疫学

Front-door adjustmentの実践(sequential g-estimation編)

前回こちらでフロントドア法(Front-door adjustment)について一通りの解説をしてきました。

Front-door criterion(フロントドア基準)について解説してみましたフロントドア基準(Front-door criterion)を知りたい方を対象に、導入編として書きました。 Backdoor c...

こちらで概論については説明しましたが、

  •  「じゃあ実際にどうやったらいいの?」

と疑問に思われた方もいるかもしれません。

疫学の分野でいう(g-method: g-computationやg-estimation)の概念が理解てき、実践できる方であれば、それほど難しい手法ではありませんので、今回、簡単に説明してみようと思います。

今回はsequential g-estimationを使用してやってみましょう。

Data generation processについて

まずは以下のDAGを想定してみましょう。

Structural equation model(SEM)を使用すると、

  • fu = (eu)
  • fe = (0.2*U, eE)
  • fM = (0.2*E, eM)
  • fY = (0.2*M, 0.2*U, eY)

となります。10万例のサンプルでsimulationしてみましょう。

この状況で計測したい効果はE→M→Yになります。
Uはない状況です。どうやったら計測できるでしょうか?

この状況で使える手法には、

  • g-computation
  • sequential g-estimation

の2つがあり、今回は後者について説明します。

sequential g-estimationについて

Sequentialは「連続した」などの意味があります。
つまり、ある手法で得られて予測値を使って、求めたい効果を計測する方法です。
そんなこと可能?と思った方がいるかもしれませんが、以下の例からみてみましょう。

まず、E→M→Yの効果をみようにも、Uが邪魔をして正しくみることができません。
例えば、E(Y|E)で回帰分析をすると

赤矢印の経路のように、

  • E→M→Y:0.4*0.2 = 0.08
  • E←U→Y:0.2*0.2 = 0.04

の2つの経路を合算した値(0.12)になってしまいます。

実際に統計ソフトでsimulation dataを回帰分析すると以下のようになります。

ある意味予想どうり、Risk Difference (RD) =  0.12となりました。

sequential g-estimationでは、この状況を2ステップで乗り越えます。

Step 1: まずは交絡因子の経路を推定する

まず交絡因子を介した経路のみを推定してみましょう。

どうしたらこの赤矢印の経路がみえるかですが、Mをブロックしてしまえばいいのです。

E(Y|M, E)と回帰分析をして、赤矢印を浮き彫りにします。
予測値としては、0.2*0.2 = 0.04です。

このアウトプットでわかるように、0.04となりました。

Step 2: Offsetを利用して、Uを介した経路を消し去る

次に、Offsetを利用して、Uを介した経路を消し去り、YとEの治療効果をみます。

Offsetには、上のモデルのEのcoefficient(=0.042)にEを掛けたものを入れます。

  • offD = 0.0424098*E

そして、このoffset(OffD)を最後のGLMに入れて、YとEで回帰分析をします。
イメージとしては、以下のようになります。

つまり、offsetを使用することで、E<–U–>Yの経路が消えてくれます。

結果はRD = 0.0789となりました。
予測値は0.08ですから、ほぼ真の値に近づいています。

バイアスは減りましたよ

結果を見比べてみましょう。
単にYとEで解析した場合と、front-door adjustmentをした場合を並べてみます。

フロントドア なし あり
推定値 0.121 0.078

Front-door adjustmentを使用したほうが、推定値がかなり真の値(0.08)に近づいたのがわかると思います。

まとめ

今回はfront-door adjustmentの方法を、sequential g-estimationを使用して推定してみました。
一見すると斬新な方法ですが、既存の手法の組み合わせで全然できます。

また機会があるときに、g-computationを使用した推定方法を説明できればと思います。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。