エキナセアは、かぜ症状(急性上気道感染症の症状)をはじめとする、様々な状態において、治療薬としてよく使用されているようです。
例えば、アメリカでの売上だかは3億ドルとも言われているようです。
エキナセアが風邪などに有効な詳細なメカニズムは不明のようですが、一般的に免疫調整作用があると言われ、好中球やマクロファージの貪食を活性化させるようです。
成人では、「かぜ症状の改善にエキナセアが有効かもしれない」というRCTがあるようですが、小児においては有効性が検討された研究はなく、今回、行われたようです。
(推奨ではありません)
- 小児のかぜ症状にエキナセアが有効かを検討したRCT
- エキナセアは子供のかぜ症状に有効ではなかった
- 副作用のリスクが軽度であるが上昇していた
Taylor JA, Weber W, Standish L, Quinn H, Goesling J, McGann M, Calabrese C. Efficacy and safety of echinacea in treating upper respiratory tract infections in children: a randomized controlled trial. JAMA. 2003 Dec 3;290(21):2824-30.
インフルエンザでは有効であったとする研究もあるようです。
エキナセアは小児のかぜに効果があるのか?副作用は?[ハーブ]
研究の背景
エキナセアは、成人において、かぜの治療に広く使用されているハーブ療法である。
しかし, 小児のかぜの治療として、エキナシアの有効性と安全性に関するデータはほとんどない。
そこで、エキナセア(Echinacea purpurea)が、小児のかぜ症状の持続期間や重症度に対して有効であるか検討し, さらに安全性を評価した。
研究の方法
2000~2002年の4カ月間において、地域の診療所のネットワークを通じて対象者を募集し、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験が行われた。
治療
対象者は、
- エキナセア
- プラセボ
のいずれかに無作為に割り付けられ、4カ月間に最大3回のかぜ症状で投与Iが実施された。
薬の投与は症状発現時に開始し、最長10日間継続した。
アウトカム
主な評価項目は、
- 症状
- 有害事象
の持続期間および重症度であった。
副次評価項目には、
- 症状の重症度
- 日数
- 発熱日数
- 親による症状の重症度の総合評価
が含まれた。
研究の結果
合計で707回のかぜのエピソードが407人の子供であり、337人はエキナセアで治療され、370人はプラセボで治療された。
かぜ症状なしで研究期間を終了した小児は79人であった。
かぜ症状の期間の中央値は9日(95%信頼区間、8~10日)で、エキナセア投与群とプラセボ投与群との間では、ほとんど差はなかった。
かぜ症状の重症度の総合評価も治療グループの間で差がなかった(中央値33)。
さらに、
- 症状の重症度
- 症状のピークの日数(エキナセア群1.60、プラセボ群1.64)
- 発熱日数(エキナセア群0.81vsプラセボ群0.64)
- URIの重症度の親の全体的評価
に関して、2グループでほとんど差はなかった。
全体として、2グループ間で有害事象の発現割合に差は認められなかったが、発疹はエキナセアで治療されたURIの7.1%、プラセボで治療されたURIの2.7%で生じた。
結論
本研究で投与したエキナセア(Echinacea purpurea)は, 2歳〜11歳の小児におけるかぜ症状の治療に有効ではなく, 使用した場合に発疹のリスク増加と関連していた。
考察と感想
エキナセアはかぜやインフルエンザの予防や初期症状の治療として、古くから行われていた方法のようです。
今回の研究では、この有効性を検討していますが、少なくとも2〜11歳の小児においては、かぜ症状の期間は短縮せず、むしろ発疹のリスクが上昇するかもしれない、という結果でした。
エキナセア | プラセボ | |
症状の日数 | 9 (8-10) |
9 (8-10) |
発熱の日数 | 0.81 (1.5) |
0.64 (1.16) |
親の評価 | ||
軽い | 46.5% | 46.3% |
中等度 | 38.9% | 42.8% |
重度 | 14.6% | 10.9% |
副作用のデータは以下の通りで、エキナセアを使用した方が多い傾向です:
エキナセア | プラセボ | |
副作用あり | 45.1% | 39.5% |
下痢 | 11.3% | 9.2% |
腹痛 | 15.1% | 11.1% |
傾眠 | 11.3% | 9.7% |
過活動 | 8.9% | 6.2% |
発疹 | 7.1% | 2.7% |
頭痛 | 9.8% | 6.5% |
かゆみ | 3.9% | 1.9% |
《薬草であるエキナセアというハーブを使って、免疫力を高め、かぜ予防をしていく》などと謳い文句にしているようですが、今回の結果ですと、かぜの初期症状に使用しても効果なしでした。
まとめ
2歳〜11歳の小児において、エキナセア(Echinacea purpurea)は,かぜ症状の治療に有効か検討したランダム化比較試験です。
残念ながら、エキナセアはかぜの症状に対して有効性は示唆されず、さらに副作用(特に発疹)のリスク増加と関連していた。
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