスクはどのくらい上がりますか?【患者相談】今回は2012年にLancetという(有名な)英文医学雑誌に掲載された論文をピックアップしました。 https://www.ncbi....

あまり不安を煽るつもりはないのですが、こんな報告も出ています。
こちらの研究も問題はありますし、リスクを過大評価している可能性が高いとは思っていますが、それでも小児へのCTは脳腫瘍などとの関連性が言われている中、研究のためとはいえ、2回CTを撮影したことに少し疑問がありました。
とはいえ、MRIは年齢によってはじっとしていられないお子さんもいますし、悩ましいところと思います。

まとめ

今回のアメリカで行われたRCTは、通常の生理食塩水による鼻洗いに抗菌薬を追加したら、より有効性が高まるかを検証しています。

生理食塩水に抗菌薬を追加しても、副鼻腔炎に対して有効性は確認できませんでした。

 

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Dr-KID
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。