疫学

【論文】小児期と成人期の肥満と死亡率について【ライフコース疫学】

今回はこちらの論文をピックアップしました。

  • 小児期の肥満
  • 成人期の肥満

が死亡率に与える影響を長期間みた研究になります。

小児期に肥満だと、成人期になっても肥満は改善しづらく、生活習慣病のリスクになりそうです。

一方で、小児期と成人期で体重変化が起こることは多々あり、

  • 30代以降に太ってしまった
  • 仕事を始めてからストレス、運動不足、過食などで肥満になった

など、体には年齢に応じて様々な変化があります。

今回の論文では、アメリカにおいて「小児期の肥満、成人期の体重の変化」が将来の健康にどのように影響があるかをテーマにしています。

研究の背景

肥満は公衆衛生で重要な問題

アメリカでは肥満は深刻な公衆衛生上の問題となっています。例えば、

  • 小児:10%(1998)→ 17%(2012)
  • 成人:23%(1998)→ 35%(2012)

と増えています。

特に小児肥満は成人期へ以降しやすいと報告されており、より早期での介入が重要とも言えます。

 

肥満や過体重は致死率をあげるのか?

2013年にJAMAで報告されたメタ解析によると、正常体重と比較して

  • 過体重だと死亡率は下がり
  • 肥満だと死亡率は上がる

と報告されています。

この報告が行われた後、「小太りくらいがちょうどいいのでは?」と話題になった記憶があります。

ですが、この研究は交絡因子の対処法、因果の逆転、など様々な点でその質を疑問視されています。

 

小児期が成人期以降の死亡率に与える影響

さらに、小児期の体型が30〜50年以上後になって死亡率とどう関係するかははっきりしていません。もう少し具体的に言うと

  • 小児期に痩せていても、成人期に太るとまずいのか
  • 小児期からずっと肥満体型の子供と比較してどうか

など、年齢による変化が健康に与える影響については、はっきりしていませんでした。

今回の研究は、体重を継時的に追って、健康にどのように影響しているかを見ています。

 

研究の方法

今回は

  • Nurses’ Health Study(NHS)
  • Health Professionals Follow-up Study (HPFS)

の2つのデータベースを使用しています。

体型や体重については、

  • 5歳、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳

を調べ、BMIも計算されています。

研究のアウトカムは総死亡率と心血管イベント死亡率など個別にも調査しています。

 

研究の結果

対象となった患者は、

  • 女性:81,477人(追跡期間の中央値は15年)
  • 男性:37,163人(追跡期間の中央値は16年)

でした。(死亡率の追跡は50歳を超えてから行われています)

95%以上の対象者のフォローに成功しています(つまりloss to follow-upは5%以下)。

 

体重・体型変化の分類について

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継時的に体重の変化を追ったグラフになります。

著者らは肥満5つのタイプに分けており、

  • 痩せ型を持続
  • 痩せ型であったが、緩徐に増加
  • 痩せ型であったが、急激に増加
  • 中等度で一定/増加
  • 肥満のまま/さらに悪化

になります。

グラフを見てわかるように、20〜30歳を超えてくると徐々に体型が崩れていきます。

また、肥満から痩せるのは非常に困難なのがわかります。

 

女性の体型変化と死亡率について

まずは女性の体型変化と致死率についてみてみましょう。女性が非喫煙者である場合、痩せ型持続と比較して、死亡ハザードは

  • 痩せ型(緩徐増加):1.08倍(1.02〜1.14)
  • 痩せ型(急速増加):1.43倍(1.33〜1.54)
  • 中等度(持続/増加) :1.04倍(0.97〜1.12)
  • 肥満(持続/増加)  :1.64倍(1.49〜1.81)

となりました。

小児期から肥満であると、死亡ハザードが最も高いです。一方で、小児期に痩せていても、急激に体重増加する場合も死亡ハザードが高くなっています。

 

男性の体型変化と死亡率について

こちらは男性の結果になります。死亡ハザード比は

  • 痩せ型(急速増加):1.14倍(1.08〜1.21)
  • 中等度(持続/増加) :1.06倍(1.01〜1.11)
  • 肥満(持続/増加)  :1.16倍(1.10〜1.23)

となりました。

女性と同様で、小児期から肥満体型だと最も影響死亡率が高い結果になっています。

 

糖尿病と肥満と死亡率について

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左から順に、

  • 痩せ型(持続)
  • 痩せ型(緩徐/急速増加)
  • 中等度(持続/増加) 
  • 肥満(持続/増加)

となっています。

全体として小児期から肥満体型がある方が総死亡率や心血管イベントによる死亡率が高い傾向にあります。

糖尿病を合併するとさらに死亡率が上乗せで高くなるのがみて取れます。

 

まとめ

今回の論文では、小児期〜成人期での肥満体型を継時的に追い、死亡率の違いを比較してきました。

小児期からの肥満体型なのが最も死亡率が高かったですが、成人期に急に太りだすと健康に悪影響する可能性があります。

さらに糖尿病を合併すると死亡率は上乗せで上がっています。

 

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
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